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1222話、ロゼッタ、つかの間の邂逅

「ぐぅ。悔しいけど効果的だわ……」


 なんだか正気を失ったようにゆらゆら揺れながらローディアルアが去っていく。

 結局何しに来たんだっけあいつ?

 まぁ満足して帰っていくならいいか。


 しかし、なんだったんだろうね。

 彼女は私に何を求めて近づいてきたのか、結局わからなかったんだよ。

 聖女なわけだし待っていた小国の王たちが話をしに向かっているからもうこっちにやってくることはないだろうけども。理由くらい、聞いとけばよかったかなぁ。


「失礼、お話ししても、いいですか?」


「あら、ごきげんよう」


 声がかかったのでそちらに振り向く。

 にこやかな笑みの青年がそこにいた。

 こいつは……マギアクロフトの王子?


「初めましてで、いいかな。会議では何度か言葉も交わしたけれど、こうして対面するのは確か初めてだったと思うんだ」


「ええ、確かにそのようですわね。初めまして、ライオネル王国総司令官、ロゼッタ・ベルングシュタットと申します」


「おっとレディに先に自己紹介させてしまったようだ。すまない。マギアクロフト殿下ヨーデリヒ・マギアクロフトだよ。よろしく」


 殿下? 確かまだ王子の……いや、この議会中に彼が次の王になることがマギアクロフト内部で決まったということね。


「ライオネルの竜滅姫に一度会ってみたいと思っていてね」


「まぁ、私などそこいらにいる侯爵令嬢と同じですわよ、殿下がお気になさるほどではございませんわ」


「いやいや、充分気にする者だよ、何しろライオネル第三王子の婚約者なのだからね。それに加え君の役職はとても多い。顔を繋いでおいて損はないのさ」


「それほどのこともないとは思いますが、ところで殿下、婚約者様はお連れでないのですか? まさかあちらの近衛騎士に腕を組んでいるご令嬢ではございませんわよね?」


「ん? ああ、ペルグリッドかい。アレはただの女狐さ、正直我が国に身を寄せてきていい迷惑だよ、ウチの精鋭を取り込もうとしているからね。父はアレをお気に入りらしいがね」


「ファーガレアの元王女ですもの。見栄えも良ければ顔も良し、王族としては気に入らない方がおかしいですわ」


「なるほど、それを踏まえると僕は異常なのだろうね、この年で婚約者すらいないんだ。どうかな、ライオネルで余っているご令嬢はいないかい?」


「マギアクロフトの殿下ともなればさすがに引く手あまたでございましょう。我が国の余り者など求めるべきではございませんよ」


「そうかな? 例えばあちらのキーリ嬢とか、ふさわしいと思うのだけど」


 ニィと一瞬鋭い視線を細めるヨーデリヒ。こいつキーリが邪神と知りながら嫁に欲しいとな。


「はは、ご冗談を。ところで殿下、予言の獣について話されていたようですが」


 誰がキーリをやるもんか。一千万年早いわ。出直してきな坊主。


「ああ、それがどうしたんだい?」


「どこでそのようなモノをお知りになったのです?」


「我が国は滅亡した国の上に建国された国なのさ。セレティアルス王国という古代文明の上にね」


「あらまぁ、そうなのですか」


 ん? それってつまり、コスタロカはセレティアルス王国の姫の血が流れているわけだから、ライオネル王国ってつまり、マギアクロフトの兄弟国家!? ウソでしょ!?

 あ、でもライオネルは先代国家を虐殺して乗っ取った国だから兄弟国家ではないか。

 意外な繋がりがあったわけか。


「ふふ、つまりライオネルとマギアクロフトは遠い親戚といったところなのさ」


 いえ、むしろその遠い親戚を殺して家を乗っ取ってる赤の他人ではないかと。言わないけど。

 あれ、そう考えるとライオネルって意外と血生臭い凶悪国家じゃない?

 い、いやいや、今の国としては関係ない話だし。

 うん、も、問題無し、問題ないわよね。きっと。


「だからね、僕たちは仲良くできると思うんだ」


 なんだろうね。このあからさま過ぎる胡散臭さは?

 相手はどう考えても仲良くする気ゼロなのが分かっているのに、そいつから仲良くしようとか言葉が出てくるのがね、もう。


「そうですわね。お互い国を侵略しない仲でいられるとよいと思いますわ」


「おや、これは手厳しい」


 こういう場合は変に回りくどく言うより直で言って釘を刺す方がいいだろうね。


「僕はずっと思ってるんだ。マギアクロフトもライオネルも元は一つの国だった。ならばきっと、また一つに戻れると、ね」


 それって侵略してマギアクロフトにするぞ宣言じゃね?

 ロゼッタはいぶかしんだ。ってくらいに不穏な発言なんですが。


「では、来年のライオネル訪問、僕も楽しみにしているよ。君の国がどれほど栄えているのか、本当に楽しみにね」


 あー、これ、来年戦力分析して弱そうなら侵略するよってことかなぁ。

 どうするかね。兵士たちの実力見せつけるか、あるいは過小評価させて侵略してきたのを返り討ちしちゃうか。

 問題はあの強化人間なんだよね。皆の話だと時間が経つほど強化されていくらしいし。

 それに不穏なのが……双子神。

 アルマティエやサクリファの話じゃ兄神が私を殺す殺す言ってるらしい。

 つまり、私は神様にとって憎い相手。それを殺そうとしているマギアクロフトに、何かしら肩入れしてる可能性は否定できない。

 

 ダメね。もっと、もっと皆を強くしないと。でも肉体的な能力はすでに限界値だ。

 あとできるのは……武具かしら?

 神相手すら対応可能な武器、造る素材があるかどうかがキモになりそうね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「遠い親戚ということさ」 「つまり赤の他人という事ですね」 とお嬢なら言うと思ったのじゃ。
[良い点] 兄神から殺意を知っちゃっているって、ロゼッタ様の神殺しが待ったなしで草
[一言] 武器強化のフラグ入りましたー! 来年も波乱万丈そうで何よりです!
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