1797話、ロゼッタ、国家的パワーレベリング開始
ライオネル王エリオットの宣言より、ライオネル領各地で兵士たちによる受付が始まった。
受付日はその日から三日。
四日目よりレベリングをするため私が各領地を回って希望者を竜の谷ダンジョン特別区へと連れて行く。
ラビリルにお願いして新しい階層を一番上層に作って貰ったのだ。そちらの会場に行けば私が居なくともレベリングが出来るようになる。
即死じゃなければ霊薬で回復も出来るし、兵士たちだけで十分回せるようにしたのである。
パワーレベリング希望者には、必ず告げるようにした。
急激なレベルアップは激痛を伴うこと。あまりの痛みに体のあらゆる体液を放出してしまうこと。人としての尊厳を必ず失うが、確実に強くなる。本気で守りたいものがある人だけで構わないのだ、と。
きっと後悔することもあるし、私たちを恨むことになるかもしれない。それでも、貴方と貴方の大切な物を守れる力を、貴方に授ける、と。
受付に来て、説明に恐れをなして引き返す人もいる中で、先発済みは当日からでもいけます、とすぐにでもレベルアップしたい人たちが居たので彼らをささっと会場に連れて行くことにした。
大抵は領主とか、領地内に住む貴族などが多かった。
皆、兵士たちが強くなってるのを知っているのと、守りたいものがあるからだろう。
レベルアップするとヤバそうな領主もいるかもしれないけど、その辺りはレベリング後にすぐやらかすだろうから兵士たちに捕縛して貰うとして、うん、最初のレベリングじゃ2000程度が関の山なんだよー。
そういう貴族は一度レベルアップすれば満足するし、これ以上の痛みは嫌だ、と逃げ出すだろうからね。
レベルアップの危険さはしっかり伝えてあるのだからそれを覚悟して受けてほしいね。ほんとに。
「ロゼッタ嬢」
「あ、サラディン。私これから第一陣を送りに行くんだけど?」
「ああ、理解している。今国王陛下から各国との緊急国際会議を開きたいという話があってな。前にヴァルトラッセやネズミの国と遠隔通信出来ていただろう。あれを各国に配って自国の王城で通信できないかと」
「あー、では会議予定日の予定時間をお願いします。各国にその時間会議しますって伝えて配りますんで」
「すまないな。会議は明日、出来れば早朝に各国の意志を確認しておきたいと、敵国になる国とも話が出来ないかとおっしゃられているのだが」
「ああ、これの技術流出ですか? 今更ですし問題ないですよ。沢山あるし?」
「……そ、そうか?」
「それに二つ一組ですし、こっち側だけあっても無意味かなぁーと。そんでは、今日から一週間はお忙しいと思うので、早速向かいます」
「うむ。ところで……」
と、サラディンが私の背中を見る。
「ソレは、ずっとそうなのか?」
私の背中に抱き着いたままのアルセデアルはほんじつすぴすぴとお眠り中である。
マイペース過ぎる幼女型生物は、私の傍にいないといけないらしいので、こうして背負うくらいしかできないのだ。
「まぁ本人がいいならば何も言うまい。好きにするといい」
別に好きで背負ってるわけじゃないんだけどね?
「んでは、宰相殿もお仕事しっかりー」
兵士さんから準備が出来たとの話が来たので早速転移。
希望者を纏めて引き連れ竜の谷ダンジョンへと向かう。
上空から降りてくると、それだけで怯えるのが一般人、老若男女揃った彼らは、飛龍たちの飛び交う姿に戦々恐々。力自慢だとか言ってたおっさんもぶるぶるしている。
「い、一瞬でこんな……?」
「ど、ドラゴンだ。僕初めて見たっ」
「うぅ、やっぱりこなきゃよかったかもぉ」
早速後悔してるみたいだけど頑張って。これからの状況の方がもっと凄いんだから。
「お嬢、お疲れ様です!」
「あーい、第一陣、ライオネル本国組到着なんだよー。さぁ皆さん、そちらの兵士に従って移動してください。どうか、ご武運を」
「救国の聖女様に祈られたら、やるしかねぇや。はは、膝が震えてやがらぁ」
「うぅ、おしっこいきたい……」
「大丈夫だ坊主、どうせこの後全部漏らすからさっさとついてきな」
「兵士のおっちゃん、それ笑えない!?」
笑えないじゃなくてマジなんですよ。
女性陣もいるけど、本当に覚悟してる? 凄く後悔してる顔してない?
「あ、一応女性兵も来てますんで、女性陣はそちらに案内しますからね」
あ、なんかその一言で女性陣に安堵が広がった。
兵士君ナイス! そうかそうか、オッサンだらけのところで辱め受けるのが苦痛だったのか、ちょっと配慮が足りなかったんだよ。でも兵士たちの方でその辺ちゃんとしてくれていたようでよかったよかった。
ま、オムツもトイレもシャワーもたんまりあるから、しっかりレベリングしてくださいな。
さって、他の町の第一陣も連れてこなきゃ。