1890話、リオネル、だから僕は……決断した
SIDE:リオネル
どこからか、男神の声が高らかに響いていた。
ロゼッタが負けたと、嬉しそうに告げる神に殺意が湧き上がる。
でも、僕では無理だ。
人の域から突出も出来ない僕では神を相手に敵討ちなんてできる訳もない。
悔しいけど、人類の敗北は確実らしい。
「なぁに、神ハお前たちを生かすと言ってイル」
そうだね。
敗北を受け入れ、神に服従を誓えば、僕たちは何不自由なく過ごすことはできるだろう。
どうせ神のことだし、人間なんてどうでもいいと考えて管理などほとんどしないはずだ。
たまに選ばれた勇者モドキが沢山の女性を襲って迷惑被るくらいで、それ以外は神に逆らうことがなければ、誰も不幸にはならない。
でも、それって、幸せかな?
何も知らない状態でなら、幸せだったかもしれない。
たとえ途中で神のいたずらによって死んだとしても、運命だと受け入れられるだろう。
僕は目を閉じて思い出す。
僕は、死ぬはずだった。
神が決めた運命として、ガイウス兄上に暗殺される予定だったのだ。
それを知った、ロゼが必死に助けようとしてくれた。
でも、彼女だけだと僕を助けることは出来なくて……
結果的にやれたのは、ガイウス兄上を道連れにする形で自分を悪人に仕立て上げること。
罪のない人々を巻き込んでの盛大な自滅で、僕の仇を討つだけだった。
だから、臨んだのだ。自分の体を使っていいから、他人に任せる、と。
自分が消えてでも、僕が生存する世界を望んでくれたのだ。
そして、ロゼッタが異世界より現れた。
きっと、ロゼは何度も同じような世界で死んで来たんだろう。
リセットスキルでもあったのか。それとも異世界の出来事を自分で体験したような感覚を受け取れたのか、実際には彼女に聞いてもないので僕にはわからない。
ただ、ロゼは必死に僕を助ける道を選んで、ロゼッタもまた、破天荒ながら僕を生還させる道を選んだ。
だから、僕は今、ココにいる。
本来ずっと前に死ぬはずだった存在は、彼女たちに望まれ、彼女たちの努力で命を繋いだんだ。
だからこそ。
死ぬはずの運命を越えたからこそ、僕には言える。
他者に支配された生き死になんて、最悪なんだ。
僕は僕の選んだ道を生きたい。
幸せにしたい女性が二人。
どちらかを選ばないといけないけど、二人とも不幸になってほしくないんだ。
だから。たとえ負けたと知らされても、彼女が死んだと聞かされても、僕は二人の幸福を願い、そのために動くんだ。
決断なんて、最初から決まってた。
迷うはずなんてなかったんだ。
僕にとってロゼは幸せにしてあげたい人だけど、ロゼッタは一緒に幸せになりたい人だから。
ああ。出ちゃったなぁ結論。
やっぱり、どんなに考えても、結婚を意識するのはロゼッタだ。
たとえ死んだと聞かされたって、実際に見るまでは信じない。そして、彼女の為を考えるならば。今ここでの決断も決まってる。
あとで、ロゼとロゼッタに伝えなきゃ。
辛い決断だけど、伝えなきゃいけないことには始まらない。
ただ、二人には幸せでいてほしいから。ロゼの幸せを皆で考えて行こうと思う。
酷い、男かな、僕は。
でも、決めなきゃいけないよね。
いつまでも、ずっと放置するわけにはいかないし。
マギアクロフト関連が終るまで、が期限だったしね。
「ふぅ……」
「悩むのモ分かるゾ。神への屈服を受け入れるのは、辛いかもしれないものな」
「決めたよ、ヨーデリヒ王。僕は……」
剣を引き抜き、上段へと構える。
「お、オい?」
「この施設を、破壊する!!」
気合と共に振り降ろす。
ありったけの魔力も込めて、施設全てを一撃のもとに破壊するために!
「キーリ!」
「分かってんよロゼはん!」
僕の動きで二人もすぐさま動き出していた。
「ま、待テリオネル! ここには、そう、お前のアニもいるぞ! ガイウスはあそこに! ベルーチたちも! コピーを取れば何度デモ蘇る! お前たちも、ロゼッタとロゼで迷っているだろう! ロゼと付き合うお前、ロゼッタと付き合うお前、二人を手に入れたお前、どれもコピーデきる! 神の威光で、だからッ」
「そんな複数の体験シミュレーションなんて要らないよ。僕らは迷って悩んで決断して、最高じゃなくて最善を選んで行くんだ。だから。お前は邪魔だ、ヨーデリヒ。そして……本体はここにいるんだね」
返す剣で袈裟懸けに切り上げ斬撃を、ガイウス兄上へと向ける。
行け、真空波斬!
「僕らの為に……死んでくれ、兄さんっ!!」
「や、やメろぉぉぉ――――――――ッ!!」
ヨーデリヒが慌てるが、ロゼが邪魔をして僕の一撃を阻めない。
そこいらじゅうの培養槽を粉微塵に破壊して、兄だった存在を、僕は一太刀の元に断ち切ったのだった――――




