1802話、ロゼッタ、やりすぎ? むしろまだ足りないでしょう
「何だこの地獄絵図……」
本日、魔族領にも状況伝えてレベリングする? と尋ねてみた数日後、かなりの数の魔族たちがレベリングをし始めた。
そして人間たちと一緒に全てを放出して仲良く泥団子持つ訓練を行っている。
そんな状況を、私とガレフ、パステルちゃんが見つめていた。
彼らも来たはいいものの、あまりにも酷い状況にただただ茫然とするだけだった。
パステルちゃんもいつの間にかカンストしてるじゃん。ガレフ一緒に潜ってた?
あー、まぁ確かに強くなってた方がいいもんね。
「なんとか世界中の国も協力国はレベリングを希望してくれてね。なんとかここまで漕ぎつけたんだよ」
「い、いや、ロゼッタ先輩よ、さすがにやり過ぎじゃないか?」
「お嬢、俺もよ、確かにここまでやっても勝てるか不安だってのはわかるが、絵面がひどすぎる」
「そうは言うけど相手神だし、やれること全部やっても不安しかないんだよ」
「そりゃまそうだけどな。創造神と戦争とか意味わかんね」
「創造神だし、我々のことなど指先一つで潰せように」
「そうだよなぁ。抗うだけ無駄な気がするんだが、なんで神様はお嬢を直で殺しに来ないんで?」
「うん? ん――――、なんでだろうね?」
ガレフの言葉を聞くと、確かに、と思わなくもない。
神としては私が邪魔なんだから人間に殺させようとしたり、強化兵送り込んだりしなくとも、直接私を消しにくればいいんだよね? なんでしないんだろ。
いや、むしろやりたくてもできない、とか?
「アルセデアルちゃんよ、端末体ならわからないかな? なんで兄神さん私直で殺しに来ないんだろ?」
「おー?」
うん、だめだわ。神様降臨してないとアルセデアルはオツムの弱い幼女でしかないらしい。
興味あることを見つけるとそれに夢中になってこっちの話ガン無視するタイプの女の子である。
はぁ。とりあえずこれが落ち着いたらアルマティエにでも聞いてみるか。
でも、そんな時間あるかなぁ。
全国家全員のレベリングがなかなか大変だし、ライオネル王国魔改造で結構時間使ってるんだよね。
そういえばエリオット王に伝えてないけど、別に国を守るためだし問題ないよね?
ヤマダさんには伝えてあるし、起動するのもヤマダさんと歴代王族たちにお任せするから問題ないんだよ。
「そう言えば、あそこにいるエリオット王じゃね?」
「いいだしっぺの王様がレベルカンストしてないのは言い訳が立たないとか言い出してカンストレベルまで頑張った成れの果てなんだよ」
「マジかよエリオット王……よくやって」
「レベルカンストしてようやく一般人扱い、みたいな世界になっておるなー」
虚空を見上げて呟くパステルちゃん。
全員レベルカンスト目指して戦ってるんだけど、さすがに一般人は最初の2000くらいで止めてる人が結構いるよね。
それでも逃げるだけなら十分すぎるからいいんだけどさ。
あと、全国家の会議で決まったんだけど、守る場所が多すぎるのは問題だろうからってことで戦争中だ全国家の国民をライオネルにまとめようか、という話も持ち上がった。
さすがに食料などが足りなくなるってことで大国と中型国家の一部に限定して小国の人々とかはそのどれかに一時退避、守る国の数を少なくして迎撃することに決まった。
兵士たちの割り振りもフェイルが決めてくれたし。
着々と戦争への準備は整っている。
整ってはいるんだけど……
あと、一つ、何かが足りない。
勝てるビジョンがまだ見えない。
忘れてること、ないだろうか?
こういう時は書類などに小さなミスが残ってる時が多いんだ。
OL時代では、サビ残使って総当たりで書類を見ていたモノである。
それでも見落としてるのがあったりするからなぁ、あのクソ課長、なんで自分の机の鍵かけた棚の奥底に一枚だけ残してんだ、マジ殺す。って感じでもうそこまで来たらどうしようもない。
なるようになれーっと天の神様にお任せするのだ。
問題は、その神様が敵なんだよね、今回。
妹神様も異世界の神も基本スタンスは見守るだけみたいだし。
多少の加護とかあってもそこまで役に立つものではないからなぁ。
ルールを逸脱した相手に対するにはこちらもルールを逸脱するのが一番なんだけど、逸脱せずに戦うとなると、厳しい戦いになるのは確かだ。
せめてもうちょっとこっちに有利になるような何かをくれる神様とかいないかなぁ。
「そう思うのでしたらご自分が神になればよろしいのですよ」とか、教祖が居たら確実に言ってくるだろうけど、あいつ最初の一日ここにいたかと思ったらいつの間にかいなくなってたし。
ほんとあの老婆は意味不明過ぎて怖いわ。実はどっかの神がお忍びで来てた、とか言われても納得なんだよ。
「お嬢、もう日もないですし、挨拶回りとかはしました?」
「ちょっとガレフ、まるで戦争で死ぬみたいなこと言わないでくれる。私生きるからね、挨拶は後で行くんだよ」
「いや、別に死ぬとかじゃなくてですね。挨拶回り行くことで腹が決まるとかないです? 俺はこいつらのためにも勝つぞ、みたいな感じになるために回ってきましたよ。つっても知り合いがそのすぐ後に無表情で泥団子割りまくってましたけど」
それはその……ご愁傷様、です?