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1949/1986

後日談:ラットノオウ、新たなる国の王

SIDE:ラットノオウ


 我思う、ゆえに我あり。

 ロゼッタ神から賜ったお言葉の一つだ。

 全国家が集まっていた戦後の結婚式で私は各国から正式に、旧マギアクロフトの領地を経営して構わない、と許可を貰った。


 つい先日、ようやくヴァルトラッセ達により造られたマギアクロフト跡地を埋め立てて造られた新たな国を、今、私たち集合意識体であるネズミの群れ、その中で私が私であると認識している大型個体、これをラットたちの王、としてラットノオウ、と呼ぶことにした。


「ぶもー」


 そんな私の国へ訪問してくれたのはリブロース王国の女王はなまる君。

 獣が王の国家が新しくできたこともあり、彼女が国家生誕祭に来てくれたのである。

 といっても、生誕祭を祝うのは我々住民のネズミたちのみ。

 ネズミと乳牛だけのお祭りは、酒を交わし合ったり、食事を振舞ったりすることはない。


 皆町の中央に集まってチューチュー言うだけのお祭りである。

 ぶもー、チューチューぶもーチュー。

 人間は一切いないため、いくつかの守護者もここにやってきて暇潰しをしては自分の守護地域へと帰って行く。


 特にゴリリアスたちは結構な頻度で様子を見に来ると言っていたので、彼らの休息が出来るよう、一応町中の家は一部を人間用にしつらえてある。

 こちらで旅人などの寝泊まりをできるようにしてあるのだ。

 とはいえ、今のところは一切使われている様子はないが。


 これでも商人たちは少ないながらも流れてくるので、通貨を流通させて売買をしていけば、他の人間たちも寄り付いてマギアクロフト並みの一大国家になるだろう。

 今はまだ、ネズミが王の国として始まったばかりだ。これからが楽しみなところである。

 一応、我々は人間と共存できる国を目指してはいる。


 ロゼッタ神に不安がられたノミなどによる人間への病気感染は我々が身綺麗にしておくことで防ぐことにした。まぁ最悪霊薬があるから問題はあるまい。

 それにしても、やはり集合意識体が王というのは、暇だな。

 今ははなまる君がいるので問題はないが、彼女が帰ってしまうと、ここに存在するのはネズミだけになる。

 

 そうすると起こるのは、全員が全員我なので集合意識のラットノオウがたった一人存在する国、になるのである。

 うん。これはマズい。やはりできるだけ早くに話ができる存在が欲しいぞ。

 せっかく知識も意識もあるというのに会話相手が不在では寂しいではないか。


「ぶもー」


 えぇ、もう帰るのか!?

 もう少し。ああいや、自国も心配なのだな。

 なぁにこの国にはまだやらねばならんことが多々ある、それを行っている間は暇などないよ。


 と、はなまる君を送り出すのはよかったが、正直言おう。暇なのは暇なのだ。

 何しろ全員が我である。

 道の舗装をしながら治水を行い行政を回し、裁決を取り、法律を作り今日の食事を考え作物を育て、などなど、ネズミたちがそれぞれ役割分担をしながら、私の思考は暇なままである。

 働きながら暇しているとはこれ如何に?


 しかし、ネズミたちの数が多いからやることが多くても割り当てで余るネズミがでてしまうな。ラットノオウ自身もやることがなくて王城の玉座に座って足をぷらぷらしているし。

 そうだ! この前新国家樹立祝い、とかでプライダル商店から貰った滑車があったな。アレの中に入って走ると楽しいらしい。やって、みるか?


 他のネズミたちは働いている間、ラットノオウは自室に備え付けられた回し車で走り出す。

 お、おお、おおお! なんだ、なんだこれは! 楽しい、楽しいぞォォォ――――は!?

 当然、集合意識体は全ての鼠が意識を共有している。


 楽しいという感情が伝われば、自分も走りたい、と思うのが鼠である。

 次の瞬間、町中いたるところに作って貰った回し車へと、ネズミたちが殺到した。

 仕事? そんなもの後回しである。


 ひゃっはー、たぁのしーっ!!

 走るの楽しすぎて思考消えちゃう――――っ、

 おはーっ脳汁垂れ流しじゃぁー!!


 カラカラカラカラ


 旧マギアクロフト王国、またの名を、ロゼリア共和国。本人の名前そのままだと照れ隠しで滅ぼしに来られかねないので少しもじった名前にさせて貰った。

 そこはネズミたちが王となった王国であり、国内では絶えずカラカラと回し車の音がする。

 ネズミたちは仕事を忘れてひたすらに走り狂い、結果、のちにやって来た守護者たちに激怒されて一匹一時間を目安に回せる以外、ちゃんと仕事する生活を送り始めたのだという。


 おかげで人間の商人たちが商売を始め、王族との交渉の末、人間の居住も始まった。

 謁見に向かう人間たちは、たまに楽し気に回し車を走っているラットノオウを見ることもあるらしい。

 別に本人は気にしていないので、走り終わるのを待ってから会話を始める必要はない。

 何しろこの国に居る我はネズミたちの集合意識体。

 たとえどこでどれだけの鼠が駆けまわっていようとも、常に考える余力はあるのだから。

 だから走ってるの待たなくていいから報告、早く済ませてくれないか?

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 ラットノオウ、実はハムスター説が浮上。
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