1148話、ロゼッタ、呪物たちのララバイ・3
宝物庫整理三日目です。
順当に行けば本日昼頃には終わる予定なんだけど、コスタロカの呪具は千年以上を過ごしてきただけに呪物としての格が違うようだ。
ただ、なぜか意思持ってる系が私に近づかないでほしいと懇願してくるのよね、なんでさ?
本日も空に浮くヤドリギの杖と市松ちゃん。
他の呪具についても見学したいって言うからまた連れてきました。
なんか市松ちゃん見た陛下が劇画タッチに驚いた顔してたけど、別に呪い振りまいたりはしないんだよ?
髪型変えてみたんだよ。可愛いでしょ?
「なんで連れてきた!?」
「来たいって言われたので?」
「なぜ連れてきたあぁぁぁっ!!」
なんで同じようなこと二度言うんですか陛下。連れてきたことはそれほど重要なことじゃないんだよ?
あとなぜ浮いてるーって本人が浮くの好きとか言ってたからヤドリギの杖持ち出してきて一緒に浮かせてるんだよ。
浮く魔道具使うときはヤドリギの杖使用中だから同じ場所まで連れて行かないと浮けないし。
「ロゼッタ嬢、早速始めようか」
「はい、ではこちらがコスタロカの呪具となります」
まずは適当に一つとる。
書物だね。なんか触れるなとか儂に近寄るなとか念話が聞こえるけど無視して鑑定台に乗せる。
「これは……ミルクラトロンの黙示録という書物のようです。疑似人格を持ち、持ち主を選ぶそうですが……」
『それなぁ、我が時代までの間に数人の手に渡っていたのだが、ことごとくが非業の死を迎えてな』
少し手伝ってやれば驕り高ぶってくるからちょっとお灸を据えてやったとか言ってるんだよ。これ魔女の首みたいな最初だけ幸運になるけど最後の最後で裏切られて落ちぶれる奴じゃないかな?
うん、危険すぎる書物だから封印確定なんだよ。
一応目録だけは作っておいて封印処理に陛下が印を押す。
呪具関連はライオネルもコスタロカもまとめて呪具用の宝物庫に入れることになっている。
ちなみにその呪具庫は扉も封印指定して宝物庫の地下に埋葬するそうだ。
せっかく秘密裏に掘っておいたのに、エリクサー用の宝物庫が使われることになってしまった。
仕方ないのでもう少し地下の方に空洞空けて転移させておこう。
誰も気づかないだろうし問題ないよね?
「次はこれでーす」
「フルート、かの?」
「楽器の呪具はよくありますがコスタロカの宝物にもあったのですな」
『あれか……正直アレは集めるのではなかったな。二度と使うことはないと思っていたのだが……』
鑑定官が鑑定を始める。
「こ、これは……狂い咲きのフルート、です。吹くと音を聞いた者全員が一日踊り狂うそうです。そ、それと、目にする者全員に吹きたいという欲望を……」
はい、とりあえずアイテムボックス行きー。
鑑定官さんが思わず手に取ろうとしていたので速攻でしまうことにした。
このフルートは危険だわ。
さっさと宝物庫に送って封印しちゃおう。
お次はっと、おっと盾だね。
しかもダイヤをふんだんに使った……ちょっと待って。中央のでっかいダイヤって……ブルーダイヤ?
前世では確か持ち主をことごとく不幸のどん底に叩き込んだと言われる曰く付きのやべーダイヤじゃないですかやだー。
しかも呪具ってどう考えても似たようなもんですよね。
「こちらはブルーダイヤの盾ですね。効能は……周囲の呪物強化!? さらに土地汚染に健康減少!? 他にも呪詛が沢山!? こ、こんな悍ましい呪物が存在してるなんて……」
うーん、これはかなりヤバい奴っぽいな。よし。
「陛下、これ宝物庫に入れるのも危険みたいなので別の場所に捨ててきていいですか?」
「ほ? どこにそんなもん捨てるんじゃ?」
「マギアクロフトの地下深く?」
「許可する! あそこならむしろ良しじゃ!」
さすが陛下、わかってるぅ。んじゃ転送っと。
転移の応用だけど土の中とか考える必要がないから遠慮なく送れるんだよ。
ついでにヤバそうなのあったら順次送っておこう。
それからしばし、数多くの呪物を鑑定した。
正直に言えば使えそうなものは一つもなかった。
ほんと危ない呪物が多いよね。
仕方ないから本気でヤバい系の呪物はまるっとまとめて地下深くに不法投棄するんだよ。
ここじゃなくてマギアクロフトの。
「この呪具に関しては保管でよいかの?」
「身に付けなければ問題はないもの、などは隔離倉庫の方に放り込んで眠ってもらいましょう陛下。いつか誰かが開けるかもしれませんけど、その先はきっと私たちの数世代先のことですからそこまで責任持てないんだよ」
「まぁ、どれだけ宝物を隠そうともこうしてコスタロカの財宝が日の目を見とるんじゃ、何年も先のことまで考える必要はなさそうじゃな。とりあえず封印はしとるし、ここには呪具が眠っておると伝えておけばよほどの阿呆以外は入るまい」
ガイウス王子みたいなのが生まれたら普通に入りそうなんだよ?




