1618話、リオネル、意外と乗り気な市民たち
SIDE:リオネル
本日も僕は書類整理だ。
リンドブルムが補助についてくれているが、基本は僕が全部見ることになっている。
そこまで枚数はないから一時間もいらないんだけどね。
そろそろ現状把握が全て追いつくし、一気に楽になると思われる。
「それにしても……」
「正直、想定外だ。リオネル侯爵代理、これ、どうするつもりだ?」
ロゼッタの方から上がって来た報告書。予想以上に私設騎士団に入りたい住民が多いらしく、さらに普段仕事している人まで何とか入れないかと面接に来ているそうだ。
なので、ロゼッタからは夜間部隊の設立許可申請書が来ている。
普通の私設騎士団の他に仕事終わりに少し訓練して兵士と両立を目指す部隊だとか。
ソレ必要か? とリンドブルムは言うんだけど。これまでの兵士たちを見てきている分、僕にはわかる。
たとえ仕事をしてたって、守りたい誰かの為に戦う術が身に着くのなら、やりたいよね。
ライオネル王都の方では仕事を辞めてまで兵士にはなれない、そういう理由で兵士になるのを断念している市民も一定数いるらしい。
つまり、需要があるのだ。守れる力が欲しいと願う人がいるのだ。
なら、ロゼッタは動くだろう。
僕はその補助を少しするだけだ。
「報告してくれるなら却下することじゃないね。許可しよう」
「嘘、だろ? 無駄に金がかかるだけだぞ? しかも夜間部隊は昼間の兵の半分の時間しか訓練しないんだぞ。そんなの必要か?」
「リンドブルム。為政者目線だけじゃ市民の願いは組み上げきれないよ。仕事をしないと家族を食わせられない、ご近所のためにもやめられない。それでも、力を付けたい、そんな人もいるんだ。それに、ロゼが私財を使って設立するから経営面では僕らが何かする必要はないんだ」
「いや、私財って、それベルングシュタット領のでしょう?」
「違うよリンドブルム。ロゼ個人の私財だよ。国がいくらでも買えるくらい持ってるからね。私設団一つ造るくらい造作もないよ」
「そういえばロゼッタ嬢の資金はかなりあると前に聞いた気はするが……」
「それよりもこっちが問題だ。把握はしたかい?」
僕がぴらりと見せつける羊皮紙に、リンドブルムは眉間にしわを寄せる。
「ロゼ嬢の犯罪者矯正計画、ですか」
「うん。詳細見てみたけど。実質コレ、新しい闇組織の設立計画だよね?」
「アルケーニスに対抗できるくらいの規模になる予定、ですか」
「行き場のない屑系人物の就職施設の作成、および裏稼業請負業務、実質闇組織と変わらないんだよね。ロゼ、大丈夫かな?」
「大丈夫でしょう、一応。ほら、暗殺や拉致ではなく暗殺阻止や拉致阻止の仕事などを専門家により行う、らしいですよ」
蛇の道は蛇。つまりロゼが行おうとしているのは犯罪者たちによる犯罪抑止計画だ。
彼ら自身が犯罪を犯す方法を知っているのでどういった場所で自分ならどうやるか、それをもとにして起こるだろう犯罪の未然阻止が設立目的になるらしい。
うまく機能できればいいけれど、相手はもともと犯罪者。
実力だけ上げてささっといなくなる可能性だってなくはない。
それをロゼが何とかしようってことらしいけど。
ロゼはロゼッタと違って悪役令嬢気質だからなぁ。
悪くはない、悪くはないんだよ。でもなんというか、そのまま引っ張られて悪逆しないか不安なんだよね。
「ふぅ。なんというか、婚約者二人がはちゃめちゃだと心労が出てくるなぁ」
本当はもっと二人に寄り添って楽しく仕事したかったんだけどなぁ。
「貴族なんてそんなもんでしょう。やり過ぎているなら正座させて注意するくらいがちょうどいいんじゃないですかあの二人は」
「んー。でも僕彼女たちを怒ったりとかするのは無理かなぁ。よし、そういうのはリンドブルムに丸投げしよう。その方が上手くいきそうだし」
「おい、止めろ!? っと失礼、思わず地が出てしまいました。あんな破天荒な女二人も受け持てませんよ。俺が胃に穴開けて血反吐はいてる未来しか想像できません」
そんなにダメか。
あの二人を止められる人物がいればいいんだけど……
とりあえず後で知り合い集めて相談してみるか。
ロゼたちが苦手な人材なんているとは思え……あ、居るな。
正直諸刃の剣になるけれど、最悪の場合はデリーラさんにお説教して貰うか。
彼女にだけはなぜか苦手意識持ってるからなぁロゼッタ。
まぁ、扱い間違えるとデリーラさんの方が暴走するんだけど。
「失礼、領主、来た!」
「我、参上」
「王から、派遣、永住」
お、ようやく来たか。
コボルト文官が三名、ようやくライオネルからやって来た。
彼らはベルングシュタット領内の文官として働いてもらう予定だ。
一応僕がいなくても彼らがいれば領内の全てが回るようにはするつもりなんだけど、なんか普通に一人居れば回せそうな実力らしいし、三人は多かったかな?




