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132話・ロゼッタ、異変に気付いたんだよ

 魔術師ギルドに向かってから数日後、いつものように冒険者ギルドに顔を出そうと街道を走っていた私。

 なんかもう、この街道走るのめっちゃくちゃ面倒なんだよ。馬車来たらよけないとだし、使用人さんたちが使ってる通路だから変な目で見られるし、暗殺者っぽいのが狙ってるし。

 どうにかなんないかな。


 今は貴族街だからいいとして、市民街とかさらに混雑としてるし、ひったくりとかも出るから走るのめんどうなんだよね。下は馬糞塗れだし。

 なんかもっと早く走る方法ないかなー……あ。

 私は閃いた!


 道が通りたくないならば、道なき道を行けばいいじゃない。

 そう、人々は編み出した、道なき道でも駆け抜ける方法を!!

 そうと決まればレッツチャレンジ。今の私ならきっとできる!


 私は速度を速めて手短な民家の壁に飛び掛かる。

 壁に足をつけ、蹴り上げながら壁の丁頭部に手をかけ思い切り体を持ち上げる。

 壁に上るとその上を走る。


 途切れた場所は飛ぶことでさらに先へ。

 飛ぶ先もなければ下に降りて走り、目の前の壁を蹴りつけさらに先へ。

 手ごろな民家があれば飛び移って屋根を走る。

 そしてたまにバク宙。後ろへの宙返りを意味なくやっちゃうんだよ。


 ふはははは、これぞ人類の秘宝、人体の神秘、ジャパニーズ忍者!

 肉体を酷使する御業、そう、パルクールッ!!

 ひゃっほーう!


「な、なにしてんだお嬢――――ッ!!?」


 あ、しまった、影の人放置しちゃった。

 慌てて立ち止まる、しかしそこはどっかの貴族さんの邸宅の上。

 おお、気づいたら結構高い。


「そ、そこ伯爵家だからー、早く降りろぉっ!!」


 んー? あ、なるほど、ここは敵対中の伯爵家の屋根だったのか。

 んじゃ、早く降り……あそこって確か……

 降りる際に見えた場所、それは私が魔導書を買うにあたって訪れたエルフお兄さんの店前に、貴族用の馬車が止まっていた。


 普通ならただの客だって思うんだけど、なんか嫌な予感を覚えてしまった。

 なので、予定を変更してパルクールしながらお店の屋根へ。

 あれって、確か……腐れイケメン豚野郎じゃない。

 ギリード君をいじめていた、というかいじめる予定のいけ好かないイケメンだ。

 そいつが店の中向けていやぁな笑みを浮かべてから馬車に乗って立ち去っていく。


 馬車が見えなくなるのを待って、私は浮遊魔法でゆっくりと地面に着地した。

 あ、影さんおいっす。

 息荒くやってきた影のおっちゃんがゼェハァいいながら私の前で立ち止まり、肩で息しながら膝に手をやって息を整える。


「お、お嬢、な、なんだ、今の……というか、ついていけるかァッ!!」


 お、おおぅ、心の叫びがでたんだよ。


「いやぁ、ただ道を走るよりも速くギルドに着ける方法思いついたので……」


「勘弁してくれ、遠回りがきついって、息上がったのなんざ久しぶりだぞ?」


「あはは、ごめんねごめんねー」


 まったく悪びれもせずに私は彼を放置してエルフお兄さんの魔法屋さんへ。


「おひさーでぃす」


「……おや、久しぶりですね」


 あれ? なんかすごく疲れた顔、というか、悲しそうな顔してる?


「どうかしまして?」


「いや、何も。それより何か探しに来たのではないか?」


 露骨に話題変えたな。

 んー。実際問題赤の他人でしかないんだけど、なんやかんやで美形男子なエルフのお兄さんにはいつも通りの顔で出迎えてもらったほうがいいんだよ。


「そういえば先ほど馬車とすれ違いましたが、ここには他の貴族もいらしているのですね」


「失敬だな。それなりの売り上げはある。まぁ、といっても、そろそろ店を閉めるがな……」


「へ? し、閉めるの?」


「ああ。言ってしまったから言うが、先ほどの貴族に目をつけられてな。これ以上ここで商売すると潰されるのは目に見えている。やはり人間の国で商売するのは難しいようだ。これでも何十年も続けていたのだが……相手が高位貴族ではな」


 あー、なるほど。

 でも、お兄さんが魔導書売り辞めちゃうのはちょっと可哀想だよなぁ。

 私としても潤いなんだよ。人類の損失だよ!

 お兄さんカッコいいし、イケメンは見るだけでテンション上がる40代でぃす。

 あ、そーだ。


「止めた後はどうするんです?」


「そうだな。他の土地でやっても同じだろうし、故郷に戻るのも、ありかもしれんな」


「でも、できるなら人と関わりたい、と」


「……うむ」


「場所、変わっても問題はないですか?」


「うむ? 別に構わんが……」


 ふっふっふ。ならば方法はあるんだよ。


「ならば! 私が雇うんだよ!」


「……はぁ?」


「実はそろそろ商業始めようと思ってまして、従業員募集中なんだよ。ちょうどいいからどうですか? あ、でも店の場所は市民街の方なんだよ?」


「なるほど、だが、市民街でもこの魔導書を売っていいのか? 貴族が文句を言ってきそうなのだが」


「その貴族が商売始めるんだからいいんだよ。商業ギルドに行く時、できれば登録の仕方とか教えてもらえると助かるんだよ」


「……まぁ、これも機会ということか。明日は店を休むつもりだ。ギルドに向かうならば明日でもいいか?」


「ええ。では明日、時刻はいつに致しましょう?」


 思い立ったが吉日だ。早速明日の予定に組みこんじゃおう。

 そして私は、有用な従業員兼雇われ店長候補を手に入れた。まだ店始めてないんだよ? やばいな。

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