1243話、ロゼッタ、汚部屋の住人
部屋を開けた瞬間飛び出してきた虫たちを聖火で焼き尽くした私は、ドアの奥へと視線を向ける。
うぐ……これは、酷い。
「うわー。これ多分結界してなかったら激臭にのた打ち回ってるね」
―― 私入りたくない ――
「ウチもちょっと嫌や……あのあたり汚物飛び散っとらん?」
「はは、まさかぁ、う……いや、まさかねぇ」
アレはただちょっと茶色くなった何かなんだよ、か、カレーか何かかな、はは……
というか、これは酷いな。とりあえず魔法で汚物やら虫やらを集めて……プラズマ分解! からのー、風魔法で外に持ち運んでフライアウェイ、星になぁれっ。
「よし、これでとりあえず部屋には入れるわね」
「それでもなんか入りづらいオーラがあるんやけど」
「さすがにこの部屋に入るのは空に飛びながら、がいいかな?」
あ、市松ちゃん入ってこない!?
皆ちょっとだけ空に浮かんだ状態で部屋へと入る。
部屋は綺麗にはなってるけど壁には何かのシミがいくつも付いている。
王族の部屋なのに、何でこんなゴミ屋敷のゴミ撤去した状態くらいの部屋になってるんだ。
長年のゴミのせいで変な汁のシミとかが取り切れないんだよ。
そしてベッドの上に布団を引っ被って震える誰か。
布団の隙間からこちらを伺っているのが見える。
気のせいかな、化け物とか来るなとか聞こえる気がするんだよ。
「これ、完全に主はんに怯えとるんよ」
またまたぁ。私なんてか弱い女の子なんだよ。
恐れる訳がないじゃない。
「かよわい……?」
「女の子?」
え、あれ、リオネル様までなんで疑問符!?
ま、まぁともかく、布団を剥いで外に出せば任務完了。
そいやっ!
「ひ、ひぃぃぃぃっ!!」
えぇ……
「嘘やん……」
「これは……あー、外でてるね」
リオネル様は何かを言いかけ、紳士なのですぐにそっぽ向いて外へと出て行った。
なぜか? そりゃあ目の前にいたラトヴィール王女と思しき物体が服を着ていなかったからだ。
というか、元の体型の服が合わなくなったせいでしばらく下着で生活していたみたいだけど、洗濯もせず着替えもしなかったためか、その、肉に合わせて引っ張られてはち切れて体を隠す布としての役割を終えていたのである。
そして、一度見たときは綺麗なお姉さんだったラトヴィール王女、今は見るも無残な百貫デブ……げふんげふん。えっと、お太りに、じゃない、えーっと、ふくよかになられておりまする。
一体彼女に何があったんだ? さすがに丸々子豚になったメテオラを超えちゃってるとは思ってなかったんだよ。
「あ、あの、ラトヴィールさん?」
「ひぃぃぃぃっ」
あ、ダメだ。私が話しかけると怯えて会話にならない。
「主はんもリオネルはんと一緒にお留守番やなー、ウチが活躍する時が来るとは、長生きするもんやねー」
「うぅ、キーリ頼んだ」
ラトヴィールとの会話はキーリに任せることにした。
邪神だけどキーリは人の心を理解する凄く優秀な邪神ちゃんなので心のケアもしてくるはずだ。
しかし、どうすっかなぁ。
アレを王様の前にお出ししてもラトヴィール王女だと認識してくれないんじゃなかろうか?
となると……やはり、強制レベリングしかありますまい。
強制レベリング仲間は三人か。ま、それはそれでよかろう。
「ロゼ、悪い顔してるよ。レベリングする気でしょ」
「な、ななななぜそれを!?」
「ふふ、やっぱり、敵国の人なのにレベリングしてあげようなんて、ロゼは優しいね」
「そ、そんなことありません。私は別に彼女のためにやるわけではなく、今の彼女を帝王の前に連れ出しても本人だと理解してくれない可能性があるので、容姿だけでも戻そうと思っただけです」
「ふふ、そういうことにしておくよ」
リオネル様が良い方向に勘違いされてるんでそのままでいて貰おう。
リオネル様が思うほど私は良い子ではないんだよ?
リオネル様ならそれでもロゼは良い子だ、とか言いそうだけどさぁ。
もうちょっと疑ってかかろうよ。いや、疑われたくないけど。
あああ、恋人との会話って何すればいいんだ、ちょっとキーリ、間が持ちません、何を言えばいいか教えてぇ!!
―― すまぬ、私も無理矢理襲われた経験はあるけど恋人とデートとかした経験はないので ――
ですよねー。
愛する人がいれば呪物になんてなってないよね。
はは、どうしよう、会話内容は色々あるんだろうけどぜんっぜんでてこない。
「どうしたのロゼ?」
「あー、えっと……」
―― ただ緊張してるだけよー、妬けるわねー ――
「そうなの? ロゼでも緊張するんだね。そんなにラトヴィール王女がああなった理由知るのが怖いの?」
違う、そうじゃない。




