1887話、レグダス、ヘルツヴァルデ防衛線8
SIDE:レグダス
―― 敗北を受け入れるならば我が双神への帰依を願い、今後一切の反逆を諦め、神への絶対服従を違うが良い。さすれば今の姿のまま我が世界での生存を赦す ――
天空より、声が降りてくる。
それは神からの降伏勧告。
生き残った人民はただただ空を見上げ、全てを失ったような顔をしていた。
勝てなかったか……
予想はしていた。
むしろ神を相手にここまで戦えたのだ。善戦したと言っていいだろう。
ロゼッタ・ベルングシュタット。我が息子の命の恩人だ。出来得るならば何かしら報いてやりたいところだが、死んでしまったのなら花を手向けるくらいしかできそうにない。
―― ただし、貴様等のレベルは1に戻す。二度とパワーレベリングなんぞというふざけたものを行えんよう今後100年のレベルアップを禁止しよう ――
敗戦したのならば、受け入れざるを得ない。
どれほど理不尽だろうとも。
報いを受けるべきは相手側であろうとも、だ。
「悔しいな。だが、息子が無事戻って来てくれる、そのことだけは幸運だったと思うべきか。降伏の準備をせねばな」
「おや? なぜです?」
このクソジジイ。何をすっとぼけたことを言っているんだ!?
―― 元王よ、少し早計というものだ。まずは皆の意見を聞くところからだろう ――
それはそうだが……
ヴァルトラッセに促され、私たちは市民たちが集まっている町の中央付近へと向かうことにした。
―― 二度と抗うことは許さぬ。しかし、恭順を示し続けるならば道を示そう。繁栄を赦そう。我らを楽しませよ。お前たちの生きる価値など、神の享楽、その盤上の駒としての役割しかないのだからな ――
好き勝手言い放題だな。
これが我らの神なのか。
こんな神に祈りを捧げていたのか。
まるで道理を知らぬ若造のようではないか。
それからも、神の演説は自画自賛が止まることはなかった。
人々を卑下し、自分を褒め称え、我々にも恭順し、褒めよと叫ぶ。
なんという傲慢な存在か。独裁者。そう、まさに政治を知らぬ独裁者のようではないか。
民の苦しみを顧みず、増税増税、戦争侵略また増税。
他国も自国も無茶苦茶にして、わずかばかりの報酬に一喜一憂する阿呆。
いや、くやしいが、このままであれば手に入れる物は多大である、か。
生き残った人々全ての服従だものな。
腐っても神ということか。本当に、くたばればいいのに。
「ああ、父上、ご無事で何より」
「プレッツィル王よ、どうするかは決まったか?」
「今、市民の中央で各国王が会議中です。私とライオネル軍はもう決まっているので」
「そうなのか? そのライオネル兵はどこに? この辺りにはおらんようだが?」
「皆、あきらめが悪いのばかりですからね。同志を募って外で強化兵の撃破を行っています」
なんと、もう勝敗は決しただろう?
まだ悪あがきするつもりなのか?
馬鹿なのか? もう、負けは決まり切っているだろう!?
「父上、その顔は負けているのになぜ。といった顔ですね」
「う、うむ。だが……」
「彼らはまだ、負けたと思っていないんですよ。自分の守りたいものがある限り、抗うのだと。私もそのつもりです」
「な!?」
「どうぞ、父上たちは降伏してください。我々は、そんな市民たちを守ります」
「な、何を言っているんだ!? 死ぬんだぞ! このままだと、戦えば死ぬ! 儂らは降伏するだけで生存できるのだ。なのになぜ!?」
「あの神に支配されたヘルツヴァルデは私が愛するヘルツヴァルデではない。だから、私は私が愛したヘルツヴァルデを守る為、この命尽きるとも戦うのみ。愚か者だと笑いたければ笑ってください」
な、なぜ。なぜそんな……
―― 前王が降伏するならもう安全だな。ならば我らヴァルトラッセも其方らと共に抗おう ――
「いいのかヴァルトラッセ?」
―― 我らを生み出した神のため。神が愛したこの世界の為に、我らは礎となることを選んだ ――
ヴァルトラッセとプレッツィルが握手を交わす。
待て。待ってくれ。
プレッツィル。また、いなくなるのか?
私は、私はまだお前に親としての責務を果たせてないのだ。待ってくれ。私は……
「お待ちくださいお二方」
私が一歩踏み出そうとした時だった。
背後からゆっくりと歩み出る胡散臭い司祭のジジイ。
「今しばらく、お待ちなさい。約束の時はまもなくです」
「おぬしそればっかりではないか」
「仕方ないでしょう。アレが予想以上に粘るのですから。しかし、もう間もなくでございます。ゆえに皆様、祈りましょう」
「だから、お前は胡散臭すぎるんだ、と」
「失礼。貴方は?」
「ロゼッタ神教ヘルツヴァルデ支部の司祭にございます」
「ああ。そういう……そうか、まもなく、なのか。随分待ったな」
―― そういうことならば、今は待とうか…… ――
え? え? プレッツィル。お前コレの言葉理解できたの!?




