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199話・クラムサージュ、さすがにちょっとやり過ぎじゃないかしら?

 今日から新商品がお目見えだそうだ。

 何かと思えば専用の鋳型を用いて作った鯛焼きである。

 こっちの世界で再現しちゃったよロゼッタさん……

 いいのかなぁ現代商品持ちこんじゃって。やり過ぎじゃないかなぁ?


 しかも店の前で新しく雇った赤ら顔のおじさんが蓄音器? みたいな機械から流れる音楽に合わせて楽しげに歌っていらっしゃる。

 紙芝居で女の子が鯛焼きが海を泳いでいる姿を見せてるし、一応アレをキャラクターとして売って行くつもりのようだ。

 まぁ、しっくり来るよ。おっさんの声でアレ歌うからしっくりくるんだよ。来過ぎるんだよ。

 なんかこう、私も鯛焼き食べたくなってきたじゃない。じゅるり。

 なのに鯛焼き1000ストナとか高過ぎじゃない?


 さすがに新商品だからだろう、興味を覚えた人が買っていく。

 冒険者が多いかな。

 アツアツだからすごくおいしそうだ。


 って、あいつって確か……また来たのかあの貴族。

 今回は貴族に付いて連絡済みだからってことで皆より優先されて店に入る。

 現代日本なら不満続出なんだけど、この世界では貴族と平民の差はあまりにも高い。

 ゆえに、貴族が横合いから掠め取るように限定プリンや羊羹を買って行っても店への不満は出て来ないのである。


 まぁ、さすがに貴族への不満は溜まるだろうけど、目の前で告げるような馬鹿はいないし、貴族の悪口なんて人に言ったら不敬罪とかで処刑されかねないから皆不満を言うに言えないのだ。


「エレインさんだっけ。今日も来たんですね」


「ふん。別に俺が直接来ようが執事が来ようが問題はないだろう? それよりこれはなんだ?」


「新商品らしいですよ。ロゼッタさんがまたなんかやらかしたらしくて四尾で1000ストナ。中にアンコ入ってますから甘いお菓子ですね。あつあつな状態で食べた方がおいしいです」


「ふむ。四尾? 尾とはなんだ?」


「あ、魚を模してるので数え方も魚に合わせたらしいです」


「なるほど。ふむ。確かにこれはいいな。全く次々に新商品を出して来る。楽しみになるではないか」


 意外と、胃袋掴まれて通ってんのかこの貴族?


「ふむ。お前は初めて見る顔だが、従業員か?」


「今手が足らないので臨時でね。普段は奥で調合してる錬金術師よ」


「ほぅ。錬金術師まで雇っているのか。クスリ等は売らんのか? 錬金術師なら調合できよう?」


「ええ、問題無く作れるわ。でもほら、ここで売ると別の店との競合どうのって面倒な話が立ち上がるらしくてね。貴族だって既得権益みたいなのあるでしょ? アレの商業版ね」


「ああ、成る程、アレは面倒臭いらしいな。父がよくぼやいている。俺としては構わず全部奪い取れば良いと思うのだが、そう言ったら憤怒の顔で怒られた」


 そりゃそうでしょ。


「貴族って面倒そうよねぇ」


 カウンターに肘ついてそんなことを呟く。

 まったくだ、と納得する伯爵令息。

 今思ったんだけど、一応私って平民よね? なんだこの構図?

 無礼討ちされないから良いんだけど、伯爵家の息子さんと普通に話しちゃってるんだけど。

 まぁ、他の皆が貴族とは話したくないってことなので、仕方なく私が出張ってるんだけどね。

 ロゼッタさんがエレインは貴族だけどざっくばらんに話して大丈夫な貴族だから平民でも普通に会話していいんだよ、って言ってくれてなければ私だってこんな話し方してないけどね。


「これが新商品か。クソ、また客が持ってかれるッ」


 ん?


「ほぅ」


 悪態に気付いた私が視線を向けると、同時にそちらに視線を向けてにやにやと笑みを浮かべるエレイン。

 なんだその小悪魔じみた笑みは。


「おい、小僧、これは一体どういうことだッ」


 珍しいな。この店にクレーム入れる奴初めて見たかも。


「おい、アレはどうするんだ? あまり長引かせると他の客が敬遠することになるぞ?」


 そうよねぇ。ロゼッタさんに一応伝えるかな。

 カウンター横に設置された配管の蓋をあける。執務室って書かれた蓋である。


「オーナー、トラブル発生。なんかクライマル君絡まれてる」


 これは昔の潜水艦とかにあった遠くに声を届けるシステムだ。

 急な用事が店長やオーナーにあった時、呼びに行くより速く相手に伝わる、ようするに糸電話の大型版である。

 管内伝って声が向こうに届くのだ。

 向こうから了解今行く。と声が聞こえたので蓋を閉じる。


「なんだそれは? なんか面白そうなものではないか?」


「あら、興味あるの? 簡単に言えば、筒状の鉄とかを部屋と部屋の間に繋いで声をかければ向こうに伝わるってだけのものよ? 声を聞かせたくない時は蓋しとけばいいの。向こうからの声も聞こえないけど」


「なんとまぁ。良く考えたものだ。ふむ。これを使えば俺の部屋から父の部屋に行くことなく返事が出来る、あとでロゼッタと交渉だな」


 っと、出て来た。

 ロゼッタさんがクレーマーの元へ向っていく。

 話を聞いてまぁまぁと返すロゼッタさん。激昂してる相手に冷静に返しているせいか、周囲の眼が気になって小声になって行くクレーマー。ほんと、クレーム処理上手いなぁロゼッタさん。でも何事もやり過ぎるんだよなぁあの人。今回は誰が犠牲になるんだろ。

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― 新着の感想 ―
[一言] >これを使えば俺の部屋から父の部屋に行くことなく返事が出来る 伝声管ですね、現在では実用としては廃れているらしいけど、異世界では斬新で当分は有効なんだよ。
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