1217話、ヨーデリヒ、これは困った
SIDE:ヨーデリヒ・マギアクロフト
「……と、言った感じだったぞ」
父が本日の会議と夜会であった出来事を語り終える。
僕はふむ、と唸りながら横目でガイウスを見る。
今日も顔を変えて付いてきていた彼は、隣にペルグリッドという女を侍らせ上機嫌だ。
あんな得体の知れない女狐を傍に置くなんてどうかしていると思う、思うけれどそれで彼が扱いやすくなるのなら願ったりだ。
あの女狐の目的もライオネルにいる思い人を手に入れるというものらしいのでライオネル憎しという一点において僕は彼女と共闘できると踏んでいる。
しかし、天然の誑しは怖いね。
彼女の部隊を見たけど誰も彼もがあの女を崇拝して聖女とか女神とか抜かしてやがる。
どう見ても男好きのエロ女なだけだと思うんだが。
ほんと、アレの毒牙にやられたら彼女の私兵となり文字通り死に物狂いで相手を殺しに行くんだろう。
自分の命を糧に手に入れるのは、わずかばかりの彼女からの称賛。そう、称賛だけだ。
頑張ったとかよくやった。それだけを聞くためだけに敵陣に突撃して手足を失ってでも目的をこなして帰ってくる。
忠実すぎる男たちの群れが彼女の力だ。
ガイウスも最初は毛嫌いしていたし警戒していたのだ。
だが、美女ということもあり、欲望には抗えなかった。
結果、彼女は俺の物、扱いを始めるようになってもう数か月となる。
残念ながら立場が逆転するのもそろそろだろう。
あとはペルグリッドのために動く忠実な王子様の完成、という訳だ。
僕としてはちゃんとライオネルと戦える人材でさえあれば問題はないから、ペルグリッドに落とされるかどうかはどうでもいいけどね。
しかし、ライオネルか……この戦力で攻め落とせるかと思ってたけど、どうにもまだ何か必要そうだな。
ペルグリッドが放ったらしい自慢の暗殺者も全員捕まったらしいし。
国王暗殺くらいはしておくつもりだったと言っていたのだが、それだけ優秀な存在がライオネルに存在すると思っていいのか。悔しいが、ペルグリッドの集めた精鋭は僕の用意した精鋭よりも初期値が強い。それが敗北したのだから、まだ機ではないと思っていいのだろう。
来年のライオネル主催の国際会議まで待つか。敵情視察を終えてからの方がよさそうだな。
そうなると、今回ライオネルから周辺国を離反させようという父の作戦は裏目だったな。
まぁいい。あと一年待てばいいだけだ。
それよりも問題だ。
どうも聞いた話だけどナゲキノカルマを奴らが助けたとか?
さらにエグエールとの通行解除?
あそこには黙示録の獣がいたはずだ。
それにコスタロカがライオネル。セレティアルス王国の生き残りがコスタロカ、か。
参ったな。まさかそこからセレティアルス王国に辿り着く国がいるとは想定外だった。
ほんと、我が国の地下に存在していた滅亡国家に生き残りがいたなんてな。
「……ヨーデリヒ、聞いているのか!」
「おっと、父上、どうしました?」
「また、黙考か。お前の悪い癖だぞ。深く考えすぎだ」
「そうだぞヨーデリヒ、考え中に暗殺者が来たらどうする」
そもそも自室に来ている時点で詰んでるよガイウス。
でも、確かに周辺に気を配らなくなるのは悪い癖だな。
最悪でも会話に反応できるくらいの余分は残さないと。
「それで、父上、何を言っておりましたか?」
「うむ。今回ライオネル周辺を切り崩そうとしたが、上手く行かなかった。明日以降もおそらくこのままになるだろう。あの王はのらりくらりと言い逃れるのが上手い、それに加えて宰相だ。あの二人だけでも鉄壁なのに、さらにロゼッタ、あの小娘のせいで暗殺すらできておらん」
そういえば父上は今回の野営に紛れてライオネル王を殺そうとしていたな。
無駄だからやめておけと言ったのに。
「でも、ライオネルが鉄壁なのは同意しますよー。ほんと私もあの無駄に優秀な兵士たちのせいで大切なお友達が沢山いなくなってしまったもの」
「ペルグリッドの友人を殺すなど、許せん所業だな」
「ホントです。まったくもう。ガイウス様ぁ、仇を討ってくださいまし」
「任せろ、強化された俺の部下を使えば奴らなんぞ一ひねりだ」
そんなに簡単に行くわけないだろ単細胞め。
しかし、黙示録の獣がすでに二つ。僕が飼っているベヘモータだけしか残ってないか。仕方ない。こいつはもう少し強くしたかったけど、来年の襲撃に合わせるように調整するしかないな。
地脈からの魔力をもう少し増やすか。
面倒だけどペルグリッドの配下も強化してやった方がいいかな。
どうせだしあの強化法でも使おうか。人間としては戻れなくなるけど、別にあいつの配下だし死んでも問題はないだろ。
「あ、そうですそうです。せっかくですから父上、明日からは僕も会議に参加しますよ」
「本気か?」
せっかくだ、いろいろひっかきまわしてくれているご令嬢に、一度くらいは挨拶しないとね。




