135話・ロゼッタ、商業ギルドにいくんだよ
朝。リオネル様と影兵さんたちと一緒に走り込み。
基礎体力はしっかりつけましょう。
って、あれ? 皆もうギブアップ?
「ちょ、ちょっと待て。お嬢の速度に付いて行くだけでも辛いっつの」
「ぜぇ、ぜぇっ」
リオネル様なんか何か言いたそうなのに言える状態じゃなくなっているのでただただ荒い息を吐くだけになっている。
うん、朝っぱらから皆不甲斐ないんだよ。
でも基礎体力付けるためには避けて通れないんだよ。
皆のノルマを私の半分以下にして運動して貰う。
まずはラジオ体操から。
覚えさせるためにゆっくり説明しながらやるんだよ。
でも皆できないんだな、これが。
ま、最初だし仕方ない。
少しずつ覚えて貰えばいいんだよ。
あと、明日は皆筋肉痛だな。
影兵さんたちはもっと出来ると思ってたけど、案外駄目駄目さんだね。
皆がノルマ達成と休憩をしている間に剣術の練習と体術の練習を行う。
ふっふっふ。これぞ我が我流剣術の真髄、見よう見まねの天駆なんちゃらぁっ。なんだよ。
高速抜刀術の練習も終えて本日の朝の運動終了。
なんだなんだぁ、死屍累々じゃない。
立ってられてるの私とキーリと影兵のおっちゃんだけなんだよ。
このおっちゃん、リーダーか何かなのかな? 一人だけ平気そうにしてるんだよ。
でも足プルプルしてるのは黙っといた方がいいのかな?
「テメェ等不甲斐ねぇぞ。それでもベルングシュタットの影兵か? 護衛対象より弱くて護衛が務まるか」
「いや、普通にお嬢越えとか無理っす」
「そこは無理言わねぇよ、俺でも無理だ」
あれ? 普通に私が規格外扱いされてない?
失敬な。わたしゃただの悪役令嬢レベル500ですよ?
それから、両親と婚約者とで食事を取る。
私の左右にキーリとリオネル様が来てくれるので前みたいに疎外感味わったりしなくていいんだよ。
でもセバス。リオネル様の前でテーブルマナー出来てませんよみたいに言うのやめてよぅ、なんか出来ない子みたいで恥ずかしいじゃない。
現代世界で覚えたテーブルマナーと微妙に違うんだよ。そのせいで向こうの癖がでて怒られてしまうのだ。
これはこれで弊害なんだよ。困ったな。
朝食を終えると私とキーリは馬車に乗ってエルフお兄さんの待つ店へと向かう。
リオネル様は筋肉痛でお休みなんだよ。
影兵さんもおっちゃん以外はお留守番だ。
昼になるまでは休憩できるから午後の魔法授業はちゃんと出るんだよ?
さすがにエルフのお兄さんを歩かせる訳にもいかないので馬車に乗って出発。
御者と一緒に乗り込んで待ってたのはあの汗臭いおっちゃん。
護衛の人らしいけど、私の外出専門兵みたいになってるの気のせいかな?
広々とした馬車に私、キーリ、兵士のおっちゃん。ついでに影のおっちゃんも乗り込んできた。
やっぱり朝の運動でダメージ負ったらしく、ぷるぷる震える足では馬車に追い付けないからってことで影なのに真正面から護衛することにしたらしい。台無しだな。
「というか、既に四人も乗ってるんだよ。エルフのお兄さん乗せると狭そうなんだよ」
「絶対に降りんぞ。俺は降りん」
「御者台が空いてただろ。そっちに座りゃいいじゃねぇか」
「お前が座れよ。お嬢の護衛なら俺がやっとくから外敵見といてくれや」
なんか、おっさんたちで私の護衛を掛けて引くに引けない勝負が冷戦で行われてるんだけど、取り合うようなもんじゃないよ?
静かにいがみ合う二人を放置してキーリが食べてる姿を見ながら馬車の旅。
キーリはどれだけ喰うんだろうね? 最近食べてばっかりだ。太っちゃうよ? 知らないゾ。
「本当に来たのですね」
エルフのお兄さんの元へと向かうと、馬車に乗ってきたお兄さんがそんな事を言う。
貴族の戯れで弱者を甚振ったり騙したりして絶望する姿を楽しむ人が居るらしい。
もしかしたら私もそれなんじゃ、と薄くだけど疑ってたらしい。
まぁ、あの腐れイケメンが関わってたんだから仕方ないとはいえ心外なんだよ。
「今日はよろしく、なんだよ」
「これからこのお嬢さんが上司に成る訳か。せいぜい機嫌を損なわないようにしたいものだ」
「いつも通り過ごしてれば問題はないんだよ。エルフのお兄さんの商売は適正価格だから問題ナッシン」
「それでいいというのなら……しかし、ちょっと人間臭くないかこの馬車?」
「それ、そこのおっさんのやぁ」
キーリに指摘された護衛騎士のおっちゃんが俺か? と自分の臭いを嗅ぎ始める。
「そういや訓練直後に乗ったんだったわ。汗臭くてすまんな。がはは」
いつも通りだからもう諦めてるよ。私は臭いシャットダウン中だから問題ないんだよ。
そして、馬車が平民街にある商業ギルドへとやって来る。
馬車の停留所に止まり、馬糞群がる道へと降りる。
さすがに私とキーリは浮遊魔法使って浮き上がってるんだよ。
こんな所歩けるかーっ。