139話・ロゼッタ、お店を決めよう
これで冒険者、魔術師、商人と三つのギルドカードを手に入れた。
ギルドは他にも鍛冶ギルドとか闇ギルドとかいろいろあるらしい。
なんかこうやってカードが溜まって行くとついついコンプリートしたくなるのはなんでだろうね?
さすがに闇ギルドの会員登録はしないんだよ?
セバスに頼んだら普通に会員証偽造してきそうだけど頼まないんだよ。
ちょっとやってみたいとは思ったりするけど実際にやったりしないんだよ。しつこいな?
「では、こちらに参りましょう」
エルフレッドさんに案内されて、別のカウンターへ。
ここで店の候補を紹介してくれるそうだ。
結構人気な場所はすぐなくなるけど、高かったり別の理由で未だに放置されてる危険な店舗候補もあるのでしっかり吟味しないといけないそうだ。
エルフレッドさんが受付を済ませ、備え付けの丸テーブルに集まって紅茶を飲みながら待つことしばし。受付嬢の一人がやって来て、書類の束を私達の前に広げた。
うわー。結構多いぞ? これ見るだけで今日が潰れちゃうのでは?
あ。さすがに全部は見ないのか。
「こちらが求めるのは市民街、人通りの多い場所、値段は高くてもよい。そして従業員が暮らせる大型店舗」
「かしこまりました。ただ、大型店舗となると少々場所が限られてしまいますので、周辺住民の立ち退きを加味した中級店舗も候補に入れますがよろしいですか?」
エルフレッドさんが視線を向けて来る。
あ、ここは私が直接判断しろってことか。
「問題ありませんわ。店舗の大きさに関してはここ、商業ギルドの半分くらいの土地があるとうれしいですわ」
「かしこまりました」
受付嬢が取り出したのは五つの店舗候補。
順々に見せながら説明までしてくれる親切設計。
設計? まぁよくわかんないけど設計で良いんだよ。
私自身が分かれば問題ナッシン。
簡易の地図があるのもいいよね。簡易地図あっても場所わかんないけど。
「まずは仲見世通りと呼ばれるこちらの街道に面しております。街門から続く宿屋町の途切れた場所にあります空き店舗になります。前の店舗は靴屋だったのですが、人気店にも関わらずわずか一カ月で閉店となりました」
あ、そこまで言っちゃうんだ。
多分ここは死角の店舗だね。なぜか人気店が入ってもたびたび入れ替わる不遇の立地。
値段はかなり安くなってるけどここだけはダウトなんだよ。
「お気に召しませんか? ではこちらはどうでしょう?」
少し奥に入った貴族街にほど近い大型店舗。
なんでも殺人事件が起こってオーナーが死んだらしく、売却されたそうだ。
曰くつきだから安いんだよ。事故物件だった!?
「では次はこちらです。大店ではないですが中規模店舗で周囲には民家があります」
取り潰し案件の奴だ。
でも随分安いな。いや、安いというより、迷惑料?
周囲の住民がヤバいところだよここ。
「お次は……」
四つ目に紹介されたのはそこまで大きくないけど、元錬金術師が使ってた工房兼お店。工房が付いているため住み込み式で結構場所取ってるようだ。
その周辺には二件家が背後に建ってるけど、お爺ちゃんお婆ちゃんだけしか住んでないそうだ。
要交渉だけど、立地条件はかなりいい。
しかも大通りの一角であるのも素敵だ。
問題はもともと錬金術師が使っていた場所なだけに、怪しい器具がそのままになってたりでちょっと危ない可能性が無きにしも非ずってところである。
んー、保留? 最後の一つ次第だね。
「では最後に、こちらになります」
最後に紹介されたのは、ボロ屋敷と化した郊外の大型施設。
もともとは大店の二号店になるはずだったのだが、なんやらいろいろ問題起こって人がいなくなり、売り払おうにも無駄に大きい土地なので金額が高くなり売れないままになったのだとか。
大きさは文句ないし、店にするなら充分に繁盛できる下地はあるのだが、残念なことに立地に恵まれていない。
おしいけどここはダメだな。
大型店は後ろ髪惹かれるが、ここに作ったが最後、閑古鳥が鳴きまくってどうにもならなくなる。
うん、これはもう、決まりなんだよ。
一つしか選べる場所がないんだよ。
「四つ目の店舗を買いますわ」
「え? そ、即決ですか?」
「即決というか、そこしかなさそうなんだよ。一番いい場所がそこ、かな。後は周辺民家と要交渉、かな。あ、どうせなら移動先の民家も見繕ってしまっといた方が……」
「残念ですが、市民用の家屋に関しては家屋専用の販売店でお願いします。仲介業者がいますので、商人ギルドの会員なのでこちらが邪魔する訳にもいかず。ああ、仲介業者の店はこちらになります」
うわっ、家屋の仲介業者めっちゃ沢山いるし。大店は数十人で経営してるけど、ごく少数。むしろ個人営業が滅茶苦茶多い。百件近くあるんだよ。
熾烈な争いで廃業してる人多そうだな。
これ、本当にこんなに存在してるの?
「副職業として仲介業者業もなされてる方が大体ですね。そんな方々は大手の仲介業者から情報を貰って営業を行っています」
うん、多分仲介業者の仲介をしている業者の仲介業者という訳のわからない立場で多くのお金を貰って行く仲介業者も居るんだよ。
「お勧めはありますか? 信頼できる業者は?」
「おや。ふふ、ではこちらの大手仲介業者を御紹介させていただきます」
結局一番信用出来るのは大手の業者さんだった。世知辛いな。