1266話、レッド、プライダル商店
SIDE:レッド
「な、なぁあんた、貴族、だよな?」
平民たちに交じって列に並んでいる貴族服の男に声を掛ける。
カイゼル髭のいかにも平民を見下していそうな男は、ふむ? と髭をさすりながら頷く。
「いかにも。貴族であるが、何かね?」
「い、いや、その、気を悪くしないでほしいんだが、ここ、平民の街だろ、周囲も平民ばかりだし、なのに列に行儀よく並んでるのが不思議で……」
「レッド……」
あまりにも、どストレートに尋ねる俺にブルーたちが思わず頭を抱えた。
いや、だって不思議だろ?
こういう時は聞かないと。
「チミたちはあれかね、外から来たのかね。この国でここを知らん奴もおらんしな。そうだろう、そうだろう?」
「あ、はい、そうです」
「ここはプライダル商会といってね。侯爵令嬢が設立した店なのだよ。なので貴族と言えども下手ないさかいは起こせない。結果、庶民と同じように並ぶようになったわけだ。とはいえ、馬車で来る貴族もいるのだよ、だが彼らはわからんのだよ、こうして並ぶことで得られるモノがあるということに。心のゆとりが出る、庶民の生活が見える。他にもいろいろだ。ここに並ぶようになってからウチの領地から領主が話を聞くようになったと評判になってね」
まさかの自慢!?
ぺらぺらとしゃべりだした貴族様が止まらない。
話をしながら徐々に減っていく列を移動して、結局プライダル商店に消えていくまでずっと話を続けていた。
どうやら自慢することが好きな貴族だったらしい。
店を出てきたらまた話が始まりそうなので、俺は早々馬車に戻ってプライダル商店から離れることにした。
プライダル商店前で赤ら顔のおじさんが楽しそうにたい焼きを売っていたので、それだけはブルー共々買い込んでおいた。
たい焼きは俺の知ってる奴だったので、もしかしたら転生者がここにもいたのかもしれないな。
「いや、確実にいるだろ。ここが繁盛しているのも転生者がいるからだと思っていい。侯爵令嬢こそ店を創った奴らしいが、店の名は別の奴の苗字、店長はエルフで副店長は錬金術師らしい」
「なんでそんなコト知ってんだブルー?」
馬車に揺られながら、俺とブルーは御者台で話し合う。
たい焼きうめーっ。やっぱ餡子だよな。これが美味いんだよ。
ブルーの奴は尻尾から食べる派らしいな。俺は頭からなんだが、まぁどっちでもいい。
「お前が無駄話聞いてる間に他の客から聞いたんだよ。店の中じゃ蓄音機まで売ってるらしいぞ。音楽のディスクもあるし、羊羹、プリン、カステラ、クッキー。それから白いタオルに紙。羊皮紙しかないと思っていたがちゃんと木から作られた紙があるらしい」
「うっそだろ。転生か転移して成功した奴がいるってことか?」
「極めつけは錬金カレーだ。錬金術で作られたらしいが、この世界にはない食事らしい」
「それって……」
「副店長の錬金術師が怪しいな。まぁ今日はその辺りは放置だ。宿屋についても聞いておいた。冒険者ギルド近くにいい宿屋があるらしい。馬車も泊められるぞ」
「そ、そうか。俺がおっさんの無駄話聞いてる間に……」
「おかげで話のネタが出来て市民と会話がしやすかったよ。この町の状況についても聞いておいた」
「状況、って、あれか、子供が普通に出歩いてること」
「まぁそれもある」
ブルーたちの仕入れた情報によると、ライオネル王国では兵士により数年前闇組織の駆逐が行われたらしく、現在この国で生存している闇組織は二つ。アルケーニスとオルトロスファミリーしか存在していないらしい。
オルトロスファミリーはケロちゃん商店と繋がりがあるらしく細々と活動している反面、アルケーニスに所属している闇組織のメンバーは普通に町中を闊歩しているそうだ。
あの時路地裏から出てきた男もアルケーニス所属らしい。
闇組織は危険な組織、という認識のはずだが、この国においてのみ、子供が路地裏に来ないように見回りをしている子供の味方な闇組織らしい。なんだ、それ?
最近首領が変わったらしく、特に子供たちへの態度がさらに軟化したらしい。
時には兵士や冒険者と協力して市民のために働いたりもしているそうだ。
闇、組織だよな?
つまり、闇組織であるアルケーニスがこの国を根城にしている関係で他の闇組織がライオネル王国に居つくことがなく、また下手にやってくるとアルケーニスという暗殺請負組織を敵に回すということもあり、この国に他の闇組織が根付かない。
アルケーニスに関しても国との取り決めがあるらしく、この国でのみ暗殺業などは行わないそうで、子供たちの安全のために行動する見守れる大人として受け入れられていた。
闇組織よりも頭のおかしい一般市民の方に危険人物がいるとか、ほんとこの国いろいろおかしい。
闇組織なのにやってることが兵士たちが見回らないような路地裏の安全を見回っているとか、闇返上しろといいたくなるくらいだ。




