1218話、ロゼッタ、国際会議三日目
「本日の最初の議題はアルカエスオロゥ政変についてだ。今のアルカエスオロゥは随分と国力を落としたようだが、今まで支援していたナゲキノカルマ国をどうするか、最高司祭殿の意見をお聞きしたい」
ルギアスさんが司会進行を行うとスムーズに話が進むなぁ。
本日はマギアクロフト王がだんまりなので今までより進みがいい。
ただ、今日に限って王子君と騎士団長と思しき仮面の男がいる。
どう見てもガイウスなんだけど、違う誰かさんらしい。
前回彼について別人ということになってしまったので、ツッコミは入れないようにしないといけない。
「ナゲキノカルマに支援をしていたのは前最高司祭だ。我が国としては自国を優先するため今後ナゲキノカルマへの支援は打ち切らせて貰いたい」
「やはり、ここ最近物資が満足に届かないと思ってましたが、そのせいですか」
ため息を吐いたのはリズリンド女王。
メイドから王族教育無しにこんな危険地帯にやってきたナゲキノカルマの若き女王である。
とはいえ、彼女もアルカエスオロゥからの支援はあまり期待していないようだ。
「我が国も支援される側なのでとやかくは言えんのだが、ナゲキノカルマ国はこれでもうどこからの支援も期待できない、ということでよろしいか?」
ルギアスさんの言葉に誰も答えられない。
今まで何度か支援は行っていたのだ。
しかし、私が国際会議出るようになる前からずっとナゲキノカルマは国としての態を成しておらず、皆支援疲れで一国、また一国と支援を打ち切ってしまっていた。
結果、アルカエスオロゥだけが支援を続けていたのだが、此度の政変を機にこれもまた打ち切りとなったのである。
そうなると、困るのはナゲキノカルマ国である。
何しろ今まで支援でぎりぎり保っていた国に支援がなくなるのだ。
「ナゲキノカルマ国からの意見です。我が国はライオネルのおかげで田畑の作成、上下水道の完備までは行われました。これにより今までとは生活基盤がかなり変わっております。ただ、田畑の使い方を知るモノがおらず、飲み水とわずかな支援物資で生きながらえている状況です。改善の兆しはあるのです。あと一年、いえ、半年でも支援があれば……」
だが、どこからも支援の声は出てこない。
こりゃ、私が直接指導しに行くしかないかなぁ。
せっかくマギアクロフトの悪事から救ったのに復活手前で力尽きるのはさすがに可哀想すぎる。
「ふむ。つまり必要なのは農業従事者と半年分の食糧だな」
「は、はい、そうですが……あなたは確か……」
「失礼。見学だけのつもりだったが、手を差し伸べられる状況であるのでね。我がマクレガー魔王国が支援をしよう。魔族ではあるが農業に従事している者を数人派遣する。人間食になるもので魔族領では使い道のない作物もいくつかあるのだ。そちらを支援物資として送らせて貰おう」
「なるほど、それは面白いな。では我がフリージア魔王国からも支援を送ろう」
「そうなると、余の国のみ名乗りを上げぬ、という訳にも行くまい。キュクロクロスも支援しよう」
おおぅ、ボーエン先生を筆頭にまさかの魔王国が支援を買って出た。
人族領の国々は驚き慌て、待て待て、と割って入る。
「何も支援しないとは言っておらんだろう。人間国の領地を魔族に救われたとあってはさすがに外聞も悪い。支援に関しては我々が少しずつ出し合う形で支援しよう。魔族領の皆様方によるご厚意は受けるとして、どうか我々の顔を立てさせてくれ」
慌てた中級国家が支援を申し出ると、他の国々も追随し始めた。
彼らとて支援物資を出すことを渋っているわけではない。
一国一国少しずつであれば支援するのもやぶさかではないのだ。
ただ、自国のみで支援する可能性があるというのが二の足を踏む原因になっているだけである。
「ふむ、まぁ人族で支援が行われるというのならば、任せるとするか」
「それがよさそうで」
「余は別に支援してもよいのだが……まぁよいか阿呆ばかり送っても迷惑になるだけだろうしな」
今のは別に言わなくていいことだよねキリハ、なんか演技のし過ぎで本当にそういう性格になってきてる兆候でてない? 気のせい?
「ではナゲキノカルマ国に関しては各国少量の支援を行うことで。どこがどう支援するかは四日目に回そう。夜会で各自相談してくれ」
ふむ。ライオネルからは何の支援しようかね。
まぁ食料品の支援でいいか。
「次に中立地帯であったプライジャコリャを攻め滅ぼした件についてウラギ国当主リーマス・ウラギ。話して貰えるか?」
「そ、それは義理の兄が行ったことでですね、イール兄上はその戦争で死亡しましたので、その、理由はわかっておりません。一応我が国が戦争に勝利したことと、プライジャコリャの王が死亡済みであることを鑑みまして、不承私めが両国の統一王として運営を取り仕切っておりましてですね。正直いい迷惑なので、出来ればプライジャコリャの運営はプライジャコリャ家の王族にお任せしたいのですが」
「それについて、サイエンスフィアから報告させて貰おう。事態を聞いてマギアクロフトの使節団と我が国の使節団が確認に向かったのだが、プライジャコリャの王族は全滅していた。幸い、国産牛などの肉類に関してのノウハウは市民の方で受け継がれていたので問題はないが、プライジャコリャ国は実質滅亡したと思っていいだろう」
つまりまぁ、現状維持なわけか。頑張れリーマス君。




