表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1950/1986

後日談:メテオラ、芽吹く春の歌

SIDE:メテオラ


 親竜共和国は再び崩壊した。

 といっても、急ピッチでライオネル兵とヴァルトラッセが町を再建してくれたので、自力で立て直していた時よりも立派な街が出来上がっていた。


 冬を前にして建国が終ったため、人々は寒さで死に絶えることもなく、家の中でぬくぬくと過ごし、寒い日々を温かく過ごしたのである。

 私も初めてではないかと思えるほどにぬくぬくとした日々で、本当に……うぉっほん。


 さて、そんなこんなで冬を越えた我が国は、春の訪れと共に活発に動き始めていた。

 人々は歌い、畑を耕し新たな種植えの準備を始める。

 春は芽吹きの季節。あらゆるものが動き出し、活動を始める時期なのだ。


「うむ、今日も良き」


 バルコニーから覗く風景は、太陽の光を浴びてきらめく新緑。

 人々の活気ある喧騒と、心地よい風に揺れる草たちのハーモニー。

 今までの私では絶対にこんな感覚味わったりはしなかっただろうが、今はもう、あらゆる事象が私たちを祝福しているようにしか見えない。


 ふふ、こんな私も、ついに母親か。

 日を追うごとに腹の中に何かが育っているのが分かるぞ。

 すまんなロゼッタ。お前より早く結婚して子供まで生むことになりそうだぞ。


「ここにいたかメテオラ」


「おお、ルギアス、どうかしたか?」


「いや、最近ずっと部屋にいるままだろう? 暇してはいないかと思ってな」


「お前との初子だぞ。下手に動いて流すよりはここでじっとしていた方がよい。なぁに、寮生活でごろごろするのには慣れておる。しいて言うならばてれびげーむ、なるものがあればよいのだがな。ロゼッタの家にはあったのだ。魔道具をふんだんに使った室内ゲームがな」


「ふむ、プライダル商店に頼めば貰えるかもしれんな。後で手配しておこう」


「別に構わんぞ? 無ければないで日々の楽しみ方はあるのだ。見ろルギアス。ここから見える景色でも日々変わっているのだぞ。空には雲が流れ、木々は風に揺れ、人々の喧騒も聞こえる。ここにいるだけで心が落ち着いてくるのだ」


「そう、か?」


「今までの自分の境遇を思い返すとな、こうして日々の変化を見る余裕がある、それこそが私にとってはかけがえのない日々なのだ。毎日が幸せで怖くなるくらいだ」


「それだけの不幸を味わってきたんだ。もう、幸せになって良い。メテオラ。怖がる必要はないのだぞ?」


 当然だ。怖くはあるが、ルギアスがいる限りその恐怖を身近に感じることなどない。

 お前は私の元へ戻って来てくれたのだから。

 父や兄のように、いなくなったりしなかったのだから。


「十月十日というが、気付いたのは戦争終了後、その時期から数えればあと五か月ほどか?」


「今の時期なら別に動くくらいは問題ないと思うぞ。どうだ? これから庭を歩かないか?」


「おっと、我が夫からデートのお誘いかね。ならば行かぬ道理がない、というものだよ」


 そう言って、私は片手を前に出す。

 何を言わずとも伝わった。

 ルギアスが近づいてきて膝を折り、忠誠を誓う騎士のように、私の手を優しく取って、立ち上がる。


 エスコートされるままに従って、私はルギアスと共に庭へと向かった。

 当然だが、警護の兵やメイドがそばを歩いて付いてきているのは見なかったことにするのが常道だ。


 彼らの噂話も結構聞く。

 ここに来た当初はルギアスの腰巾着とか、昔の身分を嵩に着た勘違い女とか悪いうわさが絶えなかったが、戦争を終えた後はむしろ皆私に好意的だった。

 ルギアスの為に祈る私を何度となく見ていたかららしい。

 同じ女として結婚相手の身を本気で案じる姿に心を打たれたのだとか。

 今では私の妊娠を我がことのように喜ぶメイドが多く、それにつられて近衛騎士たちも私を正式にルギアス王の妻として認識し始めてしっかりとした警護を行う様になった。


 ほんと、今までとは雲泥の差だ。

 これもルギアスのおかげ、なのだろうな。

 今までは本当に適当な警護でルギアスの前だけちゃんとしていた近衛兵たちが随分と変わったな。


 いや、これはライオネル兵の頑張りを見たせいの方が強いかもしれん。

 あの一団の凄さは本当に衝撃が凄いからな。初めて見たら憧れずにはいられんだろう。

 愛国兵の極致だからな。


 アレを見せられてしまうといくら有能を謳う兵士で在れ、お前の愛国心はその程度か? と問われている気持ちになるらしい。

 日々、自分自身で見比べてしまう様になるそうで、ウチの近衛兵たちも弱音を吐いては私にどうすればいいかと尋ねてきたりしていたものだ。

 冬の話し相手はおかげで事欠かなかった。


 ルギアスと王城を抜け、中庭へと至る。

 そこには白い幕が掲げられていて、竜珠が一つ。

 各大臣たちや主要な貴族が勢ぞろいして待っていた。


「る、ルギアス?」


「ライオネルに無理を言ってな。竜珠を一つ貰って来た。昔にロゼッタ嬢にお願いして少しずつ完成させていてな。ようやく今のところまで完成したんだ。中に入っているのは……君の生涯映像だ」


「わ、私の!?」


「ずっと、我慢ならなかったのだ。メテオラがどれほど苦労して国の為に人生を犠牲にしていたか。皆にそれを知ってほしいと常々思っていてな。親竜共和国の建国秘話として今後市民街で流すつもりだ」


 えぇ、私の人生が衆目に晒されるのか!? ちょ、それはさすがに……

 私の内心を放置して、ルギアスは私の為に映像を流し始めた。

 それは幼い少女の苦難と挫折と、一人だけ諦めることのなかった男が少女を救い幸せにする物語。

 長く、本当に永く、国民に愛される映像として後の世に残ったという――――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>私の内心を放置して、ルギアスは私の為に映像を流し始めた。 >それは幼い少女の苦難と挫折と、一人だけ諦めることのなかった男が少女を救い幸せにする物語。 >長く、本当に永く、国民に愛される映像として後の…
寮でゴロゴロしてた頃にはこんなんなるとは思ってなかったなあ(笑)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ