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201話・リオネル、デッドオアジェイル、究極の二択じゃないかあの人?

 馬車を走らせ平民街へ。

 もはや目立つのは諦めよう。

 義父上はどうやら娘のことになると他が見えなくなるらしい。


 しばらく馬車を走らせやって来たのは、平民街でも一等地と呼べる大通りの一角。

 店に付く少し前から人が列を成していたに気付いて不思議に思っていたのだが、どうやらあの長い列はロゼッタの店を求めてやってきた平民達のようだ。

 行儀よく平民が並んでる姿とか、初めて見たぞ?


「私、平民街も結構来るけど、こんな人が並んでる場所初めて見た……」


「それはつまり、これが平民のいつも通りの姿、という訳ではないということですか。ロゼッタさんの商店ですよね? 何か祭りのようなものでもやっているのでしょうか?」


「昨日までのロゼの話からは普通に忙しいとしか聞いてないよ? 初日から行列は出来ていたらしいし」


「そういえばそんなこと言ってましたね、ということは、これがロゼッタさんの店の日常……?」


「この人数、本当に店に入るのかな? 今日一日で終わる?」


 不安げなフレデリカの言葉に確かに、と納得する面々、でも疲れたとは聞くが客が暴動を起こしたなどの話は聞かないので大丈夫なはずだ。はず、だよねロゼッタ?


「ほぅ、どうやら貴族は優先して店に入れるようだ。平民街だが、貴族用の優先保障ができているのは素晴らしいな、貴族とこじれる可能性が少なくなる」


「そうなの? 私一応貴族だけど、普通に並んだりはしてるけど?」


「ケリーは騎士爵だから。私達の場合だと平民が委縮しちゃうから」


「その通りですよケリーアさん。普通貴族は平民街には来ません。来るとしてもお付きの者を買いに行かせるとかですね。あとはお忍びですか、お忍びであれば自分の身分をひけらかす輩はいないでしょう。あの辺りの身なりの良い人たちがおそらくそれでしょう」


 列に並んでいるメンバーの中に明らかに執事としか思えない人がちらほらいる。

 なるほど、貴族だとああやって人に買いに行かせるのか。

 下手に市民街に来て変な平民に絡まれたくもないだろうし、当然か。


 たまに平民街にお忍びで来た貴族が刺殺されたりするらしいしね。護衛があっても自分の命が脅かされる可能性があるなら人に買いに行かせた方が安全で待つ必要も無く買えるからだろう。

 平民の混乱も少なくなるし、常識的な貴族はああやって人に買いに行かせるのが常道、と。

 あ、でも貴族誰か来てるな。馬車が止まってる。


「ほぅ、既に貴族が直接買いに来る程になっているのか。さすがはロゼ。我が娘は商売上手ということだな」


 ロゼッタを求めて馬車からでると、何故か子供が一人寄ってきた。

 胸元には小さな首飾りが掛けられ、その首飾りには、これってベルングシュタット家の家紋じゃないかな?


「初めましていらっしゃいませ。当店はプライダル商店になります。お貴族様、お買い物ですか?」


「ああ、いや、娘の仕事ぶりを見に来ただけなんだが、何か騒がしいな?」


「あ。えっと、その、新商品を本日から始めたんですが、それが気に入らなかった人がいるみたいで、あ、今オーナーが来ましたので大丈夫です」


 オーナー? ってロゼッタじゃないか!?

 背の高い少年に食ってかかっていた男が新たな獲物を見付けて罵声を浴びせ始める。

 あいつ、僕のロゼッタになんてことをっ!


 はっと気付いて隣を見れば、能面みたいになってしまったロゼッタの父の姿が……あ、僕の怒り一気に冷めてしまった。これ、僕が何かしなくても普通にあの平民は消えるパターンだ。


「そう、露店の客がまた居なくなると? それはおかしい話なんだよおっちゃん。そもそもこの鯛焼き君は1000サクレという高級品。食べようと思う人はそれなりにお金持ちなんだよ。つまり、普通の人は食事するなら今まで通り露店に流れるからそこまで影響ないと思うんだよ? それに客が遠のくというなら美味しいものを作れば自然と戻って来るんだよ? 自分の努力を棚にあげて逆恨みされても困るんだよ」


 ちょ、ロゼッタ。それ商売人が言うことじゃないよ。煽ってる。煽ってるから。


「なっ!!?」


 ほら、平民のおじさんもまさか冷静に酷評されるとは思ってなかったから顔が凄い変化してるじゃないか。


「て、てめぇ……っ!!」


「はいそこまで、なんだよ」


 拳を振り上げ殴ろうとしたおじさんだったが、ロゼッタは全く気にした様子も無く片手で受け止める。


「おじさんの気持ちは分かるけどそれは明らかに自分の店の客が減ってそれが私の店のせいだと分かった時に商業ギルドに伝えればいいことなんだよ? 違う?」


「くっ……お、覚えてやがれっ!!」


 何度か引き戻そうとしてたおじさんだったが、ロゼッタに手を掴まれたままで動かなくなってしまったのでロゼッタに得体のしれない恐怖を覚えたようだ。

 違う? と小首を傾げながら力を緩めたロゼッタが腕を解放すると、捨て台詞を残して退散してしまった。


 そして、僕の横でレニファティウスが囁くように告げる。


「そこの、アレを付けて特定しておけ、後で〆てやる」


 何もない所から影の人が現れ走り去って行く。

 おじさん逃げろっ、いや、もう彼の安全のために投獄してしまった方が良いかもしれない。夜道で首狩られてもおかしくない状態だぞおじさんっ。

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