1276話、ケルシス、気付かないでと祈りを込めて
本日飲み会だったこと伝えるの忘れてました f(´▽`*)
SIDE:ケルシス
「アムリタとついでにエリクサーなんだよー」
ちょっと棒読み気味に、ロゼッタさんが薬瓶を二つ投げる。
双方暴走中のブルーにぶち当たり、瓶が割れる。
降りかかる二つの液体がブルーの体を覆い尽くし、暴走体がもだえ苦しむ。
「ちょ、あれ大丈夫なの!?」
「今日は話し合いどころじゃなくなりそうね、私は帰るわ」
「そうですね、ご足労おかけしましたお嬢」
「次の話し合いが決まったらまた連絡頂戴オスカー」
そう言って背後に手を振りながら悪役令嬢が去っていく。
不意に、一度立ち止まり、彼女は僕へと振り向いた。
「ところで、君、私がロゼッタだって、良く知ってたねぇ?」
深淵を思わせる瞳が値踏みする。
死を感じ取りながら僕は何とか言葉を吐き出す。
「この前、僕のクラスに来たじゃないですかキーリ先輩と一緒に」
「……ふふ。そうね。そういうことにしておきましょうか」
気付かれた?
いや、大丈夫、もしも気付かれていれば今ここで僕は殺されててもおかしくないし、だから気付いてない。
気付ていないよね、そうだよね? お願いします、気付かないでくださいっ!!
多分無理だと思いながらも、僕は天に祈りを込めるのだった。
「ブルーっ!!」
悶え苦しんでいた化け物が小さくなっていき、人型まで収縮して倒れる。
「ちょ、こいつ服着てねぇぞ!?」
「今の変身ではじけ飛んだんだろ、誰か隠すもん持ってこい!」
集まっていた兵士たちがてきぱきと動き出す。
統率された、というよりは見えない方法で連絡を取り合っているような動きで的確に処置を施していく。
瞬く間に毛布にくるまれたブルーさんがどこかに連れ去られて行き、リーリルさんも付いていくことになった。
大丈夫かな?
確かこれでブルーさんの怪人としての能力は完全に消え去ってしまったはずだ。
アムリタが体の状態異常を直す際に、改造された体を元通りにしてしまったので普通の一般人に戻ってしまったのだ。
ここから、ブルーはあまりにも弱くなってしまった自分に嘆くのだが、そこをヒロインと二人三脚で立ち直ることでグッドエンドに向かっていくわけである。
うーむ。大丈夫かなぁ。
心配だし僕らも行った方がいいよね。そもそもブルーさん気が付いた時、レミーネが居たんだっけ。危ない危ない、ここで二人を見送るのは無しだ。
「レミーネさん、ぼ、僕らもほら、一応関わっちゃってるし、無事を確かめに行かない?」
「えー、そこまでする必要あるかなー? でもケルシスきゅんやさしーからしゃーないか。お付き合い致しましょう」
あれ、なんか僕の方が率先してブルーさんの安否確かめに行ってる!?
君だよ君、レミーネさんが心配しないとイベント進まないんだってば!!
「しかし、アレだね、ケルシスきゅんってばちょっと出会っただけの人の安否を気遣うなんて奇特だよね」
「そ、そうかな? でも目の前で怪物になっちゃったし、戻ったって言われて本当に戻ったのか気にならない?」
「あーしは別に、あ、いや、気になるかなぁーなるかもー?」
これ、僕が行くって言ってなかったら確実に向かう気なかったよね。
とはいえ、向かうと言ってくれたので僕とレミーネはブルーさんたちの後を追って走り出す。
「おっかしーなぁ、あーしらってデートコース案内に出かけたのよね?」
「そ、そうだね」
そういえばそんなこと言って連れ出したんだっけ。
ちょっと忘れてた。
「あそこだね」
「宿屋? あ、あのリーリルさん!」
宿屋の前で、ちょうど宿屋に入ろうとしていたリーリルさんに追いつく。
危なかった、もう少しでどこ行ったか分からなくなるとこだった。
「あら、あなた達は。もしかしてブルーのこと心配して来てくれたの? あー、そうね、もしよかったら彼が気が付くまで一緒にいる?」
「え、それっていつまでか「います!」だよねー」
レミーネさん本当にレミーネさんですか!?
なんでここで居残りますとか言わないの、普通の君なら言うんだよっ!
どうしてだるそうにしてるの、帰りたいって顔に書いてあるよ!
君の恋愛助けてる僕なんなの? ピエロかな!?
部屋に上げてもらうと、ちょうど兵士とレッドだろう赤髪の男性が話し合いというか、一瞬即発で殴り合いになりそうなほどに声を荒げるレッドを兵士さん二人が困惑気味に対応している。
リーリルさんから理由を聞いても憤りが止まらないらしい。
なんかお前らがやったんだろとか言い始めてるよ。リーリルさんが違うって言ってるでしょ、話聞いてあげて。
クエリスさんの方は、今日はいないのかな?
まぁ僕が彼女の居場所を聞くのは違和感しかないだろうから何も言わずにレミーネさんと二人ブルーさんの寝かされたベッドの前で待機する。
「はー、しっかしマジバッピンだったし、こんなイケメンがグロマッチョになるとかどーなってんの?」
「確かにアレは驚いたね。でも元に戻ってよかった」
「まぁ、あーしら助けてくれた人が目の前で殺されました、よりはマシな未来だよね。はー、でもあのロゼッタさんだっけ、あの人に叫んでたケルシスきゅん、かなりカッコよかったよー」
「そ、そうかな? 結構必死だったから……」
思わず頭を掻きながら告げる。
無我夢中だったから改めて言われると恥ずかしいな。




