1200話、ブルー、そこまで大事なのか!?
SIDE:フロスティックブルー
ギルド長ベントレと会ってから数日、俺たちパーティーはファーガレア王国内を馬車で移動し、王都へとやって来ていた。
その理由はと言えば、俺たちがエグエール王国から船でやって来たから、ということが理由らしい。
そこまで大事なのか、と思うのだが、大事なのだろう。
何しろ、ギルド長も驚いていたが、海の境界は必ず事故を起こすものだったらしいのだ。
どのような航路を取ろうとも、必ず船が破壊され、沈没する。
なのに俺たちはその境界を越えてきてしまった。
無事に通れる航路が見つかったのだ。
それは、長い年月通行手段が存在しなかった幻の王国と国交を結べるチャンスだということである。
なので、国王陛下に報告してほしい、と言われてしまい、こうして王都までやってきたという訳だ。
事前に国王には連絡が付いているそうなので、ファーガレア王と会うことになっている。
そう、ファーガレア王だ。スグニマケイル王ではない。
なんでも数年前にファーガレア王が立ち上がり、瞬く間にスグニマケイルを滅ぼし、周辺国を吸収して一大国家を築き上げたのだとか。
もともとファーガレア自体は存在していたのだが、数年前に滅んだらしい。
その亡国の王女と現国王が再起して興したのが新しいファーガレア。新生ファーガレア王国と呼ばれているらしい。
ただ、亡国の王女は国王と袂を別ったらしく、今はいないそうだ。
それ、もうファーガレアじゃないのでは? 別の国名にした方がいいと思うんだが俺の気のせいだろうか?
「次、入れ!」
すでに王城、謁見の間前の通路で待ち望んでいた俺たちの番となったらしい。
観音扉が兵士たちにより開かれて行きレッドカーペットの先に椅子に座った男女が見えた。
さらにその周囲に佇む女性女性女性。なんで女性が多いんだここは。
これ、まさかハーレム王か!?
ともかく、俺たちはエグエールで培った王族との謁見方法をなぞるように、前へと進み、国王の前で立ったまま礼をする。
臣下になっていないのでひざまづいての礼は取る必要はないのだ。
国王からも何の不平もこないので今まで通りの方法で問題はなさそうだ。
「よい、面を上げよ」
顔を上げ、相手の顔をようやくしっかりと見る。
随分と若い男だな。
あと王妃かな? 隣の女性は随分と場違いな様子で落ち着きが見られない。
「其方たちがエグエールから来た者でいいのか?」
「はい、エグエールより参りました。フロスティックブルーと名乗っております」
「フロスティックブルーって、戦隊ヒーローかよ」
ん? あの女、まさか……
「ミリア、どうした?」
「え? あ、なんでもなくってよ、おほほほほ」
凄くぎこちないなあの王妃。王族に慣れてない様子だ。
明らかに一般人から王族になってしまったタイプの人間だろう。
それこそ……転生者とか。
「あんた、転生者か!」
「バッ、レッド! 謁見中だぞっ!!」
「あっ」
慌てて口を両手で塞ぐレッド。
すでに言葉は出てしまっているから遅すぎる。
「あ、あら、なになに、もしかしてあんたたちも転生者なの?」
ん? 隠しているんじゃなかったのか?
俺は困った顔で国王に視線を向ける。
「あー、そうなのか。じゃあ堅苦しい話はここまでにしようか。せっかくだ。良ければ奥の部屋で話さないかい?」
「え? いや、ですが……」
「僕もね、転生者なんだ。君たちの話、良かったら聞かせてくれないかな?」
柔和な顔で告げた国王に毒気を抜かれる。
ウソだろ……エグエールではめったに見かけることがなかった転生者が、二人も揃ってるのか……
国王が率先して案内を始めるので、俺たちは応接間向けてついていくことになった。
移動しながらも国王が人懐っこい笑みを浮かべて話を続けてくる。
「僕はファーガレアの野望に出てくる主人公ジームベルクに転生したんだ。彼女はライオネルの姫巫女の主人公ミリアに転生したらしいんだけど、君たちは何のゲームに転生したんだい?」
ゲーム?
俺とレッドは思わず顔を見合わせる。
リーリルとクエリスはわかっていない様子だな。
俺が反応見せるしかなさそうだ。
「申し訳ありませんが、俺とレッドは異世界転移なのです。もともと向こうの世界では戦隊ヒーローをしていたので、転生ではありません」
「そうなのかい。ああ、王族だからって畏まった言い方しなくていいよ、同じ日本人……ミリア、戦隊ヒーローって日本に居たっけ?」
「えぇ? いや……特撮の中の世界でしょ? ヒーローショーやってた人?」
「いや? 俺たちは普通に悪の秘密結社と戦ってたヒーローだけど?」
皆して小首を傾げ合い、ハテナマークを浮かべ合う。
これ、まさかとは思うが……別世界からの転生者なのか?
「と、ともかく、ここが応接間だ。どうぞ楽にしてくれ。メイドたちがお茶を用意するからそちらのお嬢さん方もくつろいでくれていいよ」
そう、だな。ひとまず考えを纏めたいし、一服してから話をするか。




