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1826話、ロゼ、そんなことくらい、知っていた

SIDE:ロゼ


「ロゼっ」


 ライオネルの戦場を見ていた私に、リオネル様が声をかける。

 どう行動しようかと作戦と立てていたところだったので、すぐに彼の元へと向かった。

 作戦行動よりもリオネル優先よね。


「何かしら?」


「ロゼ、遅くない?」


「リオネル王子、ああいや、侯爵候補、ロゼ嬢は呼んですぐ来られたと思うのですが……」


 私が近づくと、リオネル様の近くにいたフェイルが思わず呟く。

 いや、ツッコミ待ちしてたわけじゃないと思うわよ。そもそも私の話じゃないわ。


「ああ、ごめんフェイル、僕はロゼもロゼッタもロゼと呼ぶようにしてるんだ。二人からそう呼んでほしいとも言われているしね」


「おっと、これは差し出がましいことを、失礼いたしました」


「それで、ロゼ。ロゼ……ロゼッタはまだ帰ってこないのかな? 確か君が帰ってきてすぐ戻るみたいな話だったと思うんだけど」


「私がロゼッタの元にいたときはマギアクロフトに魔法を打ち込む寸前だったので。あれを打ち込んだら離脱する、と聞いていましたわ」


「だよね。つまり、本来ならもう戻って来ていてもおかしくない訳だけど……いないね」


 確かにロゼッタもキーリも戻ってこないわね。

 

「お嬢なら大丈夫では?」


「私もそう思うわ。大方別の戦場も覗きに行ってるんじゃない?」


「そうかもしれないけど、そうじゃないかもしれないでしょ。ロゼなら戻ると言えばまずいったん戻って来るはずだ。報告を入れもせず戻ってこないなんてさすがにおかしいよ。ロゼ、悪いんだけど僕をロゼ、いやロゼッタの元へ連れて行ってくれないかな?」


「しかし、お嬢ですよリオネル様、殺したって死にそうにないお方ですが、一応念話してみましょう」


「私の全力からも逃げおおせて未知との遭遇してるくらいだしねぇ。どうせそのうちひょこッと戻って「ロゼッタだって人間だよ!」え、あ、はい」


「皆ロゼッタを超人扱いしてるけど、彼女だって傷付けば血が出るし、不意を突かれたら死にかねないんだ。特に強化兵は今まで彼女の十八番だった結界を砕くだろ」


「それは……はい」


「何かあった後じゃ遅いんだ。頼むよロゼ!」


 ああ。分かってた。

 分かってたことなのに。

 こうして本人の態度で理解させられるのは、辛いなぁ。


 私はリオネル様が好き。子供の頃からずっと、ずっと好きだった。

 いいえ、何度も、そう、何度も助けようって繰り返したわ。

 その意識だって残ってるのよ。


 ゲームだから? そうじゃない。あの妹神が知識として私に組み込んだのよ。

 リオネル様を暗殺されて、ガイウスに復讐して。何度も何度も繰り返した。

 そのたびにリオネル様を救おうとして、結局復讐するしかできなくて。


 好きだった。 

 この人との一緒に一生を終えられたなら、私はそれだけで満足なのに。

 それは叶えられない夢だった。

 足掻いて足掻いて、神の法則から抜け出せなくて。


 だから、妹神の甘言に乗ってしまった。

 寛子が私の中に入ってきた時、これでどうにかなるとは思わなくて。

 でも、あいつは私が出来なかったことを何なくやってのけた。


 悔しくて悔しくて、仕方なかったけど。リオネル様が生きてるだけで、幸せだったのだ。

 私じゃなくてもリオネル様が幸せになるなら……

 でも、そんな私にもチャンスが出来た。出来てしまった。

 寛子の意識を殺すことになると分かっていても、リオネル様の恩人を消すと分かっていても、私の体を返してほしかったのだ。リオネル様を私だけのものにしたかったのだ。


 二人に分かれて、ロゼッタを殺そうとして、失敗して。

 どちらかしか生き残れないと視野狭窄になってた私に、彼女は新たな選択肢を教えてくれた。

 リオネル様が選ぶまで、休戦。

 二人のロゼで、リオネル様を取り合う日々。


 いろいろと、アタックしてみたし、リオネル様も満更じゃない時は何度かあった。

 けれど、分かってた。分かってたのだ。

 リオネル様が好きなのは、私じゃない。私の中にいたロゼッタ。つまり寛子なんだってことくらい。


 リオネル様を助けたのも、一緒に過ごしたのも、好きになったのも、全部私ではなく寛子だったって。

 この争奪戦は、戦う前から敗北が分かっていた。

 分かっていても、ロゼッタを殺すことなく、対等に競い合える下地に飛びついた。

 だって、ロゼッタが死ぬとリオネル様が絶望するのは分かってたから。


 彼女を殺さず、リオネル様と私が幸せになる。そんな未来は絶対に来ない。

 来るはずがない。

 わかってた。リオネル様が心配するのも、ロゼッタだから。ロゼではダメなのだ。

 あくまでロゼ、ロゼッタの代わり、代行品。

 私には、リオネル様しかいないのに、リオネル様の愛情は手に入ることはない。


「むぅ、念話にも出ませんね。こんなことは初めてかもしれません」


 フェイルの言葉に、私はため息を吐き、リオネル様へと手を差し出す。


「……マギアクロフトに飛びます。そこに居なかったら、どこ行ったか分かりませんよ?」


「頼む! 僕をロゼッタの元へ、連れて行ってほしい」


「移動してなければすぐ会えますって」


 リオネル様、どうか。どうか少しで良いのです、私を、見て――――

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― 新着の感想 ―
>彼女を頃さず、リオネル様と私が幸せになる。そんな未来は絶対に来ない。 傾国婆「もしロゼッタ神様が真にロゼッタ神様になられましたら、王家ごときが神様と結ばれるなど許されて良いものですかな?」(どゲス…
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