121話・ロゼッタ、もはや隠すものはなにもなし、はっちゃけても、いいんだよ?
私は秘密にしていた何もかもをこの際全部白状した。
さすがにボーエン先生が魔族っていう秘密は彼の秘密なので暴露しなかったけど、この世界がゲームの世界に似てる事、前世の私が毒殺されたこと、リオネッタがゲームの最後で華麗に裏切ってくれること、ヒロインちゃんの出現と徐々に馬脚を現す悪役令嬢ロゼッタ。
そして断罪のバッドエンド。
聞いたお父様が未来のことなのにロゼぇっと号泣してしまったり、僕、物語始まる前に死んでるんだ……とリオネル様が憂鬱そうな顔してたりしたけど、一先ず秘密にしていたことは全て話した。
リオネル様の暗殺を阻止するために、そして悪役令嬢として断罪されたとしても手に職を付けて後の生活に困らないように冒険者をし始めたこと、ゆくゆくは商店を構えて自分の居場所を確保したいことも告げた。
お父様もそう言うことならと涙を飲んで了承してくれた。
むしろ泣いてたのは未来の悪役令嬢ロゼッタが断罪されたことに対する愛娘の死にざまを知らされた悲しみの方が大きそうだったけど。
ふはー。なんか肩の荷が下りた気分だよ。
「じゃあ、ロゼッタが最近怪しい動きし始めたのって……」
「怪しくないんだよ。運動とか前世で覚えてた剣術とか科学知識で補強した魔法の作成とかがんばってたんだよ!?」
「あの日から大人びた雰囲気だったのは前世の40年分の記憶を思い出したから、か。うぅむ。ロゼッタとして生きた8年と前世40年、前世の人格が大きく作用するのは必然か……しかし、これからロゼにどう接すれば……」
「お父様、やはり、態度が変わってしまうのですか?」
「っ!? そ、それは……ロゼは、いいのか? 私はお前の記憶からすれば若造になるのだぞ? そんな男が親の顔をしていて、何とも思わんのか?」
「だって、私はロゼッタだもの。寛子さん? 既に死んだ人なんだよ?」
「義父上、ロゼッタにはロゼッタの記憶もあるんだ。貴方がロゼッタの生みの親である以上、いや、それ以前に、今までそのロゼッタは貴方に対してどう接していたか考えれば、接し方など分かるだろう」
「リオネル王子……ロゼは……ずっと、私をお父様と……そうか、そうだっ。今までも前もずっと、私の事をお父様と、むしろ頭を打つ前よりも私に話しかけてくれていた。食事の時だって私やパンナに日々にあったことを楽しそうに語って聞かせてくれた。ああ、ロゼはロゼだ。まごうこと無き我が娘。すまんロゼぇっ」
感極まったお父様は立ち上がると、私に向かって突撃。逃げる暇も無く抱きしめられてくるくる回って高い高いされる。
いや、ちょ、なにこれ? なにこれぇ!?
「ははははは。なんだ。気に病むことなどないではないか。ロゼ。これからも、私を父と呼んでくるか?」
「は、はい、お父様はお父様ですもの、で、でも、回り過ぎですお父様ぁっ」
「ふははははは。私は父だ。ロゼの父だァ! はーっはっはっは。愛してるよ、ロゼッタァ――――ッ!!」
ぎゃー、回転速度が徐々に上がってるーっ!?
「義父上、その辺にしておかないとロゼッタが吐くぞ」
「っ!? すまん、舞い上がり過ぎた」
お父様、うすうす感じてたけどやっぱり親馬鹿だった!?
すっごいロゼッタ好きじゃない。
っていうか本当に危うく吐くところだった。
うぅ、目が回るぅー。
くるくるくるんと廻りながらソファに座り込む。
我ながらうまく座れたと思ったんだけど、足にタコ触手が絡みついていた。
どうやら妹様に誘導されたようだ。
「なんとか、落ち付いた」
お父様が凄くうきうき状態なんだよ。
「そ、それじゃあ、最後に、今までやったこと、そう、ロゼッタが行った未来のための行動を教えてくれるかな?」
「未来への行動? えーっと、運動を始めたんだよ。最初は走り込みからで……」
少しずつ増やしていって、現代ダンスに抜刀術に、ボルダリングも取り入れたかな?
それから魔法もいろいろ楽しいんだよ? 日々新しい魔法使えるようになるし、ボーエン先生と楽しく新魔法開発しちゃうんだよ。あと、ボーエン先生に使える魔法の限界見せろって言われたから魔法使ったら遠くの山が一つ消し飛んだんだけど、あ、これは秘密だったんだよ。忘れてくれると嬉しいな。
それで、冒険者登録して新魔法の反射結界纏って邪神の洞窟覗きに行ったんだよ。ゲームではあること自体知らなかったからどんなのか興味あったし、結界が使えるかのテストもしたかったんだよ。結果はオルトロスさんが可哀想になったんだよ。念のために展開した十連反射結界が最初の爪攻撃を十倍返しだァ! だったんだよ。ひどいな。
道中の魔物がノーダメ攻略出来たからそのまま探索して、途中で面倒になったから最下層まで直通させてショートカット。そこで邪神ちゃんことキーリをテイミング。
「え? キーリさんって、邪神なの!?」
そういえばリオネル様には告げてなかったんだよ。
「意外と話の分かる邪神だぞ? お菓子与えとけば大人しいし私の話もロゼ共々ちゃんと聞いてくれるし。ダンスとかも覚えようとしているし」
「人間の生活もおもろいんよぉ。主様の周辺は見てるだけでも楽しいし」
「……はぁ、なんか、ロゼッタ知らない間に凄いことになってるね。邪神洞窟単独走破かぁ。釣り合う婚約者に、なれるかなぁ」
虚空を見上げて力無く告げるリオネル様に、お父様が同じように虚空を見上げる。
なんで二人揃って魂抜けたような顔しちゃうのかな? かな?