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1231話、ロゼッタ、私から提示できるもの

「ラインバッハ、言ったでしょ。私がオスカーの人生を決めたりはしないって。でも……すでにオスカー、私の言葉に悩んで辞めるといってるんだよねぇ」


「お嬢、俺は別にお嬢の言葉だけで決めたわけじゃ……」


 はいはい、わかってますよ。それでも責任の一端があるというのなら、口を出さないという訳にもいかないでしょう。


「ともかく、責任の一端が私にあると分かったので、こうしなさい、ああしなさい、とは言わないけれど。提示だけはしてあげる」


「提示?」


 うわ、一斉に顔上げて私見ないでよ、ちょっと圧が凄いからっ。


「まず前提条件を把握しましょう。ラインバッハたちはオスカーに近衛騎士団にいてほしい」


「はいっ! その通りです」


「で、オスカーとしては、近衛騎士団隊長としてやっていくにはミスしすぎているから職を辞したい」


「ベルゼガリス隊長にあれだけ啖呵を切っておいて、守れなかったのです、俺は辞するべきでしょう」


「それで、辞めた後は決まってないのよね?」


「それは……はい、諸国漫遊でもしようかと思っております」


 諸国漫遊、ねぇ。


「まぁ、オスカーの自分探しの旅は置いといて、いくつか提示してみるけど、私が提示したものがすべてじゃないわオスカー、最終的に決めるのは、やっぱりあなた自身よ」


「心得てます」


 ほとんど覚悟は決まってる、といった様子のオスカー、献策はするけど用いられるかどうかは不明、全部いらないと突っぱねてしまう可能性だってある。


「まず一つ目。次の就職が決まるまで近衛騎士団長を続ける」


「さすがにそれは……」


「そうですお嬢、それだと先に延びただけで辞めるのは確定じゃないですか」


「だから、私はこうしなさい、とはいわないんだよ。あくまで可能性の提示だからね」


 ちゃんと聞きなさい、まったくもう。


「二つ目。職を辞して国内で仕事を探す。この際市民街でも働き口は沢山よ?」


「市民街ですか……」


 それは考えてなかったな、と言った顔のオスカー。

 何も仕事辞めたら国を出て行かないといけない、ってわけじゃないからね。


「三つ目、職を辞して城内の内政に勤務する」


「さすがに、王城内では居場所がないかと」


「四つ目、職を辞して地方都市を回って防衛団の訓練を行う」


「って、さっきから隊長が職を辞することばっかりじゃないですか」


「俺の向かうべき道だからな、職を辞するのはほぼ確定だ。その先をどうするか、お嬢が示してくださっている可能性はそういうことだろう」


 違わい。可能性は何も職を辞するだけじゃないんだよ。


「五つ目、学園で先生になる」


「学園、といえばお嬢のいらっしゃる学園ですか。体育教師辺りは俺でも出来そうだが……」


 何言ってんの、一般教養覚えてるから五教科とかでも十分教えられるんだよ。


「六つ目、諸国漫遊世直し旅」


「世直し旅とは……?」


「七つ目、世捨て人となり人々との交流を一切断つ」


 確かにそういう未来もありかも、とか納得し始めるオスカー。

 ラインバッハが泣きそうだ。


「八つ目、職は辞してもたまに訓練所に顔をだす。指南役でもいいわよ」


「なるほど、辞めたとしてもここに来ないという選択肢だけではなく来てもいい選択肢もある、ということですね」


「皆、貴方と一緒に居たいのよ。だから、九つ目。隊長職をラインバッハに譲って近衛兵として居残る」


「ッ!?」


 目を見開くオスカー。

 やっぱり、視野狭窄で隊長を辞めないといけないから近衛騎士も辞めないといけない、とか思ってたんだろうね。


「降格処分も十分すぎる罰でしょう? 近衛兵士となってまた一から自分を鍛え直す。自分が納得できるまで平兵士として鍛錬を積み、また上を目指してみるのもいいでしょう。どうせ隊長を辞さないといけないから近衛騎士でもいられないとか思ってたんでしょうけど、こういう可能性も捨ててはだめよ」


「そう……ですね。居残ることによる各大臣からの蔑みはある、部下だったものに指図されるようになる。はは、十分すぎる俺への罰だ。ああ……そうか。もう近衛騎士ではいられないと思っていたが……降格か。そういう選択も……あるのか」


「最後に十個目。職を辞して家族のために生きる。そういう選択も、あるんだよ」


 まぁ最後のは蛇足だね。

 すでに考え込んでいるオスカー。

 ラインバッハたちも気にはなるだろうが、オスカーの決断をハラハラと見守っている。


 しばしの瞑目。

 誰も彼もがオスカーを見つめ、沈黙が部屋に充満する。

 ゆっくりと、オスカーは目を開いた。


「お嬢。俺は、ずっと近衛騎士団長を辞するなら、ここには居るべきじゃない、そう思ってました」


「……そう」


 オスカーは真面目過ぎるのよ。

 真面目だから自分が許せなくて、仲間との板挟みになって、それでも頑固に自らを傷つける選択をしようとしていた。

 でも、本当はきっと、皆と一緒に使命を果たしたいと思っているんだろう。

 だから……


「恥を忍んで、お願いします。俺を降格してください。やっぱり、俺は近衛騎士でいたい、ですっ」


 椅子から立ち上がったオスカーは、ラインバッハの隣にしゃがみ、彼と同じように、私に向かって土下座した。いや、待って、なんでそうなるっ!? やめて、皆揃って土下座してこないでッ!?

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― 新着の感想 ―
[一言] まぁ、ラインバッハさんの方が名前的には大物っぽいしありか。。。うむ 初回時からちょっと、思ってたこと
[一言] 軍司令官はお嬢なのだから、人事について土下座して頼む先としては間違ってないんだよ。たから焦らなくても大丈夫っすよ、お嬢
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