1830話、ゴルディアス、サイエンスフィア防衛線2
SIDE:ゴルディアス
「ああクソ、突撃してぇ」
「絶対やめろよゴルディアス。お前が総大将なんだから最前線に行ってどうする」
「指示出しはお前に任せるぞアマルガム。ダメか?」
「会議でゴルディアスが総大将だと決まっただろ。つべこべ言わずに指示を出せ指示を」
「つってもよアマルガム。各国俺の指示無視して突出したり守りに入ったりしてるだろ。指示しても従う気がねぇなら指示する必要なくね?」
「それならそれで、そこが崩れた時のフォロー要員配置したり、いろいろあんだろ。ほら、事態は刻一刻と変わってるぞ」
分かっている。分かっちゃいるんだ。
現にライオネル兵向かわせてるだろ。
ただ、なんつーの。このままだと各国の兵士たち完全に不要扱いでさ。ライオネル兵だけいりゃいいんじゃね? になりかねなくね?
いや、実際なり始めてるだろ。
「だが命令を聞かない部隊にまで気を配っていると致命的な失態をしかねないぞ? 俺たちの最優先事項はサイエンスフィアに強化兵を向かわせないこと。あいつらが自分の失態で全滅しようと俺らが守る相手じゃない。そもそもそんな余裕もない」
「そうなんだが、そういうんじゃなくてな。あー、なんっつぇばいいかな」
あいつらにも守りたいものがあって、それを守る為に戦ってるんだ。なのに命令聞かないから死んでも仕方ねぇよな、じゃなんか違うだろ。つってもフォローに入って他が保てなくなって自壊するのも違うし。
あー、もう、俺が総大将じゃなかったらああいう場所に直で突撃して叱咤激励しながら命令に従わせるのによ!
「ん? お、おいゴルディアス! あれ!」
「ん? どうし……げぇ、飛行型までいんのかよ!?」
まだ遠くだが、数体の中型強化兵が翼を生やして飛び始めていた。
さすがに空から攻められたらサイエンスフィアに辿り着かれかねない。
とはいえライオネル兵はフォローに回してるからあまり使えない。
どうする、どうする?
何かいい方法とかねぇか?
さすがにねぇよな?
あーもう、俺が自由だったら身体強化で飛び上がって斬り殺してるところなのにっ!
「対空砲火用意! ライオネル魔法兵、飛行型を優先的に叩き落せ! オラッ、命令無視の阿呆共、アレを落としてやるからテメェらで倒して見せろ。一匹も倒せねぇようならお前らほんと用無しだぞ!」
命令無視して独自に動いている奴らに限って中型相手に押し込まれてるからな。俺の言葉に苦々しい顔をするが、そもそも命令違反してんのお前らだからな。
ったく、一国の兵を預かるモノが総司令官の指令無視するとか何考えてんだ。
「サイエンスフィアの長官殿、遠距離系の武具はないか?」
「投石器くらいだ。鉄骨等の投げるものは大量にあるが、投げる器具がな……」
「んだよ。投げるもんあるのかよ。なら鉄塊ここに持ってきてくれ」
「は? あ、いや。持ってくるだけでいいのか?」
俺の言葉に困惑しながらサイエンスフィアの兵団が町中の鉄くずを回収しに向かっていく。
しばらく待っていると、自動四輪車という乗り物に牽かれたトロッコに、大量の鉄くずが乗せられてやってきた。
「おー、良い感じじゃないか。んじゃままずは……一投!」
重そうな鉄塊を持ち上げ、空飛ぶ強化兵向けて、投擲。
レベルカンストの腕力に乗せて飛ばされた鉄塊は、飛翔していた強化兵に激突。
大きな穴をあけて相手を落下させ、さらに背後にいた強化兵まで撃ち抜いた。
「おっと、二枚抜き!」
「ほー、さすがだなゴルディアス。どれ……」
アマルガムも同様に鉄塊を持ち上げ、適当な飛行強化兵へと投擲。
「ほぉ。やるな!」
「さすがに二枚抜きは無理だが、命中させるのは簡単だな」
「……嘘だろこいつら」
「いや、サイエンスフィアの兵士さんたちよ、あんたらのレベルもカンスト済みだから、これくらいはできるはずだぞ。今までの常識が邪魔してんだよお前らは。手加減覚えたせいもあるかもしれんが」
と、誘ってみる。
困惑しつつも彼もまた、集中して飛行強化兵へとターゲッティング。
振りかぶって、投げた!
「ああ、惜しい!」
「な、なんと、本当にあんな遠くまで届いた……」
「な、意外といけるだろ。ほら、そこの兵士たちも、ぼーっとしてねぇで飛行強化兵撃墜するぞ!」
「お、おう!」
「飛行型強化兵は落下と同時に確実に潰せ! つっても小型強化兵への対応忘れんなよ! あいつら数だけは多いから取り逃がす可能性が高いぞ!」
「サイエンスフィア兵は鉄塊の回収を町の待機組に伝えろ。ありったけかき集めろ、残弾全部撃ち尽くすつもりで投げるぞ!」
おー、意外と楽しそうに投げるじゃないかサイエンスフィア兵。
命中させると大歓声起こるし、ゲーム感覚だが、今は士気を上げるのにもちょうどいいからこのまま頑張ってもらうとするか。