14話・ロゼッタ、お風呂の秘密
「……さま。お嬢様っ」
「んー、あと五分」
「五分って何ですか!? ああ、良かった。反応が無いから焦りましたよ」
「……はれ? リオネッタ?」
「お嬢様、夕食のお時間です」
ふーん夕食……夕食!? 早くね!?
え? さっきお昼食べたよね? まさかの一寝入りで夕方ですか、カラスさん鳴いてますか? カラスが鳴くから帰りますか?
お腹はまぁ、それなりに空いてるからいいか。夕食食べよ。
ベッドから起き上がる。
なんだこの倦怠感。すっごく身体がだるい。
でも動ける。あ、MPがまだ殆どレッドバーだ。バー出したままじゃん、よく復活で来たな自分。というか、魔力尽きたらこの能力霧散するんじゃないのか。気を付けよう。
この能力発動してたら徐々に減ってくみたいだし、とりあえず今は魔力回復のためにも解除だな。
魔力の回復力が低いんだよ。
これはもう魔力スティール能力に目覚めないとなんだよ。明日までに回復してくれるかな?
それと多分だけどMP少ないせいで倦怠感が生まれているんだよ。精神力が足りないんだよ。スッポン持ってこーい。あ、それで補充されるのは精力だ。精神力じゃぁないんだよ。残念。お前が精力滾っても一人身なんじゃ斬りぃ。ぐはっ!? 自分に自分で大ダメージなんだよ!?
夕食を食べた後はお風呂までゆったり時間。
お風呂沸かすのってどうやってんだろ。
ここの風呂。今日の朝使った時は湯船はあるけどお湯を湯船に入れる場所がなかったんだよね。
どうやってお湯入れてるんだろうと思ったので、一緒に来たメイドさん、基本私の身体を洗う係の人に聞いてみたところ、魔法で水を張って、火魔法で熱しつつ、頃合いを見計らって風呂の温度を調節しているようだ。
なぜ最初から熱湯を出さないのか。
ちょっと魔法で熱湯を出してみたところ、普通に出せた。多分イメージの問題だろう。あるいは魔法で出すにはいろいろと知っとかないといけないのかな。水がどうやってお湯になるのかをしっかりとした知識と認識で補完しないと魔法として出ないのかもしれない。
現代知識の御蔭で私は出せるけどね。ほーれ熱湯だよー。
風呂にやって来た私は全裸で湯船、というか露天風呂みたいにでっかい風呂の前で指鉄砲作ってお湯をぴゅーっと湯船に出していた。
温度的には38度くらいの微温湯である。
一緒に来ていたメイドさんが手品でも見るみたいに驚いていらっしゃった。
いや、あんたも出来るって。
しかし、石鹸が無いのはだめだなぁ。基本香油だもん。
クリーン魔法とかもないみたいだし。
あれば魔法一つ唱えるだけで良いんだけどクリーンって清潔じゃん。どこまでが清潔なのか分からないから魔法として成立しないみたい。
汚れを落とすだけだと微生物付いたままになるし、ダニやらシラミやらも消し飛ばすのだと生物ごと浄化ってことで髪の毛とかもどばっと浄化しかねないし。なかなか難しいな。
仕方ないので石鹸作って身体洗うしかなさそうだ。
で、石鹸ってどうやって作るんだっけ。えーっと昔作った覚えはあるんだよ。うろ覚えだから素材しか覚えてないけど。こっちでその素材があるかは謎なんだよ。作り方どうだったっけ?
牛乳石鹸が良いんだよ、どう良いのかは分からないんだよ。ボディーソープが恋しいんだよ。
リンスだけなら作れるんだけどねー。リンスというか油でエンゼルヘアー。
なんか良さそうなの使って作っちゃおう。荒目の布で絞れば良いんだよ。簡単だよね。
あれ? 香油と何が違うんだろう? 髪がアブラギッシュなんだよ。これはちょっと早急に何とかしたい。
髪を綺麗にするのは女の宿命なのだよ。
ちなみに下水管理だけはちゃんとしてたんだよ。
風呂の中にある栓を抜いたらお湯が全部下水に流れて川に合流、そのまま海に放流なんだよ。
お魚さんも一緒に海に行くんだよ。下流域のお魚さんは汚いんだよ。ソレを漁師が食べてるんだよ。
ひぃぃ、この家に届く魚も危険なのかなっ?
お風呂が広いからついつい泳ぎたくなる。
私が入っている間、メイドさんは立ったまま。
一緒に入ったりはせず身体を洗うためだけに待ってるんだよ。
なんかごめんね? でも貴族ってこういうものなの。我儘なんだよ。でも悪役令嬢じゃないよ。
そーれクロール。
次に平泳ぎ。
あえてバタフライ。お嬢様はしたないですって怒られた。
仕方なく背泳ぎ。
潜って潜水。からのドルフィンキック。
水泳は小学校の時に頑張ったんだよ。
最初は泳げなかったけど悪戯っ子の男の子がぷぷー泳げないとかダッセー。とか言って来たからめちゃくちゃ頑張った。御蔭で学年一位になって水泳部からお声が掛かることになったんだよ。
水泳目指してないからお断り。男の子は泳げないままだったから次第に声を掛けて来なくなったんだよ。ざまぁ? でも好きな子に意地悪しちゃうお年頃だったんだよ、もしかして私が自分にざまぁされちゃってた!?
お風呂でメイドさんに丸洗い。
いけないところも洗われたんだよ。足の裏はダメです。絶対笑う。
あれはダメなのいけないの。メイドさんここぞとばかりに足掴んで必死に洗って来るの、親の仇のような容赦の無さなんだよっ。酷いんだよ。令嬢イジメなんだよ、メイドさんにイジメられるか弱い令嬢さんなんだよ。深窓の令嬢? ロゼッタには似合いません。