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12話・ロゼッタ、駆けまわる

 家に帰りついた私は早速中庭を走ることにした。

 冒険者用の服に着替えて軽く走りまわる。

 まずは体力を付けるのだ。


 走りまわれるぞー。ひゃっほーうっ!

 ドレスじゃないから、めっちゃくちゃ走っちゃうぞー。

 風だ。私は風になるのだー!


「お、お嬢様っ、いけません。そんな恰好で走らないでくださいーっ」


 ああ、なんだろう、この開放感。

 駆け抜ける草の姿、私の身体をすれ違って行く風の群れ!

 前世じゃ走るなんて学生時代以来だよなぁー。ずーっと座って雑務雑務。

 もうそんな事する必要は無い。

 子供だから走りまわって転んで泥だらけになるがお仕事だ。


「ちょ、なんでそんなに速いんですかぁー!?」


 そりゃもう冒険者の軽装だからに決まってるでしょう。追いかけてくるリオネッタの服装はメイド服だし。

 スカート長いから走りづらいうえに風の抵抗受けて速度も遅くなっている。

 私の身体が子供だからって言われてても、だ。走り方を研究しまくっていた学生時代に培った走り方を知る私に追い付けるものか!

 スプリンター走りじゃぁーっ。


「あはははは、私は風になーるっ」


「お嬢様お待ちくださーいーっ!! ご両親が、ご両親がお怒りに成られてしまいますーっ!!」


 この位じゃ怒らんだろ。怒っても理由言えば大丈夫だって。

 さぁ走ろう。めっさ走ろう。今、私を縛るものは……何も無いっ!!


「待って、お嬢様待ってぇぇぇ――――っ」


 とりあえず今の身体だとさすがに走り過ぎると大変なので屋敷二周するに留める。

 明日からは筋肉痛と闘いながら己の限界への挑戦である。

 がんばるぞーっ。


 途中でこけて泣きそうな顔で私に手を伸ばすリオネッタ。

 可愛らしいのでそのまま放置して周回抜かししておいた。

 ふー、久々に気分爽快になれた気がするや。




 翌日。

 ひっさびさの筋肉痛が来ました。

 めっちゃくちゃ痛いです。

 たった少し走った。その程度で何だこの激痛? 私の体、華奢過ぎるだろ。

 これはもう基礎体力作りからしっかりやらないとダメだなぁ。


 うぅ、節々が痛い。前世だと四十肩で腕が上がらなかったけど、別な意味でいろいろ上がらなくなっている。

 朝は食事で両親と会わないといけないのでドレスを着ないといけないのだけど、このドレス、一人で着るのはさすがに無理だ。

 リオネッタが起こしに来るより先に起きちゃったからなぁ、もうしばらくこのままになってないと。


 しかし、この寝巻、ネグリジェ? ちょっと恥ずかしいなぁ、結構スケスケなんだよね。通気性は良いんだけど。

 どうも私の記憶が戻る前のロゼッタが母親から貰ったらしい。

 お下がりではなく新品らしいんだけど、結構ロゼッタが気に入っていたので私も気に入ってしまっているようだ。

 でも、恥ずかしい。


 リオネッタが遅いので、ストレッチをして待っていようとベッドから這い出て、前後に足を開いて踵を伸ばしていると、ようやくリオネッタがやって来た。スケスケ衣装の私を見てきたので、いやんっと身体を隠してみる。

 呆れられてしまった。おかしい。こんなギャグっぽいこと私自身もロゼッタ自身もやったこと無かった筈なのに。

 というか、今更だけど私、ロゼッタというよりは寛子さんの性格がメインな人格形成してるよね? でも性格自体は子供っぽいからロゼッタ寄りっと。なんだこのアンバランス。

 

 昨日は殆ど買い物で終わってしまったし、昼からは力尽きてベッドから動けなかった。

 今日も結構節々が痛いけど無理して運動しちゃおう。

 ちゃんと身体が出来あがるまではこの痛みの繰り返しである。

 慣れるんだこれに。痛いのが気持よくなるまで繰り返す気は無いけど痛みが私の成長を確かにしているのだよ。

 ふおおおおお、足一歩踏み出すだけでも全身に痛みが……


「おはようございますお嬢様。今のはあえて何も言わないでおきますね。本日もストレッチですか?」


 うぐぐ、まさかの総スルー!? なんなの、既にスルースキル持ってたの? 私のいやんを返せっ。断固抗議なの、横暴は許すなーなの。

 ここはもうイヤンじゃないですよとかジト目で言うところなんだよ。あれ? 今のスルー状態とあまり変わらない? 抗議の意味がないような?

 仕方ないのでラジオ体操を行って服を着替える。


 コルセット付きドレスを着た後は朝食が待っている。

 朝食でお腹が出ないよう、いつもよりきつめに締めつけております。

 やめて、締めないで、こんなに締めたらゲー出ちゃう。ゲーはだめだからキラキラにしよう。

 締めるより回す方がいいんだよ。いつもより多めに回しちゃうんだよ。コルセットなんかいらないけどキラキラも出す気は無いんだよ。


 食事自体はいつもの通り、執事のお爺ちゃん一人捕まえて食べ方を教わることにした。

 淑女になるのよ。って告げたら両親が涙をホロリ。ロゼッタったら大人になって……ってお母様おかしい、その反応おかしいでしょ!?

 お父様も、知らぬ間に立派になったなって、まだ八歳だから、むしろテーブルマナーは率先して覚えさせとく時期だから!?

 そこの執事のお爺ちゃんも、お嬢様、ご立派になられて……ホロリ。じゃないんだよ!?


 ウチの家族と使用人が親馬鹿過ぎる。

 なんだこのちやほや感。私がちゃんとしないとダメになる。この家族暖か過ぎるよぅ。これで悪役令嬢になるとかロゼッタダメ過ぎだよ。むしろ我儘悪役令嬢になる下地が出来すぎてるよぅ。

 待っててねロゼッタ。あんな未来は私が打ち砕いてあげるからね。親孝行、していこうね?

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