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1199話、レッド、ここはどこ?

SIDE:バーニングレッド


 ウミネコが飛び交う波止場。船から降りた俺たちは、ただただ茫然と港町を見るしかなかった。

 本当に、国があった。

 正直眉唾物だと思ってたんだ。


「ここが、スグニマケイルか」


「と、とりあえずどうしよう。どうしたらいい?」


「そうだな……そこの方ちょっといいだろうか?」


 率先するように動いたブルーが船乗りの一人に尋ねる。

 しかし、凄いな。

 漁村ではなく町だ。

 つまりエグエール王国並みに栄えている国が存在するのだ。


「ありがとうございます」


 笑顔を貼りつかせたブルーが礼を言って船乗りと別れる。


「皆、ひとまず移動しよう。船はレッド、アイテムボックスに入れておいてくれ」


「わかった」


 船のような巨大物でもアイテムボックスを使えば持ち運び自由だ。

 正直このアイテムボックスは卑怯と思えるほどに使い勝手がいいと思うんだが、神様はほんと転移者を優遇しすぎじゃないだろうかと不安になってくる。

 船乗りたちが突然消え去った船に二度見している中、俺たちはそそくさと移動を開始する。


 潮風に乗って磯の香りが漂う港町を歩き、喧騒とした露店通りを抜けると、大きな建物が目に入ってきた。

 どうやらブルーはそちらに向かっているらしい。

 俺たちは見知らぬ街ということもあり、周囲を見ながらスリに警戒。

 見知らぬ街ほど強盗やスリが結構多いのだ。

 

 エグエール王国では新しい街に行くごとにスリにあったものである。

 最初の三回ほどはほんと有り金全部奪われて途方に暮れた。

 幸いブルーが冒険者ギルドで稼いでくれたので奴隷落ちになることはなかったけど、正直スリだけは絶対に許さん。


「ここ、もしかして冒険者ギルド?」


「そうらしい。船乗りに聞いてみたんだ。エグエール王国に存在する店があるかどうかをな。まさか冒険者ギルドが存在しているとは想定してなかったが、嬉しい誤算だな。ここなら大陸地図も手に入るだろ」


「さすがブルー、頼りになるな」


「ふっ。当然だ。何も考えていないお前とは頭の出来が違う」


 うぐっ、たまに来るこの上から目線な口調はちょっとイラっと来るぞ。


「総合案内所の方に並ぶ。お前たちはどうする?」


「ギルドだと十中八九絡まれるだろうから一緒に並ぶわ」


「レッドが特に絡まれる。レッドも並べ」


「へいへい、トラブルメーカーはおとなしくしてますよーっと」


 総合案内所は他のカウンターと違って閑古鳥が鳴いていた。

 暇そうにしていた受付嬢さんの元へ向かい、交渉役はブルーに任せておく。


「失礼、この国の冒険者ギルドに初めて来たんだが、説明などを聞くことはできるだろうか?」


「はぁ、説明ですか? えっと、新しくギルドに登録されるのですか?」


「いや、ギルドカードはあるんだ。ただ、向こうとこちらは冒険者ギルドとしての機能が同じか不明でな」


 と、ブルーのギルドカードを見せる。


「拝見します……え? えぐ……っ!! しょ、少々お待ちください」


 思わず大声上げそうになった受付嬢。すんでのところで手を口に当てて言葉を飲み込む。

 さすがはプロか。驚きはしても大声を出して注目することは防いだようだ。

 ただ、よほど慌てているのか、俺たちを放置して奥へと走り去っていく。

 普段暇そうにしている受付嬢が慌てて走り出したのだ。周囲の冒険者たちがこちらに視線を向けてくる。


「あー、これはダメな感じ?」


「トラブルメーカー……」


「風評被害だクエリス、俺は何もやってない」


 むしろ今回のはブルーの確信犯だろ。

 あの野郎涼しそうな顔で待ってるしこうなることは確信してたんだろうな。


「申し訳ありませんお待たせいたしました。少々お聞きしたいことがございますのでそちらのドアより奥へお越しくださいますか?」


「ああ、こちらも提供する情報があるからな。彼らも一緒で?」


「はい、パーティーメンバー全員でお越しください」


 受付嬢がカウンターから出てきて扉へと案内してくれる。

 俺たちは開かれた扉から普段冒険者たちが行くことのないギルドの奥へと向かう。

 しばらく歩いた後で部屋の一つに通され、座るように促された。


 ここが応接間らしい。

 テーブルを真ん中にコの字型にソファがあったので俺とブルー、リーリルとクエリスに分かれて二人掛けソファに座る。

 少しして、精悍な顔の中年男性が部屋に入ってきた。


「失礼、ファーガレア王国クアラルード支部の支部長ベントレだ」


「私はフロスティックブルーと名乗っている冒険者だ。彼らは私のパーティー仲間です」


 若干怪訝な顔をしたベントレさんはひとまず立ち上がって挨拶してきたブルーと軽く握手をする。

 そのまま座るように促し、ブルーが座ったのを確認して自分も残っていたソファに座り込む。


「早速だがまずお聞きしたいことがある。君たちの話はその後でもいいかね?」


「ええ、構いません」


「では単刀直入に。エグエール王国から来た、ということでいいのかね?」


「ええ、境界の海について聞いていたのですが、何の異変もなく良好な船旅で辿り着きました。こちらログになります」


「ほぅ、良いのかね?」


「正直何もなかったので、大して秘匿する必要がないのですが」


「まさか、逆だよフロスティックブルー君。君たちの航路は我々、いや、ファーガレアとエグエール王国にとってまさに天の助けとなるだろう。革命的なことだよ、境界で消えることなく無事にたどり着いたという事実は」


 そう言って、航路を記憶してあるらしい魔道具を黄金か宝石でも貰ったかのように大事そうに抱え上げるベントレさんだった。

 ところで、ファーガレアって何? ここってスグニマケイルじゃないのか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 船よりサイフこそアイテムボックスにしまっておけよ!自分が管理するサイフだけでも守れたでしょーに。
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