後日談:ザイード、サイエンスフィア学園設立
SIDE:ザイード・サイエンスフィア
久々に弟が戻って来た。
ライオネルから国外に出てもいいというお墨付きを貰い、ハネムーンで自国にやって来たらしい。
確かカルシェット・ギャルゲッツだったか。随分とラブラブじゃないか。
マルコのくせに色気づきやがって。
兄上が王位を継いだらしく、国王は第一王子だった兄上が、そして父は上皇となって引きこもり、大好きなロボット作りでもするらしい。
ロゼッタ嬢のおかげでやりたいことが多すぎるとか意味不明なことを宣っていた。
私は兄上の補佐としてライオネルの学園を途中卒業。今は新しくなったサイエンスフィアで次男と共に長兄の手が回っていない場所を視察したりしている。
たまたま、マルコがここに来た時に被ったのだ。
向こうも私がサイエンスフィアにいるとは思ってもいなかったようで、互いに驚き硬直しているのが現在である。
「あ……その、まぁ、なんだ。結婚、おめでとうマルコ」
「ザイード兄上いつ戻って来たんです? ライオネルの学園はまだ卒業前だったはず」
「途中でやめたんだ。ああ。安心してくれちゃんと卒業式は略式だがしてもらった。国の都合で戻されたんだ。本来ならお前も戻すべきなんだが、お前はお前で祖国捨てただろ」
「あはは。いやー、ライオネルの歴史調べられると思ったらつい」
「まぁいい。こっちに関しては気にするな。お前はお前の望む道を行け」
「はい。今はカルシェとのハネムーンでいくつかの国を回って思い出作りの最中ですが、戻ったら二人でロゼッタ神話を作ろうって話してるんです」
ロゼッタ嬢が泣きながら止めに来るんじゃないか?
「ところで兄上、あちらの施設はなんです? 確か前はあんな施設なかったはずですが?」
「あれか、ライオネルの学園を真似てサイエンスフィアにも学園を作ることになったんだ。ただ、ライオネルのような貴族に対する一般常識を教える学園ではなくてな。サイエンスフィアの特色を生かして、趣味を生かせる専攻学術都市にしよう、って今の国王肝入りの学園なんだ。上手く行けば専攻分野を増やして増設し、最終的に学術都市を目指すらしい」
「ほー。なかなか面白そうな試みだなぁ」
もしかしたらお前同様に歴史に興味を覚えた誰かが今度はサイエンスフィアの歴史を調べていくかも……それは既にマルコが調べ尽くしたんだったな。
「ああ、そうそう。以前調べたサイエンスフィアの歴史は兄上に託すよ」
「え? アレはかなり学術的価値が高いぞ? 他の歴史家が気付いてなかった着目点もあるし、正確性も高い。発表すれば教科書に載るくらいの価値はあるはずだ」
「別に有名になりたいから調べた訳じゃないよ。だからそういうのは兄上にあげるよ。サイエンスフィアにはもう、戻る気はないし、だから……こっちは任せた」
「ったく、お前は……わかった。こっちは任せろ。お前がライオネルにいても祖国の宝だと噂されるくらいに有名にしといてやる」
「え、やめて?」
本気で嫌がっているようだが遠慮はしない。絶対に有名にしてやるからな。覚悟しとけ。
「ちなみにだが、専攻学園が出来たら教師にならんか?」
「だから戻る気はないって言ったじゃないですか兄上。ライオネルとコスタロカの歴史紐解くだけでも数年はかかるし、ロゼッタ様生誕から神に成るまでの足取り確認があるんですからね!」
ほんと、ぶれないな弟は。
そして隣で腕組んだまま笑顔を絶やさないカルシェット。
マルコの邪魔にならないように空気に徹しながらしっかりと自分の存在をアピールしている。
意外と強かな女だな。マルコの嫁としてはかなりしっかり者に見えるし、丁度いい相手かもしれん。
「ハネムーンだったか? 新婚旅行などというものは理解に苦しむが、せっかくの平和な世界探索だ、楽しんでくるといい」
「ああ。兄上の分まで世界を見てくるよ」
「ぬかせ」
ふっと笑みを浮かべて別れを告げる。
すれ違う瞬間、ふっと、なんとなくだが理解した。
きっとマルコとはもう、会うことはないのだろう、と。
弟は自分のやりたいことを見つけ、国を巣立ったのだ。
今日はただ、故郷に別れを告げに来た、それだけなのだろう。
一度だけでも、会えてよかった。
さて、弟が道を決めて歩みだしたんだ。兄として、路頭に迷っている訳にも行くまいよ。
幸いにもライオネルで過ごした知識を生かす場が設けられたのだ。
ここいらで学園の教師をやってみるのも面白いかもしれん。
さすがに専攻といえども一般教養無くしては専門家にすらなれはしない。
いや、よほどの変人なら世捨て人になろうとも自分の趣味に没頭できるだろうが、基本的な知識を教える相手は必要だろう。
妻、か。
恋愛で見つけられるならよいのだろうが、私は確実に次の夜会辺りで婚約者が決まるんだろうな。
せいぜいイイ女になることを祈っておこう。カルシェットみたいな女性、いいなぁ……




