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205話・フラジャイル、お嬢がヤバ過ぎて僕の処遇がヤバい

 翌日。俺とリックルはお嬢に一緒にいるように告げられた。

 なんでも昨日リックルがお嬢が何をしようとしてるのか興味があるようなことを言ったことでレクチャーしてくれるそうだ。

 何が起こるかは自分たちで見ろってことらしい。 

 そういう理由で俺とリックルは今日一日お嬢のお付き役である。


 まず、朝一でやってきたお嬢はわざわざ中止すると言った筈の鯛焼きを露店形式で店の前に設置。さらにでかでかと書かれた張り紙を使って鯛焼きが販売中止になった旨を伝えることにしたようだ。

 内容は、『マルセス商店より苦情があり商業ギルドから販売を中止するよう圧力をかけられたので本日より鯛焼きの販売は中止させていただくことになりました、ご了承ください』である。

 完全にマルセス商店と商業ギルドのせいであると告げていた。喧嘩、売ってるなぁ。大丈夫なのかコレ? 


 歌を歌ってたおっちゃんは困ったような顔をしてたけど、一応給料は普通に出るのと、店側の人間なので鯛焼き貰えるってことで本日も出勤。

 お嬢の隣で屋台を見て近づいてくる客に謝っていた。

 ちなみにルインクさんは何故かその露店で鯛焼きを焼き始めているので甘くていい匂いが周囲に漂い始めている。


 これ、皆に購買意欲煽ってない?

 行きかう人が興味覚えて屋台に近づくけど、文章読んで絶望的な顔してるぞ?

 そんな事をお嬢に小声で尋ねてみれば、これがメシテロと言うモノよ。と得意げにおっしゃった。うん、意味が分からない。


「おい、これはどういうことだ?」


 そしていつものようにやって来る貴族様。

 たしかエレインだっけ?

 この人、確か中止って決まった話の時に一緒にいたよな?

 なんで知ってるのにさも今知ったかのような態度でいるんだろう?


「これはこれは伯爵令息様。いつも御贔屓に」


 するとお嬢が周囲に聞こえるように挨拶を始める。

 伯爵の息子? とざわめきが漏れる。

 そこで気付いた。

 これは、演技だ。この二人は結託して何かをしようとしているのだ。


「ふん。そんな事より店主。これはどういうことだ? 俺は鯛焼きを買いに来たのだが?」


「申し訳ありませんがこちらは販売出来なくなりました」


「今、焼いておるではないか?」


「そちらは店の皆で食べる分です。材料が余っておりますので消費せざるをえませんのでスタッフ一同で美味しく頂きます」


「ならば余った材料で作ったものを俺が買い取ろう。いくらだ?」


「申し訳ございません。私共の一存ではお売りすることが出来ません」


「なんだと?」


 怒る口調も演技とは思えないくらい怖い。

 しかしお嬢は気にすることなく告げる。しかもなぜか弱々しくめそめそと嘘泣きまでしてみせた。


「昨日、商業ギルドの方より呼び出しをくらいまして、競合する露店が割りを食うのでマルセス商店が代表して鯛焼きの販売差し止めをギルドに提案したそうで。商業ギルド長からもう売るな。ときつく言われてしまいました。ゆえに例え貴族の方が相手でも商業ギルドより絶対に売るなと言われている以上お売りすることが出来ないのです。ああ、私達はお売りしたいのに、皆さまに鯛焼きを届けたいのにっ。とても悔しいですわ。ちなみにこれがマルセス商会と共に鯛焼きを売られることで割りを食うと血判状に判を押した店の店名と取り扱ってる商品です」


 って、なんでその書類をエレインに手渡す?

 明らかにおかしいだろ。

 エレインも普通に受け取ってるし!?


「ほぅ、ならば、鯛焼きが買いたければ商業ギルド長に直接話を付ければいいのだな」


 ニタリ、エレインが悪徳にまみれた笑みを見せる。

 ああ、そういうことか……この二人は反撃を行っているのだ。

 ギルド長とマルセス商店に従うフリをして、貴族的地位を存分に使い、さらに……


 エレインが踵を返しギルドに向かおうとした時だった。

 その歩みを止めるように民衆が集う。

 怪訝な顔をするエレインに震えながら、一人の若者が前に出た。


「お貴族様、鯛焼き販売について、ギルドに行くのですか?」


「そうだ。俺は鯛焼きが喰いたい。販売させるのにギルドが邪魔だというのなら行くに決まっているだろう? 何か問題でもあるのか?」


「俺達も、俺達も一緒に行かせてくださいッ!!」


「鯛焼き、ウチの子供たちが楽しみにしてるの!」


「そうだ。こんなのギルドの横暴だろ!」


「許せるわけがあるか! 俺たちは客だぞ!!」


 そして民衆が焚きつけられた。


「良かろう、我に続け! 直談判してくれる!!」


 民意高らかに鬨の声が上がる。

 人民の意識を操作したかのように彼らを味方に付けたエレインが去って行く。

 ソレをみながら、お嬢が悪魔も逃げだしそうな笑みで微笑んでいた。


 が、幾らもしないうちにチェルシーさんを呼び出し謝罪を代わって貰うと、俺達を伴い店内へ引っ込む。どうやらあの三文芝居をするために外に出て来ていたようだ。


「ああ、そうだわフライジャル。上の人に伝えておきなさい。あまりちょっかいを掛けて来るようだとマルセス商店みたいになるわよ」


 耳元でそんな言葉を告げられ、全身が総毛立った。

 ヤバい、俺が何かしらの組織に属してるの、バレてる!?

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