189話・クラムサージュ、忙しすぎでしょ!?
「クラムサージュさん団子追加お願いしますっ」
「ちょ、速い速い!? なんで? ついさっき作ったばっかじゃん!?」
「出したら出しただけ売れちゃうんです。お願いしますね!」
くぅぅ、なんか騙されたんじゃない私!?
ロゼッタ怨むわよッ。
自分のペースで錬金頑張ろうと思ってたのに、なんか普通にイベント中みたいな忙しさじゃない。これが毎日とか無理無理無理。
幸い、団子を作る為の素材はあるから釜に全部投げ込んでかき混ぜるだけで良いんだけど。
これ、マジックポイントかなり使うのよ。
いや、そりゃソレを告げたらロゼッタが補充用、三つ連続で飲むと中毒起きるから気を付けてってマジックポーション置いてってくれたけども。
御蔭で魔力回復しながら超高速団子精製機にされてしまった。
まるで会社の歯車のようだ。
いや、別に嫌って訳じゃないのよ?
忙しいけどそれはそれでやりがいがあるというか、自分に出来る事があるのっていいよね?
「ほぃ、完成っと。100個までなら一時間で出来ちゃうのが凄いね」
出来あがった団子を近くにいたセーリアちゃんに渡す。
これでセーリア達が笹の葉に詰め込んで包装。
確か5個500サクレで売ってるから20個作れるのか。
うん、まだまだ作った方が良さそうだ。
……そして二時間後。
200個作った私が休憩をしていると、ギルドからの派遣員にカウンターを任せたエルフレッドさんがダイニングルームにやってきた。
うわあお、謀らずもまさかの二人きりだ。
「ん? ああ、クラムサージュだったか。休憩中か?」
「ええ。団子ばっか作ったせいでさっき錬金レベル上がって200個一時間になったからちょっと休憩しようかと」
「そうか、ならゆっくりするといい」
と、折角休もうとしたらしいエルフレッドさんが気を利かせて自分の部屋に戻ろうとするので、慌てて私は告げる。
「エルフレッドさんも休憩ですよね。折角ですし一緒に休憩しませんか? 別に気を使ってここで休憩しないなんて必要ないですよ。ほら、ロゼッタさんの新作プリンありますし、試食いかがです?」
「む? いいのか? 私はこの通り、あまり表情が出ないらしくてな、皆怖がるのだが」
ああ、確か好感度が低い状態でのイベントにこういうのあったな。
そっか、最初のイベントが起きなくても、エルフレッドさんはエルフレッドさんとしてここにいるんだ。
確かにロゼッタの言うとおり、下手な策を弄さずともエルフレッドさんとのハッピーエンドは自分で掴み取れるかもしれないらしい。
手始めに、席に座ったエルフレッドさんのために冷蔵庫からプリンを持ってくることにした。
そのまま隣の席に座る。
おお、これが新作の……抹茶プリンじゃん。
「抹茶プリン……」
「むぅ、かなり変わった色だな。食欲は、あまり湧かん色だ」
「あはは。これは抹茶のほろ苦さが加わるから好きな人は好きなんだけどねー」
二人揃って竹製のスプーンで一口。
んー。おいひい。
「ふむ、これは……」
あ、意外と好感触だ。
さすがルインクさんが作ると砂糖の加減も絶妙ね。
「おいしいですね」
「……うむ。あまり私は甘いのは好きではないのだが、これは意外と、いけるな」
「抹茶がほろ苦くて丁度いいですね。大人な甘さです」
それからしばし、私はエルフレッドさんと他愛ない会話を行う。
話し合えば話し合うほど、ゲーム内でのエルフレッドさんと被って行く。
うん。やっぱり、この人は私が大好きなエルフレッドさんだ。
イベントこなしてゲームっぽくエンディング迎えるよりも、普通の恋愛でカップル成立を狙う方が確かに、うぅ、でも私恋愛とかしたことないんだけど。できるかなぁ?
で、でも憧れの人がこんな近くで、一つ屋根の下状態なんだし、これはロゼッタさんに感謝したほうがいいのかしら?
「はーい追加の人員来たんだよー」
「む、そろそろ休憩も終わりか。君には迷惑をかけたな。仕事に戻る」
「迷惑だなんて思ってませんよ。凄く素敵な時間でした。その、もしよろしければ、また時間が合えば御一緒しませんか?」
すると、エルフレッドさんが意外そうな顔をする。
本当に予想外だったらしく、表情筋が珍しく仕事している。
「物珍しいな君は」
「ええぇー」
「いや、すまん。そうだな……君さえ良ければご一緒しよう。私も有意義な時間だった」
ごふぅっ!?
あ、あかんよ、そんなうっすら微笑んで殺し文句告げるのはあかんのよ。
普通にCG成っててもおかしくない最高の笑顔頂きました。
エルフレッドさんが仕事に戻り、私はテーブルに突っ伏し悶絶する。
そんな現場に戻ってきたロゼッタさんが遭遇。
子供たちともどもうわぁっといった顔をする。
「クラムサージュ……頭大丈夫? 警察いる?」
「要らないわよっ!? っていうか至福の時間なんだから放置しといてくださいっ。ああん、私も有意義な時間だった、だって、ヤバい、ハートに直撃ですよ、うふふふふ……」
ああ、転生してよかったぁ。