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171話・ライリー、俺達って必要なくね?

 その日、プライダル商店が開店するということで、冒険者に声が掛かった。

 ロゼッタ嬢ちゃんの知り合いの冒険者達に護衛をお願いするってことで俺たちにも声が掛かったのだ。

 最近冒険者ギルドに顔出さなかったからどうしたんだろうって皆心配してたんだが、商業始めてたんだなぁ。


 俺、グレンデル、リリン、ナパツィタの四人が開店前の商店に向かうと、店の前でぼーっとしていたキーリが俺らを見付けてよっすと手をあげる。


「お前達で最後だ。皆既に中に居るぞ」


「そうだったのか、すまない。グレンデルのアレが長くてな」


「いやー、すまんすまん。御蔭で腹もすっきりだぜ」


 がははと笑うグレンデル。リリンとナパツィタがもぅっと恥ずかしそうに息を吐く。

 キーリはそんなグレンデルの照れ隠しには反応すらせず、扉を開いて中へと入ってしまう。

 俺達もこれ以上遅れる訳には、と玄関を潜れば、店内にたむろう無数の冒険者。

 入ってきた俺たちにギロリと視線を向ける。


「はーい、皆さん威嚇しない。そりゃ一時間も遅れてやってきた下位冒険者にイラつきを覚えるのも仕方ありませんが、時間指定自体朝のうちとしか指定してませんでしたのでそこにイラつきを覚えるのは駄目ですわ。そも、上位冒険者として広い心の眼で見てくださいませ」


 ロゼッタ嬢の言葉で理解する。空気が悪い、なんてもんじゃねぇ。

 一番若造というかランクの低い俺達が一番最後に来ちまったらしい。

 俺は思わずグレンデルを睨む、しかし、グレンデルは分かっていないようですんませんっと頭を掻きながら皆に謝っていた。

 駄目だって、そんな軽い陳謝じゃ余計怒りを煽るから。


「さて、今回集まっていただいたのは、今回お店の開業に当って、皆さんに警護を担当していただきたいからですわ?」


「ああ、それは聞いてるが、嬢ちゃんだけでも過剰戦力じゃねーか? 俺らが来る意味あったか?」


「折角なので最初の今日だけは皆さん全員に頼んでおこうかなと、報償金も出しますし、なんなら気に入ったモノの売買について優先権を差し上げますわよ?」


「お、そりゃありがてーな。今日欲しいのチョイスして明日以降に優先してくれんのか」


「値段は安くなる?」


「んー、そうですね。2割引でいかがです?」


 乗った! ととても楽しげに告げる男達。

 余程嬢ちゃんと仲が良いらしい。それにしても、S級冒険者の嬢ちゃん相手に慣れ慣れしすぎないか?


「あ、あのライリーさん、私気付いたんですけど……あちらの方、フライムブレスのガリオン様では?」


「え? そういえば……え? じゃあA級冒険者!?」


「あん? ああ、そういや自己紹介してなかったな。俺らはフライムブレスだ。そっちのは未だ無名、あいつらは銀狼旅団だ」


 銀狼旅団!? 未だ無名ってあの!?


「ちょ、待っ、俺ら以外Aランク冒険者パーティー!?」


 グレンデルの言葉に意地の悪そうな笑みを浮かべてそうだぜ。と頷くガリオンさん。

 嘘……だろ。俺らより高ランクとは聞いてたけど全員有名どころのライオネル王国最高戦力じゃないか!?


「まー、そう緊張すんな。どんなにイキったところで俺らはただの冒険者だ。今回はお嬢の店の警護。その為に協力するパーティー。だろ?」


 そりゃあそうだけども。

 それからしばらく、俺たちは気が気じゃなくて、あれよあれよと配置が決まり、我に返った時には既に警護が始まっており、客がまばらに店に集まり始めていた。

 ロゼッタ嬢はせわしなく店と店外を行ったり来たり。凄いな。本当に店、切り盛りし始めたのか。


 開店当初こそ、人はまばらだったものの、置いてある商品が目新しいということもあり、宣伝もしていないのに人々の噂話で興味を引かれてやってきた市民が列を作りだす。

 おいおい、大店でもこんな行列滅多に見ないぞ?


 犯罪者も紛れ込んでいるようだが、さすがにA級冒険者が見回っているのを見れば悪事を働こうとも思わないらしく、店の内外を観察して、小物を買って去って行く。

 今の奴、無数の店から要注意人物として警戒されてる奴じゃないか。たまに警護任務受けた時に必ずあいつには気をつけろよって言われる奴だ。

 そんな奴が小首傾げながら買ったモノを見て立ち去る。


 本当にこんなモノ買って良かったんだろうか? そんな顔をしている。

 おそらく見学しようと入ったは良いが、流れるままに商品を買わされてしまったんだろう。

 お、あっちの奴は良く訳の分からないこと叫んで切れるおばさんだ。あの人も他店で有名で要注意人物に指定されてる。

 今回もいろいろ言おうと思ったんだろう。けど……入って行ってしばらく、外に出て来たおばさんは消化不良といった様子で外に出て来た。どうやら怒る場所を見付けられなかったようだ。

 なかなか接客も完璧なのかな?


 大した混乱が起きることも無く、むしろ客足だけが時間が経つごとに増えて行く。

 なんか、凄い勢いで長蛇の列が出来てるんだが……普通に店員の子供たちだけで列の管理できてんな。

 不満が出ることも無く、順番抜かししようとしたおっさんもA級冒険者達がギロリと睨んだことで元の場所に戻る。


「なぁグレンデル」


「ああ……」


「俺ら、必要か?」


「はは、どーだろうな?」


 店員の子供たちはある程度のトラブルは自分たちで処理しているし、A級冒険者パーティーが三つ動いてんだぞ? 俺ら、完全に突っ立ってるだけじゃん。どーすればいいんだよこれ?

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