1193話、ロゼッタ、そこに愛はあるのか?
午後の部。結婚を終えたデリー達が着替えて普通のドレスになって私の元へとやってきた。
「いやー、緊張したー」
「合同結婚式とかすごかったね。ギリード。えへへ。ついに結婚してしまったぃ」
「バーデラ侯爵もいるのか。その、すまないな、何度も結婚式に呼んで」
「気にしてないわユルゲン君。それにしても、次の結婚、大丈夫なの?」
「フェーベル男爵家の周辺貴族来てるけど、相手が相手だけに困惑してるわねー」
「み、見事にガラ悪い……何あれ?」
いかにも裏社会の一門ですって悪人面がスーツ着てグラサンしている。
一部アロハシャツっぽいの着てる若いのもいるけど、一番似合ってないのはアルニスだ。
本人アルケーの影武者だったんだけど、今回は普通に出てきたな。
片目に刀傷があるつるっぱげのムキムキさんだからスーツがぱっつぱつである。
ケーニスの方が柔和な笑顔のお爺さんとしてまともに見えるのが逆に怖いわ。
というかアルケーはなんでまたナッシュ君を選んだのか。
うっわー、花嫁連れてくる役アルニスさんになったのか。影武者なのに表に出過ぎじゃない?
一応彼が組長ってことになってるからファミリーの結婚なら彼が重要な役するのは確定事項だけどさ。
ぱつぱつスーツのマッチョメンが花嫁衣裳の幼い少女を連れ歩くレッドカーペット。
なんだろう、言葉と絵面がどうこねくり回しても犯罪臭しかしないのですが?
背の低い花嫁に合わせてるせいで背中を丸めているアルニスさんはもう、なんというか……ヤバいな。
そしてすでに壇上に上がって彼女の到着を待っているナッシュ君はなんというか、スーツが似合ってないなぁ。これはこれで可愛いけども。あと理解が追い付いてないようで、何で僕ここにいるんだろう、って顔になっている。
本当に、なんで二人は結婚することになったんだ?
式自体は普通になんの滞りもなく、二人が誓いのキスをしてブーケトス。デリーラがこれを受け取り明日へのテンションを上げていた。
ナッシュ君初心だなぁ。キス凄いためらってたからアルケーの方からいっちゃったし。
しかもものすごい男らしく顎くいからのキスでなんかこう、男女逆じゃね? って思った。
それからは立食パーティーだったのでいろいろな貴族同士でご挨拶。
ナッシュ君も戸惑いつつも挨拶を続け、アルケーはその合間を縫って私たちの元へやってきた。
どうやら今回のことの顛末を教えてくれるようである。
「やぁやぁロゼッタ。俺もついに夫持ちになってしまったよ」
「で、ナッシュ君巻き込んで何してんの?」
「あー、まぁ巻き込んだのは悪いと思うがな。ちょいとそろそろ後釜作っておかないと内部分裂がヤバそうでね。組織が大きくなるのはいいんだけどねぇ。他国のアルケーニスがちょいとやらかしそうなのさ」
なるほど、なるほど? それとナッシュ君娶るのと何の関係が?
「いや、別に関係はないんだがな」
「失礼お嬢、この女学食の知り合いに夫ののろけ話聞かされて悔しさから結婚秒読みじゃとか引っ込みの付かない嘘を言って焦っておられました」
「うをい、影女っ!?」
影の人が私の背後にすたっと背中合わせに立って教えてくれた。
なるほどねー。のろけ聞かされて悔しかったから誰でもいいから結婚したと。
「い、いや、俺もいろいろ考えたんだぞ。他の男だと瘻付きだからいろいろややこしくなるし、弱い奴はいらんし、強くともマッチョは趣味じゃないし。いろいろ考えた結果ナッシュって意外と俺の相手によくね? と思い至ってだな、だって悔しいだろっ、毎回学食で昼食べるたびにあのクソババァ、彼が彼がってクッソうざい絡み方して来やがるんだぞっ」
あわれナッシュ君。いやまぁ、闇組織のバックがついたってことはある意味いいのかな?
ライオネル王国から黙認されてる闇組織だし。
むしろ今じゃ王国の暗部組織になってる感じすらあるし。
ナッシュ君を見る、貴族たちに詰め寄られてるのはあの奇抜な男たちはどういう関係者なんだって感じかな。
アルケーニスだとか言えないだろうなぁ。闇組織なだけじゃなく暗殺組織だもんね、フェーベル家が暗殺組織をバックに付けた、となればさすがに無視できる存在でもなくなるだろうし、ナッシュ君、もしかしたら侯爵あたりまで登って来るかもしれないな。
そう考えるとアルケーって先見の明があったりするんだろうか?
いや、こいつは都合のいいナッシュ君が近くにいたからこいつでいいやって結婚相手に選んだだけだろう。
おそらく近くにいたのがディムロス君とかでも結婚相手に選んだはずだ。
「んで、あんた初夜とかどーすんの?」
「もちろんやるが? ふっふっふ、青臭い果実というのもまた良いものではないかね。せいぜい俺の手練手管で夢中にさせてやるとしよう」
なんだろう、これ、フラグのような気がしてくるのは気のせいかな?




