1271話、ブルー、衝撃映像
SIDE:ブルー
「あれ? あんたも来たの?」
オープンカフェでオスカーといろいろと話をした俺は、時間になった、ということで映画を見にやってきた。
映画を見るにはお金を出す必要があるそうだが、今回は奢りだ、とオスカーが出してくれた。
そうして二人して座席に座った時だ。
隣に座っていた女が驚いた顔を……ってなんだリーリルか。
「また新しい服なのにソレか」
「いいでしょ、魔女ルック、これ今までより魔法抵抗高いのよ」
「なんでまたここに?」
「いやー、情報収集してたら大体皆してこれ見た方がいいっておすすめされるのよね。ロゼッタって人のことが良くわかるらしいし」
なるほど、俺と同じ理由でここに来たのか。
「お、リーリル、ブルー、二人ともここに来たのか」
「なんだクエリスまでここに来たのか」
「鍛冶屋のおじさんに勧められた。ライオネルに来たなら一度は見ろって」
ライオネルの市民こぞってこれを見ろってか。
どんだけ見せたいんだ。それだけ見ごたえのある映像ってことか。
「とりあえず、まずは見てみるといいでしょう。俺から下手に説明を聞くより理解はできると思いますよ」
オスカーの奴もこんな感じで大してロゼッタについて話そうとしない。
一応、こいつが俺の元に来た理由は教えて貰ったし、俺の暴走についても少々驚きの事実を聞かされた。
ライオネルの学院に、未来の出来事迄を知っている転生者がいるらしい。そいつに事情を聴いて俺たちがライオネルにやってくる時期や、この先何が起こるかを教わったらしい。
つまり、こいつらは俺が暴走することまで知っていることになる。
ライオネル軍は俺たちがどれほどの実力かすら理解したうえでこうして国内で放置しているということになる。
一応、敵対するかもしれないと聞いてみたのだが、それはそれで構わない、みたいな態度でご冗談を、とか言われた。
正直そんな態度を取られると、お前らがどれだけあがこうが俺たちに勝てるわけないだろ、と言われているようで少々気分が悪い。
一度本気で戦ってやろうか? いや、相手の実力が分からない以上、いきなり敵対するのは悪手か。
そもそも兵士の一人がオークを瞬殺する瞬間を見せられているのだ。このオスカーがその実力がないとも思えない。つまり、こいつに勝てない状態でロゼッタは敵、と判断して襲い掛かるのは愚の骨頂。
せめてロゼッタの実力を見れれば……っと、そろそろ始まるのか。
できれば、やはりポップコーンなどが欲しいところだな。
皆揃ってその場に座り、3Dプロジェクター並みの高精度で壁に映し出された映像が始まった。
……
…………
………………
「……はっ!?」
なんっだ、アレは?
あまりにもアレ過ぎてしばらく放心してしまっていた。
慌てて周囲を見てみれば、うんうんと懐かしむような顔をしているオスカー、そしてキラキラとした憧れの目を向けているクエリス。
リーリルはと言えば、衝撃的過ぎたのか愕然とした顔をしている。
おそらくだが、自分の魔法を超える魔法じみた一撃を放った映像を理解できず許容量をオーバーしてしまったようだ。
ただ、あの映像のおかげで確信は出来た。
ロゼッタ・ベルングシュタット、彼女は確実に転生者だ。
まさか日本や異世界の外国に存在する神々の名を告げる映像が見れるとは思わなかった。
ただ、噂でいろいろと言われていたような覇王云々はどうやら本当に噂でしかないらしい。
ふむ。まだ敵対する存在かどうかと言われるとはっきり決断はできないが、ドラゴンを一撃で倒せるだけの実力は持っていると思っていいだろう。
つまり、あの邪神を倒した一撃を放ったのは、彼女で間違いなさそうだ。
オスカーを遣わせてきた以上、向こうは話し合いをする用意があるとみていい。
ならば直接尋ねるのが一番か。
しかし、ライオネル王国軍の総司令官、か。随分とこの国の中枢に食い込んでいるな。
いや、そもそも第三王子の婚約者というだけでも普通に国の中枢にいると言っていいのだが。
確かに、この映像を見れば彼女の人となりはある程度分かるな。
リオネル王子だったか、彼との仲もそれなりに良いようだし、兵士たちからの信頼が厚いこともよくわかる。
これは兵士たちを人と思わず接していれば絶対に手に入らない称賛だ。
彼女はライオネル王国を牛耳る、という考えはあまりなさそうに思えた。
むしろ軍人的な思考を有している可能性はあるかもしれない。
そうなると、レッドを連れていくとほぼ確実に敵対することになるだろう。おもにレッドが話を聞かない方向で。
よし、オスカーに謁見依頼をしておいて明日はレッドとは別行動にしよう。
俺だけで行くのもいいが、出来れば証人も欲しい。リーリルとクエリスのどちらを連れていこう?




