146話・ロゼッタ、悪役らしい従業員確保法3
私の勧誘により、浮浪者の少年少女たちが相談を始めた。
ここに残るか私の元に来るか。
半信半疑だろうから直ぐに付いてくる面子はかなり少ないと思われる。
それでも皆の話し合いが一段落付くまでしばし、突っ立ったまま待っておく。
キーリが暇だったらしく、外に出て触手で遊んでたけど、まぁ放置で。
浮浪者っぽい男が数人空舞ってたけど、まぁ放置で。
キーリ、汚いからそいつらの服剥いだりしないように。
「ねーちゃん」
「あ、話し合い終わった?」
「正直なとこ、良い話過ぎて怪しいとしか思えねぇ」
「ふむふむ」
「だが、本当だった場合こいつ等がこんな生活送らなくて済むっていうのは手放しづらい。けど、俺らにはアンタが人買いの一味かどうかすら分からないんだ」
まー、そうだよね。
確かに怪しい話だ。
本来であれば、というか、私がこんな話貰ったら怪し過ぎて絶対断る。
それで路頭に迷うとしても、多分後悔はしないんだよ。
あ、でもアイドルの路上スカウトとかってこういうのが多かったよね。
やっぱり怪しくても良い話ってのには喰い付きたくなるものなんだよ。
そりゃ詐欺も横行するってもんだよね。気を付けよ。
「私としてはどっちでも良いんだよ。来るか来ないかは君たちの自由だ。さぁ、結論や如何に?」
「行くよ、アンタが信頼出来るか分からないでも、このままここで死んでいくよりは、可能性を掴みたい。裏切って、くれんなよ?」
「ふふ、交渉成立ね。それじゃあ、来てくれる子は付いて来て。キーリ、皆に危険が及ばないよう殿任せるんだよ」
「はいなぁ」
私を先頭に少年少女が連なって歩く。
興味を覚えてふらふら近づいて来た浮浪者は邪神様の触手に捕らえられて投げ飛ばされる。
一応死なないようにはさせてるけど、不用意に近づいてくる方が悪いんだよ。
子供たちを光ある場所へ。貧民街から市民街へと連れ出して行く。
皆、なぜか貧民街から出る瞬間、眩しそうに目を細めるんだよ。
そんな眩しいかなここ?
お店の場所へと辿りつくと、その建てかけの外観を見て唖然と見上げる子供たち。
ふっ、まだ完成には程遠いんだよ。
一週間以上はかかるだろうね。でもそのくらいあった方がいいんだよ。
「なんだよ、まだ出来てねーじゃん」
「お店はまだ出来てないけど問題はないからね。そもそも従業員としてのノウハウも無しに投入する気は無いんだよ。まずは寝泊まり、食事を取って適度な運動。衣食足りて礼節を知るってね。お店はまだ必要ないから気にしなくていいんだよ。まずはこっち。お風呂の用意が出来てるんだよ」
「ふろ? さっきも言ってた気もするけど、ふろってなんだよ?」
まずはお風呂で丸洗いなんだよ。
皆を引き入れ服を脱ぐように指示。風呂場を見せればなんとなく理由がわかったようで、意を決してリーダーが服を脱ぐと、他の皆も脱ぎ始めた。
うん、この年齢だからか男女だからっていう恥ずかしさは無いらしい。清いな。
「では、まずはクリアウォッシュ!」
「うわァッ!? な、何だ今の!?」
まずはリーダー君を魔法で丸洗い。
うわっ、綺麗になったら凄くカッコイイんだよ!?
後は肉付きがよくなったら女の子にモテモテだね。
「はい、ウォッシュの後はお風呂へゴー」
「水浴びみたいなもんか? うわっ、あ、これ、暖かい?」
一人一人魔法で綺麗にしてからお風呂に浸かって貰う。
そもそもの話、魔法使えば一発で綺麗になるからお風呂に入る意味なかったりするんだよね。
でも綺麗になった身体なら、お風呂に入った方が断然気持いいんだよ。
「あったかーい」
「ふぁ……」
皆お風呂気に入ってくれたようだ。
「君たちの服は代わりにメイド服を用意したから前の服は処分させて貰うんだよ。何か大切なモノがある場合は挙手で意見を伝えてほしいんだよ」
うん、誰も反応しないんだよ。
湯加減が絶妙らしく、皆揃って冬の温泉に浸かるお猿さんみたいになってるんだよ。
「あー、クソ、めちゃくちゃ心地いい。ねーちゃん、ごめん、なんかもう考えられないくらい気持ちいい」
これはしばらく会話にならないな。
はぁ、とりあえずしばらくはこのまま放置だね。
先に皆の予定行動決めとこう。
仕事が始まるまでに運動と勉強と礼節は教えておかないとね。可能なら魔法も教えておきたいけど、これはボーエン先生曰く、そのまま教えると裏切られた時が大変だから、こいつは信用出来るって思えるようになってから教えるようにって言われてるんだよ。
えーっと後は。うん、食材作る係とか掃除する係とかも決めないとなんだよ。
自給自足ができるように、中庭も出来る予定だからそこで簡単なモノ育てさせてみるかな。
慣れてきたら周辺買い取って開墾しちゃうのもアリなんだよ。