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219話・???、勢力図が一気に書き変わったんだが?

 その日、緊急で俺たちは集まった。

 普段は絶対にこんな集まりなどしたりはしない、互いに敵対したり協力したりする気の置けないアウトロー共の巣窟である旧市街の一角で、俺達ライオネル王国闇組織のメンバーはリーダー格だけの会合に集められていた。


 正直、こんなことでもなければ行く気は無かった。

 何しろ下手すりゃ向かった場所で纏めて捕縛、とか爆殺なんて可能性だってあるのだ。

 闇の組織を束ねるってなぁそういうもんだ。常に死と隣り合わせにある。


 今回主催者はアルケーニスという暗殺業を生業として浮浪児のガキ共を攫って調教、暗殺者に仕立て上げているライオネル王国闇組織の四大勢力の一つである。

 他の勢力とは根本的に敵対しない別業者だったので今までこの四大勢力がかち合うことは無かった。かといって手を組むなんてことも無かったのだが。


 今回そんな面子が集まらざるを得なかったのは、先日の闇組織襲撃事件のせいである。

 唐突に鐘がけたたましく鳴り響いたと思えば、兵士共が物凄い形相と数で王国内を捜索し始め、俺たちは隠蔽工作にてんやわんやになった。

 ぎりぎり闇組織としての偽装を終えた後に兵士達に内部監査され、たまたま回避出来たから良かったが、その偽装工作を失敗したり、兵士達との敵対を選んだ闇組織はことごとく壊滅した。


 正直未だにアレは夢だったのではないかとすら思う。

 あまりにも短期的に、一瞬で消えていったからである。

 それも、たった一人の少女が動いたせいで。


「さて、皆集まったようだな。敵対中の組織もあるだろうが今はこちらが招待した側だ。ここで何か起こすならば我々アルケーニスを敵に回すことを肝に銘じておきたまえ」


 招集側のアルケーニスの代表はタキシード服に白い髭の初老の紳士。

 頭という訳ではないようだが、それなりの地位にいる者だろう。

 随分と堂々としたものだ。ここだと下手な態度を取っただけで魔法で撃ち殺される可能性だってあると言うのに。


「ふん、随分と上から目線じゃないか、ただの代表にされただけで貴様の実力が上がってる訳ではないぞ? 死んでおくか?」


「おやおや怖い怖い。オルトロスファミリーはよく噛みつくと聞いておりましたが確かに、これ以上高圧的な話し方をしてもいい事はありそうにありませんなぁ、ただ、上からはお前の話し方の方がオルトロスファミリーが切れかねんからそっちにしておけ、と言われたのですが、どちらの話し方がお好みですかな?」


 おいおい、高圧的態度よりイラつく話し方とかどんなだよ?


「チッ、高圧的で構わん、さっさと話せ、詳細はある程度把握しているがお前の口から聞かせて貰おう」


「それは行幸。話し終えるまでは私の寿命もありそうですなぁ、ではまず今回のあらましから説明致しましょう、中には何があったのか理解できていない方もいらっしゃるかもしれません。いやいや、有名なる組織の長を長年務めている皆さまの事だ、この程度の事は事前に知っていて当然と……おっと失礼、地の喋り方は禁止でしたな」


 ……成る程、皮肉屋か。話し方自体が相手を煽ることを目的にした対話方法なので短気な相手は確実に怒り狂う話術だ。代わりに相手に失態を演じさせるために怒らせるなら闇組織としては重宝する人材である。

 普通は組織に従属して数日で、話し合いを行った相手が逆上して殺されるというのが普通なのだがな。運良くあの地位に至るまで生き残ったということか。あるいは、殺されないための技術を持っている、ということか。あまりまともな存在だとは思わない方がよさそうだな。


「今回、とある小さな拉致組織がプライダル商店の店員を拉致したことが事の起こりだ。諸君らの中にも拉致を生業にしている者もいるだろうが、プライダル商店のマーク付き首飾りや腕輪を見かけたら避けた方が良さそうだぞ」


 高圧的な話し方がそれか……皮肉よりは多少マシと言ったところだな。オルトロスファミリーのリーダーが血管をぴくぴくとさせている。

 どっちの話し方でも人をイラつかせることに変わりはなさそうだな。


「プライダル商店なぁ、で、それが拉致されたことでどうなった。促してやってんだからさっさと話せ」


「せっかちですなぁ。プライダル商店の長、名を伏せたところでここでは意味がないだろう。名はロゼッタ・ベルングシュタット。侯爵家の一人娘だ。彼女はまず自分の店に居たスパイを使い我が組織を呼び出した」


「は? おいおい、葦がバレてんじゃねーか。お前ら暗殺が主体だろ、それでいいのかよ?」


「仕方ありませんよ。相手がS級冒険者となれば子飼いの葦では分不相応というものです。まぁ、彼女が連絡を取った場所に向かったのが私ということで今回の会合で発言するよう言われた次第でして」


「チッ当事者だったか。お前以外の奴だったらよかったのにな」


「申し訳ありませんねぇ、私最近ツイておりますゆえ。御蔭でお嬢様と顔繋ぎが出来まして、今回の騒動では我が組織は意図的に見逃していただきました」


 なにぃっ!?

 男の言葉に殺意が一気に噴き出す。

 皆、戦々恐々させられたのだ。それがたまたま身バレした葦の御蔭で壊滅を免れた等と見逃せる発言ではなかった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 過去作は情報も視点もキャラも過多だったのが、今作はスッキリしてて迷子にならなくて嬉しいです。今後はキャラはかなり増えそうですが、ロゼッタ嬢が起点でお話が進みそうなので迷子になりにくいかなと…
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