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1181話、サクリファ、聖女の消失

 SIDE:サクリファ


「……で、あるからして、我々は最高司祭様、いえ、最高司祭を名乗るこの男に騙されていたのです。聖女アルマティエを国から追い出し、偽りの聖女に治めさせようとした老獪、我々は、その証拠を掴み今、ここに彼らの断罪を行うことを、神に誓います!」


 結局、この日が来てしまった。

 私はギロチン台というものに手と頭を拘束されていて、目に映るのは桶だけ。

 この桶はギロチン台の上にある刃物が落下した時、私の首が落ちる場所になるらしい。


 なんとか視線だけ見上げて隣を見れば、私を聖女にしてくれたお爺ちゃんもまた、ギロチン台に固定され、後はもう刃が落ちるのを待つだけになっていた。

 刃は縄に括られているけれど、これを斧で切れば途端に落ちてくる仕様になっていて、執行人という頭巾を被った男の人二人が私とお爺ちゃんの断頭台から縄を切るため斧を構えて待っている。


 周囲にはこの国の民衆。

 皆敵意を向けてきて怖い。

 カール・ルーシェルムさんだっけ? 彼だけは、私に同情的な視線を向けていた。

 彼だけは、私はお爺ちゃんに連れてこられただけの被害者だから許してやれないかと訴えてくれていたのだけど、残念ながら聞き入れられなかった。


 貴族位を剥奪すると言われ、それでもと縋っていたけど、ダメだったんだ。

 きっと私を殺すのはあそこにいる女の子の目的の一つなんだろう。

 でも、私だってただ殺されるためにじっとしていたわけじゃない。

 結局、縋ってしまった。

 私はお爺ちゃんの生存を取ったのだ。

 だから、皆さん、ごめんなさい。


 祈りたいけど、手が固定されてるから祈れない。

 でも、どうなってるんだろう?

 お爺ちゃんこのままだと殺されちゃうよ。本当に大丈夫なのかな?


「さて、最高司祭殿、何か言い残すことはありますかな?」


「我が息子がここまで愚かだとは、それだけが我が失態であった」


「ふん。最後のセリフがそれかい父上。まぁ、いい。聖女殿いや。偽りの聖女サクリファよ、言い残すべきことはあるか?」


「で、でしたら、一つだけ確認したいことが」


「確認? なんであろう?」


 小首を傾げるお爺ちゃんの息子さん。

 私はなんとか視界に女の子を収める。

 きっと、彼女が元凶なんだろう。

 この状況を仕組んだのは、あの小柄な女の子なのだ。神様もそう言ってた。


「新たな聖女に問います」


「あら、私?」


「貴女は何を成しますか? 神は貴女に二つの道があると告げました。一つはこのまま国を治める。神託は失われますがきっとアルカエスオロゥは平和な国になるでしょう。でも、他国に侵略するつもりであれば……」


「はっ。何を言うかと思えば、あんたもしかして私と同じ転生だったクチ? ゲームエンドの治世エンドでしょ。冗談じゃないわ。全てを手に入れる覇王エンドに決まってるじゃない」


「そう……なら」


 覚悟を決めよう。

 私はこの予言を残す。

 これはきっとこの国を亡ぼす予言だ。でも、きっと言うしかないんだろう。

 彼女の意思は変わらないのだから。


「ならば私は聖女として予言します! この国は偽りの聖女の元一つとなり無数の国を平らげるでしょう。そして覇王の怒りを買い滅びるでしょう。聖女アルマティエが嘆き、アルカエスオロゥは聖女の涙の元、土へと帰る。迷える愚かな愚者たちよ、共に土に帰れ、汝らは二度過ちを犯し潰えるだろう」


「こいつっ! 処刑人、さっさと縄を切りなさい!!」


「「はっ」」


 処刑人二人が斧を振り上げる。

 

「ああ、聖女アルマティエ様。私のような拙き者が聖女の末席に入ることを、お許しください」


 ―― 良いでしょう、許可します ――


 ……あれ? 何で返事が?


 --------------------------------------------


 SIDE:???


 不意に、女の声が聞こえた。

 ざわめく民衆たち。振り下ろされる斧。そして、大教会の天辺に稲光と共に落雷が落ちた。

 大地を揺らす轟音に、皆がそちらに視線を向ける。

 縄が切られ、二つの刃が地に落ちた。


「あー、びっくりした。何よ今の?」


「せ、聖女様!」


「何よ処刑人、どうし……はぁ?」


 新たな聖女が視線を断頭台へと戻した時、そこには何もなかった。

 否、断頭台と桶は残っていたものの、処刑されるはずだった偽の聖女も、最高司祭も、まるで初めからそこに存在していなかったかのように消え去っていた。


「逃げた? いえ、ありえない。さっきまで確かに……なんで?」


「……奇跡だ」


「はぁ?」


 見学者の中から聞こえた声に、聖女は怪訝な顔をする。

 見れば、カール・ルーシェルムが涙を流して拝み始めていた。


「ああ、聖女アルマティエ様が再び奇跡を起こされた。聖女サクリファ様はアルマティエ様に聖女と認められたのだ。ああ、なんという、サクリファ様の予言通りだ。我々は二度の過ちを犯してしまった!!」


 カールにつられ、民衆たちにどよめきが起こる。

 彼らとて、目の前で何が起こったか理解できていない。しかし、確かに聞いたのだ。

 サクリファが聖女の末席に加えてくれと言葉にし、死を覚悟した瞬間に、よく聞いた聖女の声が、この場全ての民衆に聞こえたのである。


 聖女に認められた偽の聖女。それはもはや新たな聖女である。

 そして、その聖女サクリファが予言した。

 国が亡ぶ最悪の予言だ。


「ええい、あの馬鹿を捕らえろ! 民衆扇動の容疑者だ!!」


「は!」


 しかし、彼らがカールを捕らえようとした直後、カールの周囲が光り輝き、驚くカールごと光は消失してしまった。

 そしてそれは、そのまま新たなアルマティエの奇跡として人々に語り継がれることになるのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] アルマティエちゃんは、もうお外に出られませんね
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