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174話・クラムサージュ、プリンおいひい

「どういうことですかっ!?」


「どう、といわれましても……」


 その日、私、クラムサージュは商業ギルドの受付嬢に突っかかっていた。

 いやね、ライオネル王国にようやくやって来てさ、さーようやく物語が始まるのね! やっるぞーっと気合を入れて商業ギルドに登録にやって来たのよ?


 ギルド員に成るには試験があるからって小学生がやるようなテスト受けさせられて、ようやくギルド会員証手に入れたからお店を選ぼうって既に見繕ってあった場所を探したら、無かったのよ!

 もしかしたら隠されているのかも、と思ってわざわざ場所を指定して聞いてみれば、まさかの既に売却済み。

 何処の馬鹿よ!? 錬金術の家買い取った馬鹿は!

 どうせ錬金術なんて使えないんだから私のモノに成る筈の家返しなさいよ!

 そこはライオネル王国の錬金術師が始まる為の開始地点なのよ!? なんで開始地点奪い取られてんの!?


 私ゲーム始められないじゃん!?

 折角エルフレッドさん狙いなのに、早く始めないと貴族に脅されてるエルフレッドさん助けられないじゃない!


 それに浮浪者にも恵みたいのよ。レコール君をゲットして貴族社会に戻してあげなきゃ。あの貴族服着て工房に尋ねて来てくれる時の笑顔がもう、きゅんです!

 でもカリバルは死んで良し! 錬金術で自動防御道具持ってないと刺し殺されるのよ、時間経過で。マジ最悪。ツンデレ系かと思ったらただのクズでしたとか、私の純情返せ。

 おっと、危ない危ない。果てなき妄想の海に沈んでしまう所だった。


「それで、どういうことですか?」


「ですから、そちらはプライダル商会が買い取りました、と先程から申し上げているじゃないですか。今はプライダル商店としてすでに営業開始してますよ」


「どこよ、その商会!?」


「昨日開店しましたので会いたければ直接向ってください。あ、アポ取るのはここじゃなくて店の方にお願いしますね。トラブルは基本ギルドは関与しませんので」


 余程の大商会かあるいはギルドにとって不利益のあることが有った場合はむしろ積極的に関わって来るらしい。

 くぅ、資本主義の飼い犬め。お役所仕事はこれだからっ。

 仕方ない、こうなったら、直接モノ言いしてやるしかない!


 商業ギルドを後にしてプライダル商店へと向う。

 うぅ、未だに慣れないなぁ、この道。馬糞が一杯で足の踏み場が……

 木靴がこれほどありがたいと思える日が来るなんて思わなかったよ。というか都会の方が道汚いってどういうことよ!?


 私のいた学園も結構だったけど村はむしろ砂利道で普通に歩けたし。

 なんで馬糞が無い所の方が少ないのよ!?

 これ絶対病気になる道でしょ!?

 いいなぁ貴族。私も馬車乗りたいっ。


 お、あったあった。記憶通りの場所にアトリエ……なん、っじゃこりゃぁ!?

 思わずがに股で驚いてしまうほどに想定外の光景がががががが。

 目の前にあったのはプライダル商店と書かれた看板が店の上部に設置されたかなり大きな商店だった。


 しかも、しかも列作ってるじゃん!? 大盛況だよ!? なんでこの世界であんな綺麗な整列が見られちゃうの!?

 っていうか、商店の後ろに見えるの、アレって宿舎とか何かだよね? これも店の一部なの!? あっちの大きな建物は何!? 凄い豪勢な店構えじゃない!?


 も、もしかして、ここって大商店? あれ? でも新規開店って書いてあるわよね?

 どういうこと?

 あ、と、とにかく店に入らないと。あ、でもあんなに並んでる訳だしあの列無視して突撃はさすがに……待つ、の? 一時間待ちは確定よアレ?

 え、ええい、行くしかないッ!


 行列の最後尾に向かうと、プレートを持った女の子が立っていた。

 なんか日本に居るような錯覚すら感じる行列だなぁ。

 ま、まぁいいや。とにかく並んでお店に入って店長さんにモノ申す!


 並んでから気付いたんだけど、冒険者が見回りおこなってる。

 しかも三パーティー位が入れ替わり立ち替わり見回ってるので殆ど誰も見てない時間っていうのがなかった。

 御蔭で抜かそうとしたおっさんも危機を察知して後ろから出るに出られず。

 行列でトラブルが起きることも無く店内へ。


 え? あれ? 嘘?

 カウンターにいるのって……エルフレッドさん!?


「こんにちわお姉さん。プライダル商店にようこそ。他のお店とは少し違いますので俺が説明させていただきます、あの、お姉さん?」


 あ、あわわわ、なんで? なんでレコール君がここに!?

 しかも薄汚れてないっ! 執事服カッコイイ。ショタっ子最高。じゅる……おっと危ない。

 落ち付け。落ち付け私。


「ご、御免なさい。他のお店と違い過ぎて、ちょっと唖然としてたの」


「あはは。入ってきたお客さん結構そういう人多いですよ。では簡単に説明します。店内に置いてあるモノは全て偽物。見本品になります。見本品の近くに木で出来た板があります。こちらですね。これをカウンターに持って行って貰うと、店員が店内奥に用意してます商品を持ってきますので、持って来た木札と買いたいモノがちゃんとあってるか確認して貰って、後はカウンターでお金を支払っていただければお買い上げいただけます。それ以外は他のお店とおんなじです。何かご質問はありますか?」


 えっと、あっと、その……

 想定外の事が起こり過ぎてパニック状態の私は、良く分からないまま受け答えして、店から出ていた。

 我に帰った時には、手に持った竹筒に入っていたプリンが一つ。

 何時の間に買ったんだろう?

 ん……プリンおいひい。


 明日、明日こそは、店長さんにモノ申す。ってか絶対私と同じ転生者か何かでしょッ!

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