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143話・ロゼッタ、新年祭と除夜の鐘

 雪虫事件も過ぎた頃、街中では雪虫を掃除する人たちがよく見られるようになった。

 その後に積もった白い雪も溶け消え、ようやく一年が過ぎ去った今日この夜。

 家の食卓にはかなり豪勢な食事が並んでいた。


「なぁ、主様、今日はなんか食事がいつもより凄くない?」


「年末だからなんだよ。今日が終わったら除夜の鐘って言って教会の鐘が108回鳴り響いて町中の煩悩を粉砕してくれるんだよ。そして新年祭が始まるのさ」


 去年までのロゼッタ知識をフル活用してキーリに教える。

 そういえば、今年はいろいろ忙しかったから覚えてないけど、春の格闘大会行かなかったなぁ。

 夏には納涼祭があったはずだけど基本寝てたからなぁ。

 アレって市民用の祭りだから貴族は家で普通に過ごすんだよ。


 後、秋祭りといえば、牛追い祭りだろうか。アレも市民用だけど、秋にギルドに向かった際に遭遇しておっかけられたからね。まぁ、私の速度に付いて来れずに撒いたけど。

 他にこの国の祭りと言えば、雪祭りでしょ、春のパン感謝祭。夏の運動祭もあったな。


「祭りと言えば、一月新年祭。二月告白の日。三月返事の日。四月春のパン感謝祭。五月格闘大会。六月水鎮祭。七月夏の運動祭。八月納涼祭。九月牛追い祭り。十月市民文化祭。十一月。紅月見。十二月雪見恋愛祭が有名かな。村々だと別の祭りもあるけど、父上が定めた国際法による正式な祭りは月一で開催されるこの祭りたちだね」


 リオネル様から捕捉が入った。

 ちなみに、今の十二月にあるのが雪見恋愛祭なんだけど、既に婚約者が居る貴族たちは対象外だし、まだ成人の儀が行われてない私にはまったく無意味な祭りなんだよ。

 簡単に言えば城に集まってまだ婚約者の決まってない貴族子女と青年たちがカップリングするためのお祭りである。


 市民の場合は街中で集まってお祭りになってるけどね。

 ボーエン先生に聞いた話じゃ、黒い服装の髭もじゃお爺さんがプレゼント配って回るんだって。

 一説によれば、赤い服の白髭お爺さんになるはずだったんだけど、その日雪虫が降ってたせいで真っ黒で黒髭のお爺さんがプレゼント配ることになったんだよ。

 多分昔の転生者か何かがクリスマスイベント流行らせようと思ったけどホワイトクリスマスじゃなくてブラッククリスマスになっただけなのさ。


「それで、今日が12月最後の日。そして日付が変わると新年祭の開始なのだよ」


「へー。人間さんはお祭り好きなんねぇ」


 おっと、除夜の鐘が鳴り始めたぜぃ。鐘は鐘でも教会の鐘だからゴーンじゃなくてリンゴーンだけどね。

 あー、こうやって鐘の音聞くと今年も終わったなぁって思うなぁ。

 残念ながら元の世界では既に除夜の鐘煩いって苦情のせいで108の煩悩を駆除する鐘が聞こえなくなってるんだよ。

 これってさ、煩悩毎年溜まりまくるだけなんじゃないかな? だから犯罪者とか毎年増えてるんじゃないの? 時代の流れは通例すら葬り去るんだよ。怖いな。


「そーかぁ、それで今日だけ食事時間が遅いんやね」


「そういうこと。今日はお風呂に入るのを先にして日付が変わる深夜に食事を行って年を跨ぐのだよ」


 と、先輩風を吹かせてふふん、とキーリに教えるお姉さんしてる私を見て、お父様とお母様、そしてリオネル様がほんわかした顔をする。

 ちょっとセバス、なんでじんわり涙ぐむのかな?


「では、食事の最中だが、年を跨いだ。皆、去年はよく頑張った、今年もよろしく頼む」


 お父様がワイングラスを掲げ、お母様が今年もよろしく、あなた。とグラスを合わせる。

 私も合わせたいけど距離があるので近場のリオネル様とキーリとでグラス合わせをするのだった。

 これ、二人が居るから良かったけど、私一人だけだとグラス合わせる人がいないんだよ。

 去年までの私がソレさ。そりゃ人格歪むわ。


「ふふ、去年までは一人きりだったからグラス合わせは初めてなんだよね。初めてがロゼッタで良かったよ」


「り、リオネル様……」


 は、初めてが、私で……いやん。なんか恥ずかしくなっちゃう。


「主様なんで顔真っ赤なん?」


「気のせいよ。ほら、食事再開しちゃいなさい」


 あー、なんか新年早々最高の出だしな気がするんだよ。

 これはもう今年は素敵な一年になるんじゃないかな?

 今年の春で私も9歳、この世界では成人に当る年齢だ。


 つまり、一人商売を始めても問題の無い年齢と言う訳なのさ。

 これが私がこの時期まで商売開始を待った理由でもある。


「そう言えば、ベルングシュタット卿」


「ん、何かねリオネル王子?」


「卿は領地はどうしてるのだ? ずっとロゼッタと一緒なのは嬉しいのだが、向こうに帰らなくていいのか?」


「ああ、あちらは弟に運営を任せているのでね、影も送っているし、問題があればすぐに伝わる。私共はこの屋敷から出る必要はないんだ。幼いロゼッタを危険な領地まで行き帰りさせる必要もないし、安全でやりやすい統治だろう?」


 あ、ウチって一応領地持ちだったんだ。初めて知ったよ。

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