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147話・ロゼッタ、悪役令嬢式従業員育成法1

「では、本日より皆さんは我がベルングシュタット家に雇われた従業員なんだよ!」


 寮の二階、にある部屋、というか教室として使うために空き部屋に机を設置してどっかの木造教室みたいに似せた……もう教室って呼んでもいいよね?

 ここに全員を詰め込み、教壇に立った私は教壇の机にばーんと両手を付いて、皆に元気よく告げる。

 ぽかぽか気分だったメイド服と執事服の面々は、その言葉でぽかぽか気分を吹き飛ばされ、困惑したような、少し怯えたような顔で私に注目する。


「ねーちゃん。従業員とかいうのはまぁ、店の作業だろ? 俺ら何も知らないんだけどどーすんの?」


「店が出来るまではここで基礎教育をします。授業時間は私がこの寮に来てからになるけど、基本朝私が来た時。それから昼に一旦戻らなきゃだから昼過ぎにもう一度来てから。夕方以降はこの寮内に限って自由行動を許します」


「この寮に限って? 外には出るなってこと?」


「正直、今の皆は試用期間です。今回規則としていくつか提示しておいたのでこれを守り切れるかどうか、それによっては御退去頂くんだよ。私の庇護下に入る以上、街に出て店の物をかっぱらったり、人の財布盗んだりするのは禁止。あと人買いとか危険な人が外歩いてるから下手に出て行方不明になられても責任取れないんだよ。なので、今の生活に慣れるまではしばらく外出禁止なのだよ。それが嫌って人は元の場所に帰っていいんだよ。そも、一度寮から出た瞬間もう二度とここには戻れない結界が張ってあるから」


 一度だけ、出ることは出来る。

 でも、ソレを行えば二度と戻れない。

 その言葉に、皆固唾を飲み込み怯えた顔をした。

 いや、そんな怯えなくても良いんだよ?


「つまり、もう二度とここから出られないって訳じゃなくて、しばらく、ここの生活に慣れるまでは寮? から出ない生活を送ればいいってことか?」


 さっすがリーダー。

 なかなか話が分かるね。

 私が言った事を仲間に分かりやすく自分の言葉で伝えてくれるリーダーの少年に、彼がこのチームのリーダーであってくれて良かったと思う私でした。

 基本皆に伝えたいことがあったら彼を頼ろうっと。


「さて、まず初日である今日は何をこうしろって言ったところで戸惑いと困惑ばっかでしょ。本日は寮を案内することと、食事などの基本的な説明を行おうと思います」


「皆、今日は説明だけらしいぞ。分からなかったら後で俺に聞いてくれ」


 なんてこった。私の言葉よりリーダー君の言葉の方が普通に聞いている!?

 通訳なのかな? かな?

 ええい、まぁいい、とにかく進めるぞ。


「まずは説明の前に皆の名前を教えてくれるかな? 呼び名が分からないと不便なんだよ」


「ああ、そういや名乗ってなかったな。でもねーちゃん。名乗れってならそっちからだろ」


 おお、きっちりしてるぞ!? 本当にこいつは浮浪者なのか!?


「ロゼッタよ。こっちでなんか食べてるのは私の義妹のキーリ」


「よろしゅうなぁ」


「あ、あの……姉妹?」


「キーリ魔族じゃん」


「義理の妹と書いて義妹だから問題ないんだよ。可愛いでしょ?」


「ウチ可愛ええ?」


 きゃるんっと自分を指差すキーリ。邪神感が滲みでてるから可愛さより正気度が削れる笑顔な気がする。


「妹じゃないけど、セーリアとマーシャの関係みたいなもんか。俺はこいつ等のリーダーやってる。レコールだ。一応数年前までは貴族だったからアンタが悪徳貴族かどうかはすぐわかった。だから付いて来たんだ」


 おおぅ!? 没落貴族の御子息だった!?


「数年前に没落? はて、そんな家あったかな?」


「ああ、ここじゃねーぞ。俺が貴族やってたのは隣の国だ。親父が不正に手を出しててさ、バレたせいで取り潰し。本来は俺も打ち首だったんだけど、母さんに逃されたんだ」


 いきなり背景が重かった!?

 え? 復讐考えたりしちゃってる?


「はぁ? ないない。なんであんなクソ親父のために復讐なんかしねぇといけねぇんだよ。俺はこいつ等を死なせないようにするので精いっぱいだっつの」


「ホント、しっかりしてるねぇ」


「貴族の癖に店持とうっていうアンタ程じゃないけどな。というか、俺より幼い癖にどんな人生送ってんだよ!?」


 今更だよね?


「ああ。悪い、話がソレたな。おい、俺の後ろから順に名前言ってけ」


「あ、うん。えっとセーリアです」


 控えめなクリーム色の髪の少女。ゆるふわウェーブの肩に掛かる位の髪はちょっと気になる。

 そんな毛の色、ゲームでも滅多に見ないんだよ!?

 太い眉に不安そうな瞳。全体的に栄養失調で細い身体と相まって守ってあげたくなる少女である。

 ちなみに私よりは年上なんだよ。多分10歳くらいかな?


「あ、えっと、11です。少し前に誕生日だったはずなので。私、冬の日だったのは覚えてます」


 じ、自分の誕生日すら覚えられてないくらい切羽詰まった日々だったの!?

 うぅ、ストリートチルドレンの過去が重過ぎてつらたん。

 あ、つらたんってこういう時に使っていいんだっけ? 若者言葉ってたまに間違った使い方しちゃうからなぁ。マジ卍とかイマイチ何時使えばいいか分かんないし。マジ卍だよ。  

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