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1279話、ブルー、イレギュラーの異世界転移と思えば自分が登場人物だった

SIDE:ブルー


 嘘だ。

 ケルシス君の話を聞くほどに、信じたくない思いが湧き上がる。

 ケルシス君の言葉は荒唐無稽であり、決して信じられない話のはずだった。

 自分が異世界転移して別世界で過ごしている事実を鑑みてもおおよそ信じられない話なのだ。


 自分が、物語の登場人物でしかなかったなんて、そんなこと、あんまりじゃないか。

 すでに未来は決まっていて、いや、選択肢次第では別の未来になるらしいが、おおよそどんな結末が待っているかが決まってしまっているのだ。


 俺たちが未来を切り開くために異世界に呼ばれた、そう信じていたからこそ、俺もレッドも戦ってきたんだ。

 なのにその精神性も、考え方も、全てがケルシス君の世界では決まった物事でしかなかった。

 ロゼッタも、ここにいる人たちも、ケルシス君以外は全て、ルートに沿って動くだけの登場人物に過ぎなかったのだ。


 主人公は自分じゃない。そう言われた気がして、目の前が真っ暗になった。

 だが、それは一瞬だ。

 ケルシス君の話によって未来は変わる。

 物語を逸脱した時、俺たちは本当の意味で人生を過ごすことができる。


 物語の登場人物じゃない、それこそこの世界の地に足つけて生きる一人一人の主人公として過ごせるはずだ。そう、信じて意識を戻す。

 未だ愕然としているレッド。珍しいな、あいつならすぐにどうでもいいよそんなこと、とか言って納得するだろうに、自分が物語の登場人物だったことがそんなに辛かったのか?


「ブルー! 俺、俺主人公でも攻略対象でもなく、モブだった!! どうしたらいいんだ!!」


 そこかよ!?


「ブルーはいいよな、攻略対象だぞ、ヒロインとやらの」


「そうかもしれんが、ケルシス君、そのヒロインとやらはどこにいる?」


「えっと、そこに、います」


 と、おずおず視線を向けたのは……確かレミーネだったか。


「え? あーし!?」


「えっと、もともとレミーネさんは物静かでお淑やかな人で、ゲームのヒロインだったんです、けど……どうやら孤児院の院長先生がやらかしたっぽくて」


 詳しく聞いてみると、もともとはレミーネの性格はおとなしい感じだったらしい。

 しかし、異世界転生していたらしい孤児院の院長がギャルっぽい性格? だったらしくそれを真似て覚えてしまったレミーネさんはパーリーピーポーと化してしまったそうだ。


「なるほどな、じゃあ俺や他の攻略対象との恋愛イベントは起こらないのか?」


「それが、むしろ起こさないと不味いといいますか……」


 起こさないと不味い?


「ふむ。ここから先はこちらから話した方がよさそうだな。ケルシス君。説明ご苦労」


「あ、はい。オスカーさんお願いします」


 肩の荷が下りた様子で大きく息を吐くケルシス君。

 大役ご苦労様、と伝えておく。


「では、先ほどの話に追加する形で俺より説明させて貰う」


 オスカーの話はケルシス君の話を前提とした話だった。

 つまり、この世界はケルシス君の世界で存在するゲームのストーリーであり、その登場人物である俺たちは、イベントでロゼッタを救うことになっているらしい。

 そのイベントが、どこかの洞窟にある分離の杖をヒロインであるレミーネと俺か他の攻略対象が好感度を高めて一定の状態で7月頃に向かうと、杖を発見してロゼッタを救えるのだとか。

 眉唾だと思いたいが、状況が状況だけに無視できる状態じゃない。


「要するに、今いる覇王ロゼッタは二つの意識を持ってるってことか。本来のロゼッタは良い奴だけど、悪役令嬢ってもともとこの世界のロゼッタだった意識が転生した寛子さん? の意識を乗っ取り返しつつある、んでブルーとそっちの女の子が恋仲になってればイベントが起きてこの二人を分離できる、そうしないと寛子さん側の意識を持つロゼッタは悪役令嬢に敗北しちまう、そうなれば、この世界の半分が滅びちまうってことか」


 おお、レッドが珍しく理解した!?

 リーリルと俺が驚いているのに気付きもせずに、レッドはオスカーへと視線を向ける。


「一つ聞きたいんだが」


「なんだ?」


「覇王ロゼッタは悪人じゃないのか? 悪役令嬢の意識だけが悪いのか?」


「もともと我が国は弱小国家でな。本来であれば周辺国に襲撃されて滅び去る運命でしかなかった。だから兵士たちも諦め半分、訓練もおざなりだった。そこに、お嬢が現れたんだ。彼女は実力を示し兵士たちを叱咤激励し、瞬く間に兵士たちを鍛え上げた。俺たちが今の実力を手に入れたのは全てお嬢のおかげだ」


「じゃあ、その、この国を牛耳ったりとかは……」


「お嬢にそんな気はねぇよな? むしろ陛下やエリオット殿下の方が譲りたそうにしてるけど、リオネル様と二人領地に引き籠る気満々だぞ?」


 ガレフの言葉にレッドが顎に手を当て考える。


「つまり、ロゼッタ自身いや、寛子さんの前世を持つロゼッタはこの国を本当に発展させるためだけに動いているのか?」


「お嬢が前に言ってたんだがよ、なんかこの世界はお嬢が居た世界の乙女ゲー世界だったらしいぞ。んで、ライオネル王国は悪役令嬢と第二王子の暗躍で滅びそうになるから、そうならないように手を打っていたらしい、その一環でデーバルデ帝国が攻め寄せてきたときに対抗できるよう、兵士を鍛えたらしいんだ」


 話聞いてるとめちゃくちゃ良い奴じゃないのか?

 おいレッド、お前はロゼッタさんに謝った方がいいぞ。本気で土下座しておけ。

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[一言] キャラ崩壊が激しいんだよ?、
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