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1809話、???、戦いの始まり・ナゲキノカルマ

SIDE:???


 私がそこに辿り着くと、すでに集まった兵士たちが二手に分かれていた。

 互いに敵意を向けるのは、人間の兵士たちと、魔族の兵士たちである。


「呵ァ――――――――――――ッ!!」


 一触即発状態を見た私はとっさに声を発した。

 怒号が駆け巡り戦闘開始寸前だった彼らを吹き飛ばさん限りの衝撃を与える。


「なんっ」


「いきなりなんだ貴様!?」


「何だ貴様、ではない、これからマギアクロフト軍が来るというのに味方同士で潰し合いか?」


 ため息を吐きながら両軍の中央へと進み出る。

 

「そうは言うがライオネルの、奴ら人間を見下し過ぎだ!」


「ふん、実際に雑魚なのだから震えていればいい。魔族軍が人族の軍など軽々蹴散らしてくれるわ。このような場所に避難する必要すらなかったと知れ!」


「魔王たちがここに来るよう命じたはずだ。その時人間の兵と協力して事に当たるよう言われなかったか?」


「だからといって雑魚と群れる意味はないだろう」


「キミは……パワレベも受けていない魔王領の兵か。なら仕方ないか。いいだろう。そこまで言うなら私に攻撃したまえ。キミが勝ったならこの戦は魔族にお任せするとしよう。どうかね?」


「はっ! いいぜぇ、総大将気取りの雑魚が! 俺の一撃でぇっ」


 地を蹴った魔族の男、筋骨隆々ではあるのだがパワーレベリングを行っていないせいでレベルは200にも届かないようだ。

 これではここに集う兵全てに敵わないぞ。

 おお。盛大な音が鳴ったな。思いきり折れたぞ。


「オルァ! ひゃはっ、悪っりぃ、首折れちまったか?」


「問題ない。この程度ダメージにもならん」


 無防備に受けた私が無傷なことに気付いて、は? と驚く魔族。

 彼は今の攻撃で何が折れたか理解していないのか? 痛いだろうに。


「ところで、その足痛くはないのか?」


「は? 足? あ……俺の、足ぃぃぃ!?」


 見事に折れてプラプラとしている右足に今気づいたようだ。

 理解したことで痛みが襲い掛かって来たらしく、その場でのた打ち回り始める。


「魔族軍に告げる。こいつのようにライオネル主催のパワーレベリングに参加していない者は論外だ。無駄に死ぬくらいなら町の中に避難しておきたまえ。君たちでは戦いにすらならん」


「なん、だと!?」


「あいつら、パワーレベリングしてなかったのか!?」


「え、それじゃあのまま戦ってたら、俺ら虐殺者になってた?」


「レベルが違いすぎるもんな……」


 人族兵から呆れた声が漏れる。

 魔族兵のパワレベを行った者たちもさすがにこの実力はマズいと気付いたらしい。

 

「あ、あんなもん、人間共の悪あがきなんじゃ……」


「魔族はそうやって人を甘く見過ぎているモノが多いらしいな。はぁ。いいか諸君。マギアクロフト強化兵の推定レベルは2000から4000だ。最弱兵でもおそらく300レベルは無いと戦いにならん。そして最強格はおそらくレベル9999の兵士が最低でも1000人は必要になる。それほどに隔絶した実力で攻めてくる。300に満たない者は申し訳ないが一般人と共に避難してくれ。私たち守る側としても無駄に死者を増やしたくない」


「ふ、ふざけんな!? 俺が、俺が弱者だってのか!」


「現に私は攻撃していない。キミが勝手に攻撃して私の体に耐久出来ず折れたのだ。実力不足だよ。今回の戦いではお荷物だ。避難したまえ」


「ぐ、ぬぅ……クソがァ!!」


 地面に拳を打ち付け不満をあらわにするが、彼は実力の差を理解してくれたらしい。

 折れた足を引きずりながら、仲間たちと共に町へと戻っていく。

 おい、忘れ物だ。声をかけると、振り返った彼に霊薬を投げ渡す。


「回復薬だと? 施しのつもりか!?」


「その足で逃げ切れなかったから死んだと言われると私が悔やむ。遠慮なく使え」


「ふん、礼は言わ……ぬおぉ!? なんだこりゃ!? 足が治った!? こんな一瞬で!?」


 さて、そろそろ来るな。ここから先は手を抜くことすら許されない激戦の連続だ。


「全軍清聴! ナゲキノカルマ、およびその周辺国と魔族領の中で我々の呼びかけに答えた20の領地の兵士たちよ。心して聞いてほしい」


 20の領地の内、半分くらいがパワーレベリングに参加しなかったので今回の戦いでは足手まといだ。

 なので彼らには国内で一般市民の誘導を頼むことにした。

 一応戦士なのだから一般人よりは率先して彼らを守る行動をして貰いたいものだ。


「これよりは神話級の聖戦となる。我らはいわば神から逸脱し、人の世を築き上げるため立ち上がった反抗軍だ。恭順をしめしマギアクロフトの属国となることを拒否し、祖国を守り、民を守り、家族を守ることを覚悟した戦士である! その戦士に人族だ、魔族だ、などという細かい区別は不要。等しく抗う者である。いがみ合い潰し合っても待っているのは絶滅だ。此度の戦のみでいい、隣り合う異形の者たちを戦友として扱ってほしい。お前たちが戦うべきは、国を、民を、家族を蹂躙しに来る敵だけだ!」


 残った魔族たちはパワーレベリングに参加していたのだろう。人族の実力もかなり高いと理解しているので、納得した顔をしているモノが多い。

 ただ、守るべきモノ、というのが彼らにはないのだろう。だからここでライオネル式の発破をかけても魔族には響かない。


「魔族の方々よ、守る戦いと言われても理解に苦しむだろう。だから貴方たちにはこう、告げよう。神の使徒を撃破し名を上げよ! この戦、この一戦においては歴史に残る大戦だ。必ず後世に記されることだろう。ゆえに勇敢に戦い、魔王よりも名を轟かせよ、あの魔族が居たから我々は勝てた。そう告げられる者と成れ! 人族よ、我らの背にあるものを理解せよ! 祖国がある、仲間がいる、愛しき家族がそこにいる。お前たちが逃げれば、死ねば、彼らを守るものが居なくなる! 決して死ぬな! 逃げるな! 死に物狂いで抗い抜け!! 聖戦を、開始する!!!」


 大将格は私一人だが、やってみせるさ。このネイサン=ブラホード、元帥の名に恥じぬ戦いをしてみせようじゃないか!

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