1249話、ロゼッタ、王国内会議ティータイム
その日、ライオネル王国重役を集めた会議が開始されていた。
王族が使うはずの庭園に長机が一つ設置され、そこに数人のメンバーが集まっていた。
陛下がこのメンツなら辛気臭い会議室じゃなくこっちでよかろ。
とおっしゃったのでこちらでの開催になったのだ。
参加メンバーは陛下、王妃様、宰相閣下、サラディン、シェリー、エリオット殿下、マルチーナ様、エレオノーラ様、リオネル様、私、キーリ、市松ちゃん、エレイン、マリアネージュ。っていうかなんでエレインここにいるのマリア?
「なんか参加すべき気配がするとか言って走り出して……途中でリオネル様に会ったら一緒に行こうって」
「エレイン君がいうにはロゼッタの歯止め役だそうだから」
なぜエレインがそんな役目に?
「お前は歯止め役がいないと際限なくやらかすからな。リオネル王子は基本お前の理解者だ。歯止めにはならない。仕方ないから俺がやってやっているだけだ」
いらないよ、私ちゃんと自重できるし。
「それに、少し気になる話を聞いたしな」
と、エレインがリオネル様と視線を交わす。
うん? 二人なんか通じ合った顔しちゃって、まさかのボーイズラブですか?
だ、ダメよエレイン、リオネル様をそっちの道に連れ込まないで。
この場合、やっぱりエレインが攻め、いや、むしろエレインは受けの……はぅっ!?
「主はんどうしたん?」
キーリの呆れた声で我に返る。
あ、っぶねぇ、OL時代の負の遺産が目覚めるとこだった。
「さて、儂らの貴重な時間を奪っておいて何の話じゃね」
「あれ? 陛下は聞いておられないのですか?」
「ああ、どうせ聞かないだろうからと私だけで聞いておいた」
「儂、王様なんじゃけど?」
宰相閣下にむっと唸るが、宰相閣下は気にした様子もなく話を始める。
「まず、最初に上げる議題はマギアクロフトだ。今年の国際会議でも我が国にちょっかいを掛けてきた。それにロゼッタ嬢曰く、あそこがセレティアルス王国跡地だったらしい」
『それは確かに気になる話だな』
おっとコスタロカ王様参戦か。
私とキーリは彼の登場と同時に少し横に避けてスペースを空けておく。
案の定、私とキーリの間にコスタロカ王が座り込む。
「おおぅ。ヤマダ一世殿、突然来られては驚きますぞ」
『以後気を付けよう。それよりロゼッタ嬢、この霊体声帯器という魔道具はなかなか面白いな』
「ウチの錬金術師が作りました」
クラムサージュに聞いてみたらまさかのほんとに作って来たから私も驚いたよ。
念話だと魔力使うけど、この魔道具使えばリッチやらレイス系とも会話ができるようになるらしい。
ただ、レイス系は思考できるかどうかが不明なので会話にならないかもしれないけれど。
「して、コスタロカ王、これが現在の世界地図なのだが、セレティアルス王国はマギアクロフトで合っているのかな?」
『当時の世界地図がなかったのでなんともいえんが、そうだな。撤退で通った道を考えると、ここにセレティアルス王国が存在しても不思議ではない。それにセレティアルス王国地下に存在していたベヘモータがこの国の地下にいるのだろう? ならばここがセレティアルス王国跡かその近辺である可能性は高いだろう。ただし、我が国とこの国との関係性はあったとしてもライオネル王国との関係性はないと思うが?』
「それなのですが、ロゼッタ嬢による書物解析によると王位簒奪を行った初代ライオネル王は遠い昔のコスタロカ王族である可能性も捨てきれないといいますか」
『いや、それはない。コスタロカ王族の魔力があれば我が国が封を施したあの扉が反応している。今まで反応しなかったというならば、我が血の縁戚ではないということだ』
「そう、ですか。やはり我が祖先は外様だったのですな」
少しは血縁関係があれば親戚争いってことでライオネルはコスタロカの系譜と呼べたのにね。
「ではやはりマギアクロフトの主張は正しくない、ということですな」
「ただの侵略するための理由付けなんですし、そこまで詳しくなくてもいいんじゃないですかね」
「近いうちに攻めてくるのはほぼ確定、か」
「一応向こうの王子との会話からライオネルでの国際会議がある来年3月までは攻めない様子でした」
「会議でこちらの戦力配置を調べて襲ってくるつもりだろうな」
「ロゼッタ嬢、マギアクロフトと戦争になったとして、勝てるかな?」
「相手の戦力次第ですね。マギアクロフトが普通の兵士だけで攻め寄せてくるのであれば鎧袖一触かと。問題は魔道具による強化兵です。ザルツヴァッハの王弟がエルデンクロイツの策でマギアクロフトの強化薬を使われた折、際限なく強くなる化け物になりました。アレを自国で量産していた場合、我が兵士たちとも同等かそれ以上の実力を持つ軍が出来ている可能性は捨てきれません」
「むぅ……まさかそこまで厄介な相手だとは……」
「何かしらの妨害策は行っているか?」
「いえ、マギアクロフトの地脈を自国から引き寄せ地産地消させているくらいしか」
「お嬢、お言葉ですが、ウチの部下より危険なネズミの群れをマギアクロフトに送ったと聞いておりますが?」
と、話に加わってきたのは陛下の警護のために傍に立っていた近衛兵たちの代表ラインバッハ。
そういえばそんなこともしてたっけ。あいつらほんとにマギアクロフトに行ったのかなぁ?




