1262話、ロゼッタ、私の考えた最強装備の作り方
「来たんだよ?」
新しい学年に上がり、授業も一段落したころ、私はかねてより考えていたことを実行に移すことにした。
そう、より強い武器防具の作成だ。
という訳で、鍛冶屋さんへとやって来た。
「いや嬢ちゃん。来たんだよ? じゃねぇよ。俺らぁ今デスワワームの歯加工するだけでも手一杯だっつーの。それでもまだ頼む気か?」
「デスワワームって2000レベルとかその程度でしょ。もっと強い素材で武装を揃えておきたいのよ。兵士たちの装備一式、持ち込み素材での作成をお願い! 身軽にしてよね」
「いや、待て、さすがに待て。この素材だってすでに手一杯だっつーの」
ドワーフのおっさんが呆れた顔をしている。
けど知ってるんだよ私は。ここでの素材加工が今一番熱いって噂がドワーフ連中に流れてここ目指してやって来た加工好きのドワーフさんたちが沢山いるんでしょ。
一昨年加工設備の拡張工事泣きついてきたの知らないとは言わないんだよ。
数千人単位で加工が出来ちゃう鍛冶屋が欲しいっていうから鍛冶工場作ってあげたんだからね。
「いや、工場っつーかもう一つの街じゃねーか。周辺の奴らから鍛冶屋街とか呼ばれてんだぞ。ここら辺ドワーフだらけになっちまったじゃねーか」
「嬉しい癖にぃ」
一新されたお店は清潔感もあり、鍛冶屋って感じがしないくらいに小奇麗な店になっている。
おっちゃんも今までと違ってなんか小奇麗なイケオジみたいにみえてくるから不思議だ。
なんでも鍛冶研修に来ていた若い女性ドワーフに言い寄られて結婚したらしい。オメデトー。あと弟子に手をだしてんじゃねー、このエロ師匠。
「んで、新しい武装っつーが。あれ以上の素材が手に入ったのか?」
「ふっふっふ。気づいたのだよ私は」
と、アイテムボックスからデスワワームの歯を取り出す。
私の体とほぼ変わらない高さを持つ巨大な歯。
これを、抱きしめるようにして、圧縮ッ!
「そう、なければ作ればいいんだよ!!」
圧縮圧縮圧縮ゥ――――ッ!!
最大級に圧縮し、手のひらサイズに収まった究極硬物をおっちゃんに差し出す。
「どやぁ?」
「どんな握力っていうか腕力してるんだ嬢ちゃん……いや、それよりも、これ、どうやって加工しろと?」
「そういうと思ってこれだけは作っておいたんだよ。さすがに防具や武器は私が作ってもなんちゃって武器とかしかできないから仕上げは職人にお願いしたいんだよ。という訳で私がそれっぽく作った武器防具とノミやらハンマーの道具一式、デスワワームの歯を圧縮加工して作ってみました」
「用意がいいというか、なんというか……」
「あとこれ、粉状に砕いたデスワワームの圧縮加工歯。ノミとかに付けて使うと削りやすくなるんだよ」
「とりあえず、やり過ぎだバカ娘。はぁ……これでまた皆徹夜しちまうじゃねーか」
「お、おおぅ、それはごめん。一応仕事時間に関しては王国法変えて貰ったはずだけど……」
「阿呆ぅ徹夜するのは完全な趣味だ。ドワーフ舐めんな。そこに新素材があるならいろいろ試すに決まってんだろーが! ほれ、あるんだろ鉱石状にした奴が」
「へぇ、代官様こちらが山吹色のお菓子でございます」
「どこが山吹色だよ。黄金色に輝きすぎて怖いぞこの鉱石。というか、名前無しじゃーさすがに扱いにくいな。ロゼッタストーンとでも名付けとくか?」
「あー。その名前はあるかもしれないんで別の方が」
「ああん? しゃーねーな。名前はドワーフ仲間と相談するわ」
「よろしくなんだよ。あと、できるならこの武器たちの改造も……」
「新しく作るんじゃなく改造でいいのか?」
「このフォルムとか気に入ってるんだよ。いいよね焔揺らめく花の大剣」
「まぁ、そいつはそのまま取っときな。似たようなの造ってみる、それが出来てから入れ替え改造か、そのまま使うか考えてくれや」
「了解」
いやー、これで兵士たちの底上げも出来そうだ。
レベルがカンストまで行けるからいいんだけどそれ以上の伸びしろがないから不安だったんだよ。
最近さらに強くならないとダメな気がして仕方ないし。
これ以上強くなるってどうしたらいいんだろ。
脅威への対抗手段。他に何があるかな。
城を改築して罠を増設して、仲間を集いレベルを上げて武器を揃えた。
地も人も揃ったので後は天。運の要素だけなはずなんだけど……
あー、もぅ、不安で仕方ない。
OL時代でもここまで不安になったことはなかったんじゃないかな。ある程度自分が出張れば丸く収められたし、ダメだったとしても最低限やるべきこととやってはならないことを社員たちに教えて何とか乗り切ってきたつもりだ。
だからこれ以上は何もすることがないはずなんだけど……
なんでこう、不安なんだろう。




