16話・ロゼッタ、そして1週間が経った!
と、いう訳で、一週間経ちました。
出来てるかな? 出っ来るっかなぁ。ワクワクさんが止まらないっ。
嬉しみ楽しみが半端無いな。
今回、最初に向かうのは平民街の鍛冶屋。服屋はもういいんだよ。あの服屋に行くと服屋さんが迷惑そうにしちゃうもの。私を見るだけでぎゅっと痩せちゃうんだよっ。
塩撒かれたくないのでもう行かないっ。
きっと二度と行かないの。
鍛冶屋さんにやって来た。
入口の扉を開いて、ひょこっと顔を出してみる。
ちゃんと入口の壁を両手で掴んでひょっこりだ。はい、ひょっこりはん♪
「ん? おお、貴族の嬢ちゃんか」
「進み具合はどんな感じですか、オジサマ?」
「ふっ。ありゃすげぇな。何度か打ってみたが普通の直刃じゃ作れねぇ」
おや、おじさんすっごく上機嫌だよ。
これはもしかして、もしかしちゃうの?
「鞘ってのも作ってみたんだ。実際見てくんな」
おじさんがすっごく嬉しそうに取り出しカウンターに置くのは、予想通りにアレである。
私が夢にまで見たアレである。
異世界で振るえちゃうアレである。
そう、日本人なら、日本刀!
日本人なら、日本刀ッ!!
大事なことだから二度言っちゃうの。これは死語じゃないんだよ。
お約束は不死身なんだよ。何度死んでも蘇るんだよ。ゾンビなの?
お、おお、鞘が本格的だよ。ちょっと変わった素材だけど、逆に光沢のある赤い金属で出来てて綺麗なんだよ。装飾はないけど武骨さが味のある仕上がりなんだよ!
しかも脇差も作ってあるんだよ。
素敵。おじさん素敵。抱いてとは言わないけど素敵なんだよ!
鞘から日本刀を引き抜く。
おお、おおぉ!?
ぬ、抜けない……
私の身体が幼すぎて抜けない。
刀が途中までしか抜けないよ?
刀身は波紋が浮いててすっごく綺麗なんだよ。
でも抜けないんだよ?
あれ? これってもしかして……使えない?
「あー、やっぱり嬢ちゃんにゃ無理だったか」
く、馬鹿な!?
持ち手の柄部分も凄く綺麗な作りで最高の一品なのに、使えない、だと!?
馬鹿な、この幼い体のせいで使えないというのか!?
その場に四つん這いで絶望する。
ああ、今は幼い自分が妬ましいっ。
早く大人になりたぁい。でも40歳にはなりたくなぁいっ。
二次性徴期、そうよ、まだ8歳なのだから二次性徴期が来れば四肢が伸びるわ。その時こそ、この刀の真の使い手に成れるのよ。
「ほれ、嬢ちゃん。こっちの脇差だったか、こいつなら問題ないだろう」
長さ的には丁度良いくらいだな。
今の私には予備の脇差が一番しっくり来るようだ。こっちは子供用の長さにしたんだよ。
一先ず鞘から引き抜く。
普通の刀よりもさらに短い脇差。
本来は刀が折れた時の予備として脇に差しているもので、滅多に抜くことは無いのだが、って本当にそんな理由であってたっけ? たしか日本の戦争中はよく刀が折れるって聞いたんだよ。
まぁいいや。今の私に相応しい刀は、これなのである。
「嬢ちゃん、こっちは最初に作った失敗作だ。こいつでちょっと試し切りしてくんねぇか。どういう風に切るのかわかりゃもっと良いのが作れるんだ」
言われたとおりに袈裟斬してみる。
うん、いい切れ味だ。今宵の虎鉄は良く切れる。
虎鉄じゃないね。銘柄考えなきゃ。あ、これは失敗作だっけ?
まぁ、もっと良い物を作りたいだなんて、このおじさんとは今後とも深い付き合いになりそうだわ。
私が欲しい武器をどんどん造ってくれそう。
ああ、楽しみだわ。いろいろと変わった武器がありますのよ。ふふ、うふふ。
「お嬢様、その顔はダメです」
「はっ!? え、と、」
「がはは。嬢ちゃんすっげぇ顔すんなぁ。思わず引いちまったぜ」
え? 親父さんまで引くような顔だったの? それ女の子がしていい顔なの? 今、私世界一恥ずかしい顔してたんじゃないの?
「し、失礼しました。い、一応こちらの製法はお譲りいたします」
「本当にいいのか? 嬉しいけどよぉ?」
「構いません。良い物が出来たなら私が買い取りますわ。今はお金ありませんけど」
「はっ。そう言ってくれるなら、ありがたく打たせて貰うぜ。つっても物珍しさくらいでしか売れんだろうし、手間がかかってるから高額になるけどな。最悪嬢ちゃん専用かもしれんな」
専用装備、それは有りですわね。
コルセットの代わりにスカートの腰部分にベルトを巻いて、ここに脇差を差し込む。
お金はおじさんの言い値をと思ったのだが、意外と安い。楽しい作業だったから割引なんだと。
嬉しかったから少しだけ色付けておいた。今後の投資ってことで無理矢理渡したよ。
「お嬢様、こちらは?」
「それも私のモノですもの、家に飾っておきます。いつか使えるようになるまではお飾りですわ」
マツヤニなどの整備用品をついでに買って、刀はリオネッタに持たせて撤収する。
刀は大人になってから、ですわ。それまでは部屋に飾ってニヤニヤするだけにしておきますわ。
さて、次は衣装かしらね。




