160話・ロゼッタ、寮長さんと副寮長さん1
ステイツさんが何とも言えない顔で退出していった。
応接間に残った二人に詳細を詰めて行く。
一応こっちは雇ってもいいとは言ったけど。ちゃんと自分でも面接しておきたいんだよ。
簡単な質問と確認を終えると、二人に今日の時間は大丈夫か尋ね。とりあえず寮内の案内をすることにした。
お二人様ご案内~なんだよ。
二人とも馬車に乗るって言ったら凄い恐縮していらっしゃった。
寮についたら結界をいったん解除して二人を登録した結界を張り直す。
一応ギルドの紹介だから信頼しとくけど、裏切りだけはやめてよね?
特に、従業員を蔑んだりとかはやめてね。
「ではご案内いたしますわ」
「ああ。いや、凄いな……」
「あうぅ、こ、この寮、大きすぎませんか?」
寮を見て気遅れしている二人。
でもレコール君たちは寮については何も言わなかったんだよ?
むしろまだ完成してない店の方に目を向けて、できてねーじゃんって言われたし。
二人とともに寮へと入る。
玄関を潜り、靴を脱ぐ事を告げると、驚かれた。
この国だと靴とかは基本履いたままだもんね。
貴族だって自分の部屋まで靴のままだったりするし。
私? 前世知識目覚めてから靴は脱いでるよ。
部屋入ってすぐのところで靴を置いてます。
その御蔭かメイドさんやセバス、ボーエン先生なども普通に靴脱いでくれるようになったんだよ。
御蔭で掃除が楽だってメイドさん達にお礼言われてます。
「靴、脱いじゃっていいんですか? ここ、足汚れません?」
「綺麗にしてたら問題無いんだよ。でも不安だろうからこのスリッパを履いてくださいな」
スリッパは特注品だ。靴屋にお願いして作って貰った。
これも商業ギルドの紹介された靴屋に特別依頼したから結構掛かったんだよ。
寮が出来る少し前に出来たからとりあえず20足。来客用に10足置いてあるからまだ余裕があるんだよ。まぁ私達が使う分があるから実際に来客用に使えるのは5足くらいだけど。
部屋について紹介しながらまずは風呂場を見せる。
自由に入れると知って目を輝かすチェルシーちゃん。お母さんにも味わわせてあげたいとか呟いてたけど、さすがに部外者はまだ入れられないんだよ。
そしてルインクさんは感嘆を漏らしながらもつぶさに風呂場を観察。
「ここの掃除はどうなっている?」
「木造船に使ってるらしいデッキブラシを買っといたからあそこにあるの使っていいんだよ。あとは石鹸を削ってお湯に入れた液状洗剤で床磨き。終わったら風呂の中のお湯を掛けて流す、かな? 風呂の中は週一位でお湯抜いて同じように掃除、を予定してるんだよ。もっと良い方法があるならぜひ」
「そうか。少し考えてみよう。ここまで大きいと掃除のしがいもあるな。従業員たちは好きに使っていいんだな?」
「まぁ、掃除の指示とかなら別に問題は無いけど、皆が指示を聞いてくれるかどうかはルインクさん次第ですわね」
「そりゃ腕がなるな。なんだかここだけで仕事が楽しく成りそうな予感がして来た」
実は結構掃除好きなんだろうか?
二人が満足するまで風呂を見学してもらい、ボイラーの動かし方を軽く教えて調理場へと向かう。
一応、ここについては使用法が書かれているので見ながら操作すれば問題は無いんだよ。
さて、ここが二人にとっては一番の仕事場である。
調理場を見るなり、ルインクさんが戸棚を一つ一つ開いては確認を始める。
チェルシーはほへぇーっと洗い場を見て、コンロに視線を向ける。
「あ。これって魔石コンロ? すっごい高いって聞きますよ?」
「美味しい料理が作られるなら妥協は不要ですわ」
「はは、こりゃいい調理場だ。臭いについても上に吸い上げるようになってやがる。ニンニク料理とか焼き魚はかなり臭いが充満するが、遠慮なく作れそうだな」
「うわぁ、フライパンにお鍋、こっちは土鍋? はわわわわ、こ、これって個人用の焼き肉プレート!? お店でたまにみる奴だ」
「食材はここか? うお!? 氷室か? いや、魔石による冷蔵空間か。こりゃすげぇ」
「上の棚は冷凍食品が入ってますよ! すごい。お肉が凍ってる!」
「下の棚は? 野菜用か。こっちは冷蔵空間より暖かいな。これは区切る意味があるのかい?」
「野菜は冷やし過ぎるのは駄目ですわよ? 冷害被害で野菜が駄目になるとか聞いたことありません? 冷蔵スペースより少し温度が高いけれど、野菜にとってはベストな温度を保っておりますのよ」
「はー、こりゃ料理も手が抜けねぇな」
すっごく楽しそうにワクワクした目をしているルインクさん。
まるでカブトムシ見付けた少年のような輝いた目で見て来るからドキッとしてしまう。
うぅ、なんて女殺しなの。そしてチェルシーはなぜソレを見て靡かない!? ええいおこちゃまめ!