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1903/1986

1888話、ガレフ、ナゲキノカルマ防衛線8

SIDE:ガレフ


―― 二度と抗うことは許さぬ。しかし、恭順を示し続けるならば道を示そう。繁栄を赦そう。我らを楽しませよ。お前たちの生きる価値など、神の享楽、その盤上の駒としての役割しかないのだからな ――


 ひでぇ演説だ。

 妻となったパステルと共に、動かなくなった強化兵を撃破しながら思わずため息一つ。


「どうしたのだ?」


「いや、お嬢が負けちまったのが衝撃的過ぎてなぁ。なんで俺負け確定なのに強化兵倒してんだろうな?」


「それは我々だけでなくリズリンドが迷わず戦ってるせいじゃないか?」


 それは、ある。

 各国が隷属をよしとして投降すべきでは、とダンジョン内で話し合ってるあいだ、リズリンドは一切会議に出席することなく、動きを止めた強化兵の駆逐を始めていた。

 それを見た一部の魔族や冒険者たちが同じようにダンジョンから出てきて駆逐を始めているのが現状だ。


 すでに敗北したのは理解している。

 けれど、俺たちはなぜか強化兵の数を減らしていた。

 理由はわかんねぇ。いや、すでに答えは出てるんだろうが、俺にはそれを考えるだけの余裕がねぇ。


 とにかくそんなことを考えている暇があるなら一体でも多くの強化兵を倒していくべきだからだ。

 しかし、ほんと動かんな。

 今の内なら狩り放題。

 ライオネル兵にも今こそ動いてほしかったところだ。残念ながらほとんどが回復不能で死にそうになってる奴ばかりだ。


 俺? 俺はほら、妻がすぐ傍にいるから致命傷とか見せられんのよ。

 自分の安全も確保しながら戦わないといけないから巨大型までで留めていたしな。

 

「しかし、神とはいえ、酷い言いぐさだな」


「こんな神になんぞ降伏するでないぞ?」


「つっても、降伏しねぇと死ぬまで襲われるぜ?」


「なぁに、ガレフと一緒ならどこでも一緒だ。ラビリル当たりのダンジョンにでも厄介になればいい」


「ああ。それもアリかもなぁ」


「ともかく、最後までは見届けようか」


 そうだな。

 せめて、リズリンドの嬢ちゃんが死ぬか、諦めるまでは……

 彼女の国の助っ人として来たわけだしな。


「姉さん!」


「モーリーも来たか。いいのか? 神への敵対が決まれば最悪死ぬぞ?」


「僕もずっと考えたんだけど、やっぱり誰かの望み通りに動くだけの人生って、嫌かな、って思って。ね、ボーエンさん、キリハさん」


「別にこちらはそこまで考えてはないのだがね。妻がお嬢は死んでないって聞かなくて」


「当然です。ロゼッタお姉さんがあんなのに負けるはずありません! どうせ神の勘違いなんですから、私たちは反撃の狼煙が上がるまで戦い続ければいいのです!」


「さすがにそれはどうかなぁ?」


「キリハさんは信じてるんですか?」


「あー、いや、そうじゃなくて……」


 なるほど、セーリアの嬢ちゃんに無理矢理付き合わされてるのかボーエンの旦那。

 まぁ、惚れた弱みだな。そりゃしゃーねーや。


「でも、私たち以外はライオネル兵もほとんどいないですね」


「あいつらは頑張り過ぎたんだ。ま、ヴァルトラッセ達が気張ってるからお任せって奴だね。あいつらは死んでも構わない、みたいなつもりらしいからな。おそらく本体か何かが別の場所に居るからそいつに繁栄は託してんだろ」


 ヴァルトラッセ達のおかげで面単位で強化兵が駆逐されていくのは見ていてスカッとする。

 しかし、それでも奴らが動き出せばすぐに埋まっちまう程度の広場なんだがな。

 クソ、このままだと結局は敗北確定だ。


 なんかねぇかな。

 起死回生の一手みたいなのは?

 お嬢のことだし、二手三手と奥の手用意してそうなんだが。

 いや、それを全て使い切っての今か?

 あー、くっそ、やるせねぇ。


「リズリンドは孤軍奮闘だな」


「彼女もお嬢信者みたいなもんだからな。諦めきれねぇんだろ。なまじ自分が強くなってるせいで、負けを許容できねぇんだ。まぁ、俺らもだけどな」


「違いない」


「盛大な負け戦。最後の最後までやり切るか」


「あ。ボーエン、我らは切りのいいところで脱出してダンジョン暮らしするぞ?」


「なんだと! おいガレフ!?」


「んだよ? さすがにリズリンドの嬢ちゃんが諦めるまでは手伝うって。あと妻が危うくなるまでだな。ダメだと思ったら即座に撤退だ。俺は孫の顔まで絶対に見るからな!」


「や、やだもう、そ、そんなに我との子が欲しいのか。し、仕方ないな。ほんと、人間は性欲が強いんだから」


「なぁ、セーリア。こいつ魔王だった奴だよな?」


「ボーエンだって似たようなものじゃない。私たちも孫の顔、見るまで死ぬ気はないからね!」


「お、おお、そう、だな」


「モーリーさん、なんか周辺が甘ったるいです」


「キリハさんはそういう相手いないんですか?」


「あいにく、私は恐れられていますので」


「そうなの? 可愛いのに」


「そ、そうですか?」


 なんか、人類敗北の窮地だってのに、新しい恋生まれてないか?

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