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220話・???、勢力図が一気に書き変わったんだが?・2

 一気に場が緊迫状態になった。

 死人が出るぞ。そんな思いが周囲を支配する。

 しかし、この雰囲気を作り出した本人は飄々としながら告げる。


「たまたま運が良かったようでね。もしも葦を送っておらず、さらに送っていたとしても葦が身バレした時点で処分などして居れば、我々の組織も既に壊滅していたでしょうな。そうなればオルトロスファミリー一強の時代が来ておったやも知れません。そうなればどうなっていたか、皆様わかりますよなぁ?」


 確かに、もしもアルケーニスが滅んで居ればオルトロスファミリーだけが大勢力の生き残りとなっていただろう。

 オルトロスファミリーが生き残ったのは扱う者が闇武器などであったため、本部を隠れ蓑にしていた大商会の地下に作ってあったからであり、貧民街などに拠点を置いていた他の勢力がことごとく潰された結果だ。

 俺達の組織も平民街の一角を借り受け、表向き普通の民家にしていたから難を逃れたに過ぎない。

 国内を徹底捜査されていれば確実に潰されていただろう。


 そして、それは生き残った全ての組織に言えることだった。

 皆不承不承納得したようで主催者である男の話に目を向けている。

 さっさと続きを話せ、と言うことのようだ。

 命拾いしたなあの男、いや、これは計算通りと言ったところか。


「私を呼び出した彼女は我が組織を見逃す代わりに拉致した組織を見付けだすことを求めて来た。ただ、その時は既に彼女自身、拉致組織の居場所は分かっていたようですな。自家の影に二人の身の安全確保の命令と居場所を伝えておりました」


「あん? つまり、拉致が発覚した時点で場所は特定してたのか?」


「彼女は貴族ですからな。自家の紋章入り首飾りの魔力を頼りに既に居場所を特定しておったようですな」


「おい、そりゃぁ、どういうことだ? その女は既に解決出来る状態にありながらわざわざ俺らの被害を拡大させたってのか?」


 オルトロスファミリーのリーダーがイラついた顔で告げると、主催者の老紳士は待っていた、とばかりに満面の笑みを……笑み? 気持ち悪っ!?


「そう、ソレです。そこがあの方の素晴らしい所なのですよ。ああ、あの時の宣言、今思い出しただけでも全身が痺れる思いでございますなぁ。げひゃ、げひゃひゃひゃひゃっ!! ……ゴホン、失礼」


 一度咳をして仕切り直す。

 あの笑顔のせいで皆引いちまった。イカレた野郎だってことは今ので理解出来たな。

 こりゃこいつを殺すのは簡単だがトラップである可能性の方が高い。

 むしろ殺してくれた方がアルケーニスの方にとって都合がいいのかもしれない。

 ソレを察したのだろう。オルトロスファミリーも握った拳を震わせながら降ろしていた。


「私も尋ねました。貴女は被害を拡大させるつもりなのか、と。すると彼女は言いました。私の力と言うのがどういうものか、敵対する方々にしっかりと見せて差し上げようと思いまして。優しいでしょう? と、ああ、あの時の笑み程黒いモノはありません。なんという悪女。あれはまさに邪神と称すに相応しき御令嬢だァ。ハァハァ……うっ」


 なんかヤバい薬でもキメちまったか?

 あまりにもヤベェ存在に皆が呆然としていると、突然老紳士がびくんっと震えた。

 次の瞬間、まるで賢者のような表情を浮かべて話を続ける。


「いや、失礼。ともかく、ロゼッタ嬢は今後商会の人員を拉致などした場合、その組織がどうなるか、いえ、その組織と周辺がどうなるかを今回わざわざ行って見せたそうですな」


「つまり、これ以降プライダル商会にちょっかいを掛ける度に同じ事が起こるってことか?」


「何を言っているのです? 今回は手を抜いていたのですよ? アレが本気で怒り狂えば街ごと灰燼に帰すことでしょうな。今回は他人である騎士団、衛兵、冒険者等を使うことにしたようですが、本気であればそんな煩わしいことなどアレがするとも思えません。今回は拉致対象者の安全が保障出来ていたからこその我々に対する警告でしかないでしょう」


 警告で、これかよ。その貴族令嬢どこかイカレてるんじゃねぇのか?


「その令嬢、暗殺できねぇのか? 必要な金額、ウチで出してもいいぞ?」


「残念ですが我がアルケーニスの全てを使っても彼女を傷つけることは叶わんでしょうな。相対して理解しましたが、アレは人に倒せるような部類の生物ではありません」


 御令嬢なのにこいつの中ではすでに生物ですらなくなってんのか?

 出会いたくもねぇな。プライダル商会にゃあ手だししねェように部下に徹底させといたほうが良さそうだ。


「理由を聞いても?」


「常時、自身に魔法無効化、物理無効化の結界を張っております。この守りを抜く術が無い限りむりですな」


「全て魔法だろ、だったらよぉ、あの御禁制の魔力封印石使やいいんじゃねぇのか? ウチなら多少時間掛かるが輸入出来るぞ?」


「それで、魔力の使えなくなった我々だけでアレを殺せと? S級冒険者ですよ? レベルは既に500越え。どんな暗殺者をぶつければよいのでしょう?」


「500っ!? は? ちょ、待て。お前らの一番の実力者は?」


「A級冒険者にも劣りますからなぁ。レベルは100前後でしょうか」


 5倍の能力値持ち相手に暗殺、か。しかも魔力無くして警戒させた状態で?

 魔力を封じた瞬間奇襲不可になっているのに? 罠でも張れと? 一体どれだけの金額を掛ければ暗殺出来るんだその御令嬢は?


「まぁ、我々の指針としては下手に敵対するよりは友好的に付き合うことで邪魔をしないで貰おう、という形に収まりそうですな。依頼自体に彼女の知り合いが入った場合は違約金用の金を無心して貰えばいい訳ですしな」


「チッ。つまりアルケーニスは融和を選ぶってわけか。んで、俺らにもそうするように圧力を掛けに来たと?」


「いえいえ、ただ、我々はプライダル商会に敵対しない事に決めた、ということを皆さんに伝えるためですよ。下手に彼女に復讐を考えた組織のせいで他の組織もまとめて滅びるかもしれませんからな、今回のように」


 つまり、組織ごと潰されたくなけりゃ俺ら自身で俺らの誰かがプライダル商店にちょっかい掛けないように見張り合えってことかよ。

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