144話・ロゼッタ、悪役らしい従業員確保法1
雪が解け、外を歩くのがそこまで苦にならなくなった頃、私はついに従業員確保を行うことにした。
お店の方も、最初にとっかかって貰った従業員用の寮が出来たので一先ずそちらによって内部を確認。
名工と呼ばれるドワーフのおじさんにお酒をお供えして建てて貰ったので出来栄えはお願い通り。
ふふ、最高の寮が完成したんだよ。
一応寮長みたいな人が欲しいなぁ。
食事係とかベッドメイキングを仕事してる合間にやっといてくれる人が一人。
できればいろんな人種に対して分け隔てない人が良いね。
ま、とりあえず今回はリオネッタ。支度よろしくなんだよ。
「私が一緒なのおかしいと思ったらッ!? お嬢様、これ仕事外の仕事ですよぉーっ!?」
「ちょっとの間だから、お願いするんだよ。リオネッタ、頼りにしてるよー」
「だったら棒読みしないでくださいっ、ええい、やればいいんでしょやればぁっ」
ヤケクソ気味に寮にある掃除道具置き場へと向かって行くリオネッタ。
必要な道具は事前に買ってアイテムボックスに置いてたので、来たと同時に設置して行ったんだよ。
私の仕事はそれでおしまいだから後はリオネッタよろしくね。あ、風呂は沸かしといてね。
別棟になるけどそこの扉から行けるんだよ。
「風呂!? なんでこっちにも付いてるんで……広っ!?」
お風呂に妥協は無いんだよ。
スパ温泉並の巨大空間にさせて貰ったよ。うん、寮の隣、民家の一つがあった場所が丸々風呂場になってるんだよ。
慈悲はないんだよ。お風呂大好きっ。あ、一応魔石とか使って温水出るようにしてるからボイラー稼働させるだけでいいんだよ、いやー、まさかボイラーシステムが既にあるとは思わなかったんだよ。先人の誰かさんに感謝だよね? まぁ、技術だけ伝わってて誰も手を付けてなかったってだけで大工さん作れるけど何に使うんだ? とか言いやがったからね。宝の持ち腐れなんだよ。
さって、寮についてはリオネッタに任せてっと。
お店の方は釜が動かすの大変でまだかなり掛かりそうだから放置。
全ての建物を二階建てにする予定なので完成まではまだまだ掛かりそうだ。
店、寮、風呂で分けておいて、二階を昇り降りすることで行き来出来るようにしてみたよ。
風呂は寮から直行だけどね。
ちなみに風呂の二階はゆったりできる遊び空間にするつもり。
お風呂上がりにここでゆったりマッサージチェアとかしたいんだよ。マッサージチェアがないけどね。
寮の二階は食事とか家事とかする場所だね。
店はまだ出来てないけど、一階にお店と、カウンター裏に待機所とか折角釜あるし、誰かに錬金術教えてみよっかな。うん、錬金部屋も作って置く予定だよ。あと作業所だね。
二階は資材置き場がメインかな。
あと、一階の奥に私専用の部屋とエルフレッドさん用の執務室も拵えた。
そして、応接間も作ったよ、多分一番豪奢な部屋になる予定。
邪神洞窟下層の素材とか置いといてやるんだよ、きっと羨ましがるぞー、交渉に来た人とか。
ま、それは今はいいんだよ。
私とキーリは二人して徒歩で目的地を目指す。
途中影兵のおっちゃんがこっちはマズいとか言って来たけどこっちが目的地だから問題は無いんだよ。
そう、今回行くのは無法地帯、こと旧市街であり、荒れ果てた土地なんだよ。
都市部の残骸が放置されていて、そこに勝手に住みつく浮浪者の群れ。
そして闇ギルドなどの温床。
女の子二人が入るなんてことになったらそれはもう二度と帰って来ることができない、かもしれない場所である。
「お、お嬢、悪いことは言わねぇ、ここはさすがにマズい」
「ん。おっちゃん。私の反射結界、破れる人が居ると思うのかしら?」
「ふっ。我が保証してやろう。邪神でもそう破れん十連結界だぞ」
「そりゃ……あー、うん、むしろお嬢が被害出さないか心配になってきたぞ」
まぁ、さすがに相手が死んだらちょっと嫌なので無効化結界に留めてるけどね。
「おっとごめんよ」
ひらり、なんだよ。
わざとぶつかってこようとした子供を優雅に避ける。
ぶつかるつもりだった少年は私という目標を失い、うわっと地面に転がった。
「あてて……え? どうなって……」
「はーいおめでとー。今回は君が選ばれましたー」
「え?」
「君、グループで動いてるんでしょ、皆の元に案内してくれる?」
「はぁ? ふざけんなっ」
立ち上がると同時に走りだす少年。
しかし、その進行方向にはたゆたう触手さん。
キーリにより既に逃げ道は塞がれているのであった。
「うわ、なん……うわあああああああああああああああああああ!?」
もぅ、うねうねしてるだけで近づいても絡み付いて来たりしないから大丈夫なんだよ。
なんでそんなバケモノに出会ったみたいな声出しちゃうの?
「魔王からは逃げられない。なんちゃって」
「ひぃっ!? な、なんなんだよあんたっ!? か、金はまだ取ってねぇぞ?」
「質問をするわね? 貴方のグループは何人居るの? 大人は居て? 身体を売ってる子は居るのかしら? では家族関係とかある子はいる?」
「だ、誰が……」
答えるか、そう言われるより早く、私は笑顔で一歩近づき告げる。
「質問をするわね? 貴方のグループは何人居るの? 大人は居て? 身体を売ってる子は居るのかしら? 家族関係とかある子はいる?」
「いや、だから……」
質問に答えてくれないのでまた一歩、近づく。
「質問をするわね? 貴方のグループは何人居るの? 大人は居て? 身体を売ってる子は居るのかしら? いないのね。よろしい。家族関係とかある子はいる?」
「ひ、ひぃっ!? あ、ああ、うわああああああああああああああああああああああんっ」
「あー、なーかしたぁ。主様なーかしたっ」
ち、ちちち、違うんだよ、私は笑顔で質問してただけなんだよ?
可愛らしく教えてプリーズって言ってただけなんだよ? なんでさ!?