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180話・ロゼッタ、私への客が多いんだよ? その6

「オーナーっ」


 おばあちゃんにキーリとの話を伝えていると、血相変えたパラセルが走り込んできた。

 どうやら何かあったらしい。


「申し訳ありません皆さま、トラブルのようです。パラセル道中教えて」


 パラセルとともに部屋を出る。

 皆あっけに取られてたけど、私の顔を見てただ事じゃないと思ったらしい。

 慌てて後を追って来た。


「い、今レコールとルインクさん、エルフレッドさんが対応してるんだけど、き、貴族が、貴族が来ました。それも、クレーマーです」


 なんと面倒な。まさか店開けて数日で貴族が来るとは……

 おや?

 あれはエレインじゃない。

 なんでまたこんな場所に来てんだあの我儘伯爵令息は。


「どうかなさりまして皆さん?」


「ああ、オーナー。すまない」


 エルフレッドさんが困ってるらしいけど困ってるように見えない眉間に皺寄った顔で告げる。


「貴様がオーナーか……ん? いや、待て。子供がオーナーだと!? しかも女? いや、ん? どこかで見かけたような?」


「申し訳ありませんが揉め事の理由をお聞きしたいのですが、他の平民の方々が気遅れしております、こちらの部屋に来ていただいても構いませんか?」


「ふん。まぁいい。どうやら話の分かる奴が来たようだしな」


 エルフレッドさんたちを鼻で見下し私の元へとやって来るエレイン。いや、見下したというよりは話にならんっという意思表示かな。

 こいつは頭も良いし、運動も出来る、才色兼備だけどそのせいで天狗になっちゃってる我儘の伯爵令息様だ。

 基本自分中心に世界が回ってると思ってる人なのでそこから逸脱した存在を見ると我慢ならずに自分の下へと置こうとしてくる。


 さぁて、これで絡まれないと良いんだけど。

 ギルド長達が不安げに見つめる中、空いている応接間へとエレインを連れて行く。


「どうぞ、おかけになって。リオネッタ。お茶の用意を。パラセル、私の後ろに立っておいて」


「は、はい!」


 さて、初の店長呼べクレーマーは我儘令息様ですか。

 相手の性格が分かってるだけ話しやすくはあるかな。

 それと日本みたいにお客様は神様ですって遜る必要は無いし、一応家柄はこっちが上だしね。


「まずはごきげんよう。夜会の時以来かしら?」


「夜会? ……ああ、王族の夜会にいたなお前。ということは、同じ貴族か」


「ええ。趣味の範囲で商店を立ち上げたの。数日前に開いたばかりなのだけど、何か気に入らないことがありまして?」


「ふん、ならば告げるが、俺は貴族だ。それは分かるな?」


「ええ。理解してますわ」


「なのに平民共々並べとは何事だ!」


「は? ……え? ああっ!」


 成る程。貴族だと分からず、というかその辺り指示してなかったから普通に並ばせようとしちゃったのか。

 いや、でも、ねぇ。まさかもう貴族が来るとは思わなかったからなぁ。


「それは御免なさいね。まさか貴族の方が早々に平民街にある店を自ら訪れるとは思ってなくて、まだ教育してなかったの」


「むぅ、そこは一番重要だろう? 俺でなければ皆殺しにされても文句が言えんぞ」


 困ったように告げるエレイン。彼、自己中ではあるけど平民は貴族以下でか弱い存在だから保護対象、彼らに怒り狂って殺してしまうのは愚かな行為。という自己流の考えがあるので、多少の無礼なら真摯に謝れば平民相手でも許してくれることがある。


「そうですわね。平民街の店に貴族が来ることを想定はしていたのですが、まさかこれほど早く来られるとは想定外だったので対応の仕方はまだ告げてませんでしたわ。軌道に乗ってからと思っておりましたのに、早めに考えなければいけませんわね。平民と貴族は分けておかないとトラブルの元ですし」


「その通りだ。俺は何も間違ったことは言っていない。なのにまるで俺が悪者のように対応に困っているから怒っていたのだ」


「それは申し訳ないことをしましたわ。せっかく来て下さって忠告をしてくださっていたのに」


「い、いや、俺こそ、確かにここは平民街だからな。ただ、プリンというものが美味いと小耳にはさんでな。せっかくなら直接買って確かめようかと思ったのだ」


 行動派だなぁ。

 お、ナイスリオネッタ。茶菓子にプリンを選ぶとかナイスチョイスなんだよ。


「丁度良かったですわ。こちらがプリンでございます」


「なんと、これが?」


 出されたのは蒸しプリンだ。プリンも結構バリエーションあるからなぁ。私が好きなのはやはりぷるんぷるん震えるプッチン様だね。寒天使って作る奴だけど普通のプリンと違って冷蔵系なんだよね。だから食中毒の関係でなかなか作ることが難しいのだ。


「ふむ。どれ」


 竹のカップに入ったプリンを竹製のスプーンで掬って食べるエレイン。

 眼を瞑りゆっくりと味わい、ふむ。と一言。


「なるほど、これがプリンか」


「はい。ご満足いただければ良いのですが……」


「……いくらだ?」


「え? あ、お一つ600サクレと……」


「違う、幾ら作れる? 作れるだけ買おう」


 さすが貴族、買い方がえげつないんだよ。


「申し訳ありませんが、このプリンは日持ち致しません。普通に買ったならばその日に、暑い日は半日以内、冬ならば、三日ほど氷室で持つ位でしょう」


「そうか。少し残念だな」


「それと砂糖を使っておりますので食べ過ぎると貴族病を発生します」


「くぅっ、歯が黒くなるアレか。かなり痛いと聞くぞ」


「多くても一日一つ、程度にしておいた方が良いでしょう」


「そうか。お前、商売は向いてないな。普通の商人は買わせられるだけ買わせるものだぞ?」


「あら、それは確かに瞬間的な儲けはでますが、後に怨まれたりなどで商売出来る場所を失いかねませんわ。長く続けるならば信頼は必須ですわよ」


「ククっ、違いない」


 私の言葉にエレインはニタリと不敵に笑う。

 なんかの琴線に触れたらしい。これは、ライバル宣言する時のエレインの顔なんだよ!?

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― 新着の感想 ―
[一言] 「むぅ、そこは一番重要だろう? 俺でなければ皆殺しにされても文句が言えんぞ」 口うるさいあんたを殺してしまった方が簡単じゃないの?と言ってあげたら面白いと思う。
[一言] エレインは良い貴族(貴族としての権利と義務が判るという意味で。)なんだね。 階級特権による驕りだけを鼻にかける馬鹿じゃなくて良かったんだよ。 エレイン何か提案する気なんだよ。(プリン絡みで…
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