18話・ロゼッタ、刀捌きは万全なんだよ
とりあえず身体能力アップの仕方は覚えたから、外で剣術特訓のついでにやってみよう。
三時まで本を読んで過ごし、三時からまた体操服で庭に出る。
腰布も付けて鞘を取りつけ、突撃だ。
付いて来たリオネッタが、またお嬢様が何かやらかす気だ。と呆れた顔をしているけど気にしない。
あ、リオネッタ、その辺り危ないから、あっちの方まで下がってて。
よし、充分なスペースできた。
腰だめに構え、チャキリと鞘から親指で刀を押し出す。
右手で柄を掴み、目を閉じる。
精神を集中。
風は微風。空は晴天。
昼下がりの陽気な世界。
ゆっくりと情報を消していく。
一つ一つ、集中するごとに周囲の音を無くしてく。
自分以外の異音が消える。
殺陣をやっていたので刀自体の使い方は万全だ。
思い出しながら、一つずつ型を確かめる。
まずは抜刀からの居合斬。
目を見開くと同時に刹那の一閃。
空気を切り裂く銀光が走る。
さらに一歩踏み込み両手での袈裟掛け、胴、突き、真上に上げてからの振り下ろし。
すり足で後ろに飛び退き正眼で制止。
よし、それなりに動ける。型も忘れてない。
八双上段、牙突に……って、これは漫画か。
そういえば漫画の型、魔法と組み合わせれば色々できるかもしれない。とりあえず飛天○剣流はまんま使えそうだよね。九頭○閃とか可能かな? 殺さずの誓いを破るでござるっ! ん? 破っちゃだめなんだっけ?
身体強化魔法と併用すれば三段突きくらいは出来そうな気がするけど。
要練習だなぁ。それに剣士といえば、やはりセイバー。宝具は撃てるようになるのでしょうか?
あのゲームの狐耳の人が一夫○妻去勢拳なるものを開発してたよね。
こっちでもそういうのあった方が良いよね。酷い男っているだろうし。確実にタマ取れるスキルに昇華させよう。
そう、男性特攻特殊攻撃スキル。浮気撲滅断罪拳を! 拳と言いながら蹴り技で行こう。これが正義だ。撲殺だっ。練習しとかなきゃ。
「な、な、なんですかそれぇっ!?」
うわっ、びっくりしたぁ!?
え? なにリオネッタ。どうしたの?
驚きの声に驚いた私に、今のなんですか!? と尋ねてくるリオネッタ。
「け、剣なんて初めて振る筈なのに、い、今のは一体……」
「やーねぇリオネッタ。これは剣じゃなくて刀よ」
「そういう問題じゃありませんよね!?」
「えー。あ、そうだリオネッタ。藁人形作りたいから、これくらいの丸太を二本と藁を束で購入して来て欲しいんだけど」
「そうじゃなくて、今のは知識だけじゃ絶対に出来ませんよロゼッタ様。一体どこで……」
「やだもう、リオネッタったら。それはぁ……ひ・み・つ。なんちゃって」
てへぺろやってみた。
前の世界じゃ高齢過ぎて絶対にやれなかったけど、今なら八歳のロゼッタちゃんだ。
てへぺろしたっていいじゃない。子供だもの。byみつ……なんだっけ?
「えええっ!? おかしいですよね? やっぱり頭を打ってからロゼッタ様何か変ですよ!?」
「気のせいよ。リオネッタがやって来た時のことだってちゃんと言えるわよ。前と変わってないわ。それとも、前のようにリオネッタに無理難題吹っ掛けたほうがいいのかしら?」
「今も無理難題吹っ掛けられてますが……でも、確かに……」
不意に考え込むリオネッタ。
今までの理不尽な無理難題を吹っ掛けられるのと、今の頑張ればやれるけど無理っぽい難題を吹っ掛けられるのでは雲泥の差である。
大変なことには変わりないけれど。
「とりあえず、もうしばらく型をやったら次は浮気撲滅断罪拳の練習ね。一に金的、二に金的だと代わり映えしないし、言い回しも考えないとだわ。それにちゃんとオリジナルなスキルに昇華させないとだし。あ、そうだ。ちゃんと相手を見極めた手加減型と確殺型を作っとこう。犯罪者とかは遠慮要らないだろうから蹴り潰しよね」
「お、お嬢様?」
「よし、頑張るわよリオネッタ」
「私は頑張りませんよぉ!?」
どっちもどっちで大変だったらしい。泣きごと言って来たリオネッタには前の方よりは良いですけどもうちょっと淑女の嗜みを大切にしてくださいと言われてしまった。
仕方ない淑女の嗜みとやらも練習するか。夕食後でいいよね? やっぱり踊るの? ベリーダンス? もしかしてコサックダンス? 私、出来る気がしないよ?
夕食を取り終えると、早速お母様に尋ねてみる。
貴族としての礼節を知りたいと愛娘に言われれば、お母様も大喜びだ。
夕方から風呂に入るまでの時間、毎日することになった。
うん、なんか凄く時間が埋まり始めたぞ? 既にやることが一杯だ。ブラック企業もびっくりだよ、ブラック貴族? それは犯罪臭しかしないんだよ?
一日を終えてゆっくり休む。お休み? 明日からもまた忙しいんだよ? おかしいな。異世界に来てまで働いてる気分だよ。
やりたいことは一杯だ。運動だけでも一日じゃ足りないくらいだ。
運動量は徐々に増えるだろうし、余裕な時間が無いんじゃないかな?
まぁ、そん時はそん時に考えよう。お休みぃ。